カテゴリ:犯罪者系
先日、バスに乗っていたら、一人の女性が、走行中、ぬっと座席から立ち上がり、運転席の方へよろよろと歩いていった。そしてやおら、運転手さんの脇にしゃがみ込むと、「す、すいません、き、気分が」
私は彼女と反対側の席に座っていたので、「気分が悪い」と言っている彼女の顔は、よく見えなかった。が、停留所でもないのに立ち上がった彼女を、ぱっと振り返ったので彼女の顔は見たが、それほど気分が悪そうだとも思えなかった。しかし30代後半か40代くらいのその女性は、運転席の横にしゃがみ込み続ける。 運転手さんは気の良い人で、「すぐ降りますか? ここで停めましょうか?」と言う。するとその女性は、ぶるぶるとクビを振り、「もうちょっと先」と偉そうなことを言う。心配した運転手さんは、「救急車を呼びましょう」と言いつのる。するとその女性はまた、「それほどじゃ…」と短く答えた。 「いやいや、でもここのすぐ先に病院があるんですよ」 「大丈夫です、次の停留所で…」 そのとき私が思ったこと。今まさに「おえーーーーーっ」とやりそうなほど、切迫して気分が悪いのでもない限り、わざわざ運転手さんの横にしゃがみ込んで、「き、きぶんが」と言う必要はないんじゃないか、ということだった。だって、その辺りはバス停とバス停の間がとにかく近いのだから、黙って次のバス停でおりりゃーいいじゃないか。それに私の見た限り、彼女はそれほど「おえーーーーーー」な状態とも見えなかった。 結局、次のバス停(50メートルほど先)で、彼女は降りた。外に出た彼女の顔を真正面から見たが、やっぱりそれほど、気分が悪そうにも見えなかった。「気分が悪そうな」表情はしていたけれど、顔色はすこぶる良かった。 と言う話を今日、お昼を食べながら友だちに話した。すると私に輪を掛けて、世の中をねじ曲がった方向から見るクセのあるその友人は、「お金、返してもらおうと狙ったんじゃないの」と言う。 彼女の名誉のために言っておくと、彼女も同様の人に遭遇したことがあり、その人はうまうまと、行き先まで行かずに途中下車するからという理由で、親切な運転手さんから、運賃を払い戻してもらったのを見たことがあるのだという。 確かに、大して気分が悪そうでもなかったこと、気分が悪いと言いに行く必要のないシチュエーションだったことなどを考えると、あの女性はもしかしたら、バス代を浮かせようとウソをついたのではないだろうか。 「私が見たオンナと、アンタが見たオンナが、同一人物だったら笑えるよね」と友人は笑っていたが(人相を付き合わせてみたら、どうやら別人のようだった。だいたい、見た場所もぜんぜん違うし)、もし同一人物だったら、結構コワイかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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