正月の風景
いま四月だけれども、ジムのサウナに入りながらふと思った。 最近は正月の風景が無くなったなあ、と。 毎年嫁さんの実家に元旦は訪問している、二日は福袋を買いに、三日は暇つぶしドライブにと、三が日共に車で午前中は外を走る。(まあ昼からは大概自宅でお節と雑煮と熱燗をやる訳だが・・・)そこで思うのは、昭和の時代、あるいは20年前、10年前の風景の差。 昭和の代ならまず、車に付けているしめ縄風お飾り(神社等で売っている、または神社で車の祈祷をするとくれる)がすれ違う対向車がほとんどが付けていた。 それがだんだん減って来て、10年程前から数えてるんだけど、ついに今年(2015年)は1台も見なかったのである。三が日共に。 まあ神奈川県の街並の話で、国道二本も含めてだけど(245号線と129号線)、でもちょっと地方に行けばまだ付けてる人もいると思うが。 これで正月の風情が一つ無くなった訳だけれども、更にだ、風習も極めて無くなった。風景で云えば、例えば独楽回しやら凧揚げ何て云う子供の遊び近所で見ることが無くなった。加えて、年末の餅つきも誰かの自宅でやってるのを見ない。そしてお供えのお餅のでかいのも見ないけれど、何て云っても住宅のお飾りや国旗も見ない。昔は門松がたくさん見れたのに、これも見ない。大手企業なら飾ってるかもしれないが、街中のお大臣的中小企業や、職人的店舗にさえ、ろくに無いのである。 それだけで風景や風情が無くなったけれど街並はそれほど寂しくない。それは、いろんな店舗が営業しているからだ。昭和の時代なら、まず個人営業の商店や店舗、事務所は、大晦日まで働いて、正月休みで1月7日くらいまで休んでいた。飲食店だってね。建築系の職人に至っては材料屋の初荷が7日だったりするし、地方から出て来てる大工さんは帰郷してるからまだ休み。 三が日に店を開けてるのは、お年玉を使ってもらおうというおもちゃ屋、駄菓子屋の類いしかなかった商店街。それ以外はシャッターを下ろして、シャッターの張り紙には「旧年中はお世話になりました。又今年も宜しくお願い致します。○日から営業致します。」なんて書いてあった。 故に、ほとんどシャッターが閉まっている商店街の風景は、寂寥としたものがあって、人通りもほとんど無い所に、寒い風が吹いて、子供がうろうろしているおもちゃ屋だけが明るく目立っていた訳だ。 そんな風景は今は無く、普段と変わらない人通りがあったりする。昔はほとんど走ってなかった車もまあまあ走ってるから、余計普段と変わらない訳で、何故かと云うと、元旦から営業してる店舗が多いからだ。だから人も出て来る。 最初はコンビニエンスストアーが元旦でもやっていたけれど、スーパーマーケット、デパート、飲食店のチェーン店までもが、今は元旦から営業しちゃってるんである。 商魂逞しいのは企業だけで、従業員や社員は正月に休みたいんじゃないだろうかなんて心配してしまう。24時間体制の警察官や消防士、どこかの管理業務とかいった仕事は昔から正月休みなんて無いも同然だったからしれないけれど、それはほんの一部の働く人達だ。正に一分って云うくらいの(一分とは1%と同義)数に満たないもんだった。 ところが今は正月に働いてる人がその頃に比べれば随分と増えてる筈だ。 元旦に営業してるだけで増えちゃうでしょ。サービス業だけの留まらないのである。 そんなこんなで、正月の風景は無くなってしまったのだね。街並は賑やかなのに、風情が無いと、寂寥感を感じずにはおれない今日この頃なんである。