カテゴリ:犯罪者系
最近、なにかと物騒だ。意味もなく、突然殴られて大けが、なんて事件も起こったそうだし、おちおち街を歩いてもいられない時代、ということなのかもしれない。お互い、できる範囲で気を付けましょう。
通り魔的な事件のニュースを見ていて、思い出したことがある。ひったくりだったのか、通り魔だったのか、犯行自体が未遂に終わったので、分類しがたいものがあるのだが、「ひったくり」部門に入れることにする。 数年前のことだ。仕事で早朝、成田に行かねばならず、前日は千葉駅近辺のビジネスホテルに泊まることにした。千葉に着いたのも、前日のかなり遅い時間帯で、ビジネスホテルまでの道のりは、暗く、静かだった。 一軒だけ、赤提灯の飲み屋さんが開いていたが、もう閉店間近だったのか、縄のれんの向こうの引き戸が開け放してあり、数人いたお客が立ち上がって、談笑しているのが見えた。 それを横目で見ながら、ホテル目指してちょっとした坂をのぼっていた時、私の身体は勝手に立ち止まり、後ろを振り返った。 妙な言い方だが、私は超の上にスーパーがつくような鈍感なので、何故立ち止まったのか、何故振り返ったのか、自分ではぜんぜん分からないのだ。「身体がそのように反応した」としか、言いようがない。 とにかく、振り返った私の1.5メートルほど後ろに、自転車に乗った若い男がいた。薄暗い光の中で、男というより、少年と言って良いような年齢にも見えた。彼は自転車でよろよろしている。それほど急ではない坂だから、さーっと駆け抜けてゆくのには、大した脚力は必要ではない。だが、ゆっくりと音もなく、徒歩の人間の背後に付き従うには、細心の注意も必要だったろうし、よろよろもしようというものだ。 私が急に振り返ると、ぐらぐらとバランスを取りながら走っていた青年は、ぎょっとして顔を上げた。そして足が止まった途端、自転車ががくんと傾いだ。彼は地面に足をついて、こちらをじっと見ている。私も何故か、彼をじっと見つめ続けた。彼の肩越しに、赤提灯の縄のれんをかき分けて、酔客が半身を突き出すのが見えた。 背後がざわざわして来たせいだろう。少年とも青年ともつかないその男は、きゅっと自転車のペダルを踏むと、ゆっくり遠ざかっていった。そして、次の角に到達するなり猛スピードでカーブを切り、消えた。 後から思い返してみると、その男がよろよろしていたのには、もう一つ理由があったようだった。右手に、短い木刀のような棒が握られていたのが、視界に入った記憶があるのだ。棒と、自転車のハンドル。その両方を握っているのだから、操作しにくかったのだろう。 あれは通り魔だったのか、それとも単なるひったくりだったのか。あの時、振り返らなかったら、あの時、飲み屋のお客が帰ろうとしなかったら、どちらだったのかがきっと、分かっていたことだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年05月19日 15時16分18秒
コメント(0) | コメントを書く |
|