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カテゴリ:敵対的買収防衛
先日、某クライアントからの依頼で買収リスクの測定支援のコンサルティング業務が終わった。
第一回の当テーマでも言ったと思ったが、基本的に上場企業の株式を売買するのは自由である。唯一、規制があるとすれば、株主の価値を毀損するような取引を株主価値のために保護するという取り決めである。 日本では経済産業省がガイドラインを作成しており、そこには「企業価値」という、株主価値よりも広い概念のことが記されている(これは、買収者が買収後に極端なリストラや資産売却を自らの企業価値や経営を真摯に考えるまでもなく行い、結果的に雇用や下請け等の地域経済に悪影響をもたらす事態を想定していると思われる)。 この企業価値を考えた場合でも、いわゆる「乗っ取り屋」、「解体屋」などは否定されているが、同業他社による、合理的な経営までも否定するものではないのが通説だ。 現時点では、スティールパートナーズがこれに該当するか、しないか彼らの出方が注目されている。 さて、当該企業のことであるが、代表者は最終的に、買収されたくないけど、積極的に買収を行なって行きたい(もちろん友好的なM&Aを示唆していると受け取ったが)、と言う主旨のことを言われた。 ほぼ具体的に買収したい企業を連想しながら、我々グループにその意向を打診した。 まさに本音であろう。「買われたくないけど、買いたい」 都合のいい話である。本心は、「海外のライバル業者にこれ以上差をつけられたくないので、こちらが買収して大きくなって、対抗しないと、やられてしまう」 という危機意識があったのだろう。 これは多くの日本の経営者に当てはまるのではないだろうか。 この会社も、03年ごろまでは、不況のどん底を経験し、メインバンクからリストラ資金を借りるのも苦労したと言う。それが、今では国内・海外とも受注が一気に絶好調で生産が追いつかないと言う。何十年ぶりかの工場新築までおこなっている。それでも海外企業のほうが売上高伸び率などはこの会社以上に伸びており、シェアの低下を危惧されているのだと思う。ここ2.3年の黒字での蓄え(または借金返済で身軽になった)のため、リスクをとって大きくしないと、本当に飲み込まれてしまう。したがって、こちらから仕掛けて取りに行く。 もう少しM&Aブームは続きそうだ。今回のブームは本業の強化だけに、バブル期の多角化とは少し趣が違う。 社長が心配していたのは、経営支配権の剥奪ではなく、自社の相対的地位の低下の危機意識だったのだった、と感じた。 この会社にとっては、よいことだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/05 10:35:11 PM
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