|
カテゴリ:敵対的買収防衛
以下後半 (前半から続く) 4.株主の議決権行使における日本の法制度 日本は、1,2は主に法律の 「2週間前までに発送」 では、外国人株主からは、その実質株主までの「メール日数」が往復約1週間近くいかかるため、実質株主が議案を精査するのに2,3日しかないケースがあるという。 外国人株主は通常「ステートストリートバンク」などという株主保管代行会社(カストディアン)名義として株主リストに記載されている。日本の証券代行会社(信託銀行)はこういったカストディアンに召集通知と議案を発送し、カストディアン経由で年金基金や投信会社などに議案を送付する。こういったカストディアンの地域取りまとめ役がローカルカストディアンだ。 したがって、日本の現行法律は、外国人持ち株比率が28%(07/3現在。金額ベース)となり、30%を目前に控えた状況の中、実態にそぐわない条文となりつつあり、法律を守っても株主の賛同を得られないというやや時代にそぐわないものになりつつある。 この法律の制約で、総会日程の集中なども低い評価となっている。 5.投資家の各評価項目に対する見方 投資家は10:議決結果の第三者監査、9:議決結果の公表、3:議案の早期明確化(変更しない)、5:議決の受領、6投票による議決の順番で注目している。すなわち、自らの票がきちんと会社側にカウントされているのか、という点に非常に気を使っているといえよう。それだけ、自らの議決を経営に反映したいという狙いがあるのかもしれません。 6.議決権行使の電磁的方法について 報告書では、今後の導入が望まれる、と記載があった。これが広がると、召集通知の早期化とか先ほどのカストディアン対応などふっとばすインパクトが考えられ、議決権行使の高まりにおける日本企業へのカタリストとなるかもしれない。日本で現在導入しているのはJR東日本、NTT、NTTドコモ(この辺は親方日の丸ですね)、川崎重工など20社未満と思われる。 7.私見・私案 1. 召集通知発送の4WKSは難しそうであるが(花王は実行済み)3WKS前は可能であり、実行して欲しい。そのためには、決算の早期化が望まれる。 2. 集中日を避けるために土日開催も積極的に活用して欲しい。 3. 法的にも総会を7月までに終わらせるなどの「期限延長」への改革も望まれる。 1について 3WKSというのはISS(Institutional Shareholder Servicesという議決権行使を機関投資家にアドバイスする専門会社。プロキシーアドバイザリーファームといわれている)が、企業の提案する買収防衛策の議案内容に対し、賛否を助言する際に最も重視している点である。これは、上記の外国人株主の 「メール日数」 を考慮したものである。4WKSは花王のように召集通知を4WKSとしても、総会開催日が集中日に重なれば、やや意味もないため、3WKSとした。 さらに、決算の早期化は一方では、決算訂正という負の側面もあるため(東証が45日ルールという決算日から45日以内に決算発表せよ、という指導の弊害で、決算訂正が07年4~6月の間で259件もあったそうで、06年の196件から増加しており、年々増加しているようです)、あまり早くしすぎるのも問題があります。 とはいっても決算早期化が、決算承認取締役会(総会付議議案の決定を兼ねる)を早期化させ、結局全てのスケジュールを前倒しできるキーポイントとなるためである。 しかし、一方で企業の体質かも知れませんが、計数に対する意識が低いことも原因に挙げられると思います。私はかつてメーカーにいましたが、同社は月次決算を月末後「3営業日」までに報告しろ、というオーナー社長の厳しい言いつけがありました。 経営者として前月の結果を少しでも早く知りたい。翌月の対策を月初に打ちたいという考えがありました。経理部は戸惑っていましたが、当初の10営業日を5営業日、4営業日と短縮していき、多分今ではもう1日短縮しているはずです(つまり2営業日)。 これは月次なので、決算となるとまた話が違うのですが、決算時点でも「仮決算」がすぐ終わるので、最終決算整理も比較的効率的に出来るようで、普段からの計数に対する意識の差も大きいと思います(業種・業態にもよりますが)。 私は、別途専門分野でもある、デュー・デリジェンスでの経験上、多くの企業で月次決算が出来上がるのが10日程度、ひどいところは15日ごろ(上場企業)というのを見てきています。したがって決算早期化とその正確性というのが経営者の意識の差である、というのは客観的であると思っています(やれば出来る)。 2について 土日活用 これは最近はやりのようですね。総務担当の方、休日出勤ご苦労様です。 ウイキペディアによると、90年代は90%近くが6月最終の木曜・金曜(27~28日に集中)に集中していた定時株主総会が昨今では60%台前半(64%)まで改善されているようです。途上ですが、日本企業も努力はしています(報告書では、「64%もある」 という書き方でした。残念)。 3について 法的にも総会終了までの日数が決算から3ヶ月は早いような感じを受けます。これについては詳しく知識がないのですが、米国企業などは12月決算で4月に総会を実施しており(GEやジョンソンアンドジョンソンなど巨大企業はそれぞれ4月25日、19日)、英国企業もブリティッシュペトロリアムも4月の12日と丸3ヵ月後になっています。 日本では総会屋を排除する目的で、現在のような規定になっているといわれていますが、総会屋撲滅を宣言してから会社法への改正まで猶予があったので、この辺の改訂も望まれたのですが、今となっては悔やまれます(実際、改正に向かうと実業界からの「反発」が起こるのでしょうか?)。こういうのは議論にならなかったのでしょうか?実務上の「要望」がなかったとかが理由で。 8.最後に 決して私は経営陣が外国人株主に株主総会で打ち負かされる場面を見たい などといっているのではないことを付け加えさせていただきます。 経営している会社の方針や方向性をしっかり内外に公表してもらい、従業員や取引先(多くは持ち合い先)のみならず、肝心の株主(取締役の人事権を掌握する存在)にアピールして、自らの政治基盤を磐石にして経営して欲しいと思うからであります。 自らの経営に自信があるのなら、コソコソせずに正々堂々と経営して欲しい、とシンプルに思います。自信がない場合でも、「こうやって良くしていくから、私たちを支援して欲しい。」といえばいいのです。株主にもリーダーシップを発揮して欲しいと個人的に思います。 英国の年金基金であるハーミーズは日経BizPlus「コーポレートガバナンスが拓く新しい経営」というコラムの中で、「経営陣の交代を望んでいるわけでなく、経営陣の能力を疑っているのでもなく現経営陣が展開している戦略的な方向性が不適切だと思うことがある、ということだけなのです。」と述べています。 どうしても刺激的かつ過激なことがニュースとなりがちで、偶然にもそういった事件が積み重なったため、多くの方がライブドアや村上ファンドなどの世界的には「レアケース」を通説のように解釈してしまい、最大公約数でもっと大切な長期・安定株主である、ハーミーズやカルパースあるいは企業年金連合会といった機関投資家の行動を少数派のように扱ってしまっています。こういった誠実な機関投資家の支持を得ることは経営者の質を高めることにもなり、冒頭の「強い会社」、「強い経営者」への条件だと思います。 過激派株主を押さえ込むためにも、最大公約数的な機関投資家に 「何を考えて経営しているのか」 の理解の共有というのが最も大切な買収防衛策、アクティビスト対策ではないでしょうか? そのためにも議決権行使を積極的に受け入れましょう。ボスには対外的にも堂々として欲しいですよね。株主総会でも 「強い会社」 であって欲しいですね。 それと、アジアで10位というのはさびしすぎます。せめてトップ3ぐらいにランク付けされて欲しい。 2部にわたる長文をお読みいただきありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/09/06 02:43:38 AM
コメント(0) | コメントを書く
[敵対的買収防衛] カテゴリの最新記事
|