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カテゴリ:敵対的買収防衛
サッポロビールが米国系投資ファンドスティールパートナーズ【以下、SP】からTOBを受けた。サッポロ首脳陣はその後の経営方針等をスティール側に情報開示を求めている。 SPが同社の株を買ったのはずいぶん前の話だ。明星食品などと同時期のはずである【04年ごろ】。その間、SP社からは株価向上のプレッシャーがあり、同社もカナダのビール会社を買収するなど応戦していた。 SP社はEXIT(投資資金の回収)のため、わざとTOBを仕掛け、より、高いTOB価格を提示するものがあわられれば、売り抜けする作戦のようだ。つまり、TOBである会社の経営支配権を手に入れるためには、直近の株価にいくらかプレミアムを乗せなければならず、その水準は25~30%といわれている(KPMG FASの調査結果)。しかし、今回SP社が提示したのはわずか12%で、第三者がさらに上乗せできるように、控えめに提示した思惑がある。ただし、金曜日の株価は12%ラインを上回る価格だった。 さて、ここからだが、昨日報道ステーションを見ていて、解説委員が「経営目的があるわけでもないのに、こんなマネーゲームに振り回されて、消費者不在のM&Aは許せない」 といった発言をした。 一流新聞社の解説委員としては情けない。 なぜなら上場企業の株は、インサイダー(内部事情をよく知る企業の当事者やその関係者)以外のものであれば、いつでもだれでも、いくらでも(お金があれば)買えるものである。したがって、SP社が株を買うことになんらおかしいことがない。 また、株の売買に消費者が介在する余地はない。消費者はうまくて手ごろな価格でビールが飲めれば、それでいいはずだ。サッポロのブランドがなくなるわけでもないのに。業界が再編されれば、効率化が進み、よりよいサービスが期待できるにもかかわらずおかしなことを言う。もっとも消費者団体がSP社以上の価格で株を買うのなら話は別だ。 問題の核心は、なぜSPに狙われるのか日本の構造や、企業の問題をただそうと言わないことだと思う。SP社やかつての村上ファンドは業績はそこそこ安定しているが、株価が安く放置されていたり、一等地を所有しているが、最大限の収益を稼ごうとしない企業の株を狙い撃ちした。彼らは自分たちの金儲けのために行なっているだけである。 問題は、狙われるまで自らの会社の価値向上を放棄していた怠惰な経営陣にある。企業の取締役は株主から「委任」を受けて会社の経営に当たるものである。これは会社法で決められている株式会社の原理原則である。したがって経営陣は株主から預かったお金を増やす義務があるといえる。 しかしながら、30年前後も同じ会社ですごすうちにその感覚が麻痺するのであろう。会社は自分の家のように錯覚するのであろう。 野村総合研究所のリサーチで従業員に「あなたの会社が敵対的M&Aを仕掛けられたら賛成しますか」という質問に、過去にM&Aを経験した人は13%が賛成する、60%の人は相手先や条件次第でOKと答えたという。一方、日経新聞の社長100人アンケートで「敵対的M&Aを仕掛けられたらどう思いますか」の問いに「けしからん」が15%、「どちらかといえば望ましくない」が45%であった。つまり、おじさんたちよりも従業員の方が冷静に事態を見つめているということになる。 過去さぼっていたことを突かれて「けしからん」というのはおかしい。SP社が単に外国企業であるだけで非難されているような気がする。村上ファンドに出資したオリックスは少し非難されたが、宮内さんが規制緩和に貢献したという理由で、立ち消えになっている。 逆にリップルウッドやかつてハゲタカといわれた外資系ファンドや金融機関は日本で着実に前向きな成果をだしつつあり、「土着化」しつつある。私にはマスコミや世間のおじ様たちが、自分たちのサボタージュを外国人に責任転嫁しているような気がしてならない。 いまの株高、不動産価格の上昇、国内M&Aの活発化(業界再編)などどん底の日本経済の活性化のきっかけを作ったのは彼らである。もちろん、グローバルスタンダードに追いつかない日本の構造のひずみに目をつけたのだが、ひずみのっま放置していた日本に一番の責任がある。また、最初の第一歩が踏み出せない日本人気質もある(日本長期信用銀行は10億円でリップルウッドが買収したことに非難の声があったが、ではなぜあなたの会社が11億円で買収するといわなかったのか?)。 アメリカでも90年代初頭、SP社のような「物言う株主」が躍動し、企業は資産売却や業界再編が加速したという。今ではいろんな企業が株主価値の最大化に向けた努力を行なっており、ダイナミックに変革している(もちろんその一方で、自動車業界のように万年同じ問題で沈んでいる業界もある)。かれらは荒稼ぎしたが。一方では経済活性化に一役買っている。 ちなみに昨年度のサッポロビールは、ビール事業の利益より恵比寿ガーデンプレイスの不動産による利益の方が大きかった。本業は行き詰ってるのである。アルコール事業は3000億円以上の売り上げでわずか30数億の利益である。1%ちょっとの利益率である。かつ、今朝の日経新聞では、他社は前期は増益であり、サッポロだけが減益だっとという。サッポロの株主としては 「何をやっているのだ」 というか、売却するかのどちらかだろう。 ちなみに恵比寿ガーデンプレイスは250億の売上に40億円以上の利益があったようだ。不動産業ですね。 単純な外国人非難に流されず、本質を冷静に見極めたおい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/02/17 11:20:26 AM
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