ふろ~な方々と私(6)
初めてイギリスの地に降り立ったとき、真っ先に出会ったのが浮浪者だった。と言ってももちろん、空港内にふろ~な人が居たわけではない。空港から地下鉄に乗って、ロンドン中心部に到着してからのことだ。その時は、「ふわー、浮浪者も英語しゃべってら」(そりゃそーだって)と思ったものである。 日本にいると、ふろ~な人は一目ですぐに分かるけど、イギリスでは(少なくとも私の感覚では)ちょっと見分けがつかなかった。一般人の服装が小汚いこともあるし、浮浪者が立派な恰好をしていることもあるからだ。 ロンドンのとある繁華街を歩いているとき、正面から毛並みの良い恐ろしげなドーベルマンを連れた、背の高い男性とすれ違った。どっしりした、上等なコートを着ていて、立派な体格、ハンサムな容貌とあいまって、近所にある劇場の関係者かしら、と思わせるような雰囲気の人だった。が、その人、私とすれ違う寸前「Small change, please.」と言ったのだ。 「ひゃ~、この人、何だ???」とためらっていると、彼はさっさと私の横を通り過ぎ、私の後ろから来る人たちを、良く響く声で「Small change, please.」と威嚇しながら歩き去った。 背後からよーく観察すると、服装のうち立派なのはコートだけで、ズボンと靴はかなりくたびれていた。また、片手に持っているくしゃくしゃの布袋は、やっぱり真性のふろ~なのだろうなぁ、と感じさせるような類のものだった。 我が身はふろ~とは言え、愛犬は栄養のまわった、ぴっかぴかな毛並みに保っているとは、さすが動物愛護のお国柄である。