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テーマ:株式投資日記(20528)
カテゴリ:敵対的買収防衛
当ブログでは当社の買収防衛を非難し、特に企業価値向上策である計画の実現性のなさを厳しく指摘してきました。
15日に同社の08年3月期決算より、その「企業価値向上ぶり」を分析しました(決算短信はこちら ) 参考 昔の私のブログ 当社の昨年の「当社の企業価値向上に向けて」
当社は少なくとも、スティールの提案株価よりこの計画のほうが、長期的な株価にお得ですよ、といったわけですね。 もっとも、通常の場合でトヨタやソニーのような企業ですら中期計画の達成を予測するのは困難であるためブルドックソースだけが「ばら色」とはいえないのだが、ちょっとひどいなあ 中期計画の概要
前期08/3期 計画1期目です 計画1年目の営業利益の達成率が75%はないんじゃない?当然当期利益は買収防衛関連費用があるため19億円の赤字ですが、見逃してはならないのは、投資有価証券評価損3.4億円と減損損失6.3億円の計約9.7億円の特損です。投資有価証券評価損はたぶん持合株式の評価損じゃないかと思われます。 減損は主に買収したイカリソースの のれん です 当該のれんは昨年6月時点では5年償却といって株主総会を迎えましたが、中間決算段階ですでに減損しているとはひどくない?
以下注記事項の抜粋 のれんについては、事業計画を見直した結果、当初想定していた収益が見込めなくなったことから減損損失を認識しております。なお、当連結会計年度において認識した減損損失の内訳は、機械装置36百万円及びのれん594百万円であり、特別損失に計上しております。 抜粋終わり まさか、来期以降の「ゲタ」を楽にするために、意図的に前倒しで減損したのではないだろうな。監査法人も厳しいだろうから、注記の通りだと思うが、株主価値・企業価値共通の利益向上に貢献したのでしょうか?
もっとも、当社は営業利益までの計画しか公表してないので、減損や持合評価損を責めても不適切だが、株主価値・企業価値共通の利益の観点からすると、こういった利益予想について当然にして毀損をもたらしたと認識すべきではないかと思います。 営業利益が7億円の企業で、約半分の株式評価損、1年分の利益の大半の減損、あわせて営業利益を超えています。 あの弁護士さんは、本心はいざ知らず、弁護士としての忠実義務を果たしたといえるでしょうが、ブルドックソース経営陣は果たしてその忠実義務を株主・企業共通の利益のために果たしたのでしょうか? 弁護士のプロフェッショナル魂をすぐ隣で見ていて、どう思ったのでしょうか?
さらに営業利益面は、「経営全般にわたる徹底した合理化及び効率化を図ったものの、原材料価格や物流コストの著しい高騰等により」 (短信抜粋)コストが増加したといっていますが、これも中期計画で08年3期の計画では逆に1.5億円の削減を見込んでいたのですよ。 「1.5億円の削減は出来たけど、それ以上に値上がりもした」という場合はどうでしょうか。やっぱり見通しが甘いとしかいえませんね。去年の当ブログでも指摘しましたが、同じ原材料を使うカゴメは07年3期の決算説明会でこんなコメントを残していました。
「リンゴ果汁などが高くなっておりまして、従来、生で食べることをしなかった中国の方々が、生で食されるようになって、原料価格にも反映されて、高くなっている状態でございます。また、ペットボトルや缶などの容器についても、原料価格の高騰により影響を受けております。ずっと抑制を続けておりますが、抑制しきれなくなり、若干のアップになると見込んでおります。」
カゴメの決算はまさに予想通りだったわけですが、ここまでピタッとする必要性もないものの、要はそれぐらい慎重に計画を立てるわけですね。また食品業界でも資源業界同様の「買い負け」現象が発生しています(中国等が日本より高い値段を提示するため日本が輸入できなくなる現象、マグロなんて典型的)。 原油高、買い負けなんて「ソース作りのプロ」だったら想定できないでしょうか
ブルドックの来期予想 営業利益が677から800に増加を予想していますが、そもそも12億円やるといっていたので、計画2期目ですでに当初計画との達成率は67%しかありません。毀損してしまった企業価値を挽回するというメッセージが読み取れません(挽回できなければ従業員の方も給与にも影響ありますね)。
中期計画の下方修正を発表していないのですが、計画3期以降は達成率がもっと落ちそうです。 仮にDCFで企業価値を評価する場合、計画最終年度である13/3期の計画値さえ、うまくいけばそれほど影響がないと思っているのでしょうか?つまりターミナルバリューが企業価値の70~80%ぐらいを占めたりするケースが多いですから。
カゴメといった一流どころはきちんと、買い負けや原油高といった外部環境を把握していること(ブルドックは外部環境把握能力が欠落)、イカリソースの買収失敗という内部経営管理能力に欠落していること、身の丈以上の持合株式評価損というコーポレートガバナンス上も問題があることなど総合的に考えると、結果として株主価値のみならず企業価値も毀損した(この2つが違う概念と解釈するのに違和感を覚えます)のではないでしょうか?
ここからはブルドックソースを離れる。 こういった非友好的買収提案を受けた後に公表された事業計画の精査作業の経験を積み重ねていかないといけないと思うのですが、後だしじゃんけん はよくないと思います。なぜなら、買収者側は例によって帳簿閲覧権を拒絶されるのが目に見えています。したがって、提案する株価も慎重な値にならざるを得ません(原弘産は株主名簿閲覧の件、高裁行きですね)。 本場欧米では、将来の経営数値を明確化していないのになぜこんなことになったのか不思議です。住友重機械工業も現在米国半導体装置メーカーに非友好的買収提案をしていますが、株価ぐらいしか提示していませんよね(当ブログ 住友重機、米アクセリス・テクノロジーズへ買収提案、アクセリス側は承諾せず を参照)。
株主の判断だといっても、きちんと分析できる一般株主っていませんよ。そのための特別委員会だと思うのだが、機能不全ですよね。
なお、住友重機械工業は今回ライツプランの導入を提案していますが、みずからは株価オンリーの情報しか非友好的な買収相手側に提供していないのにガチガチでまるで要塞のような防衛策の導入はやりすぎなんじゃない? これもアンフェアだなあ(もっとも同社は中計の同時発表をされてはいます)。
ライツプランなんて所詮、「猛犬注意」 の張り紙です。しかし、その張り紙のおかげでスティールさんもお行儀がよくなったりして、一定の効果があった。 しかし、持合ではない一般株主の意思決定をゆがめてしまうようなばら色の後出しじゃんけんや、相手とのまともな議論を避けたり、特別委員会が予想通り期待はずれだったり、面会すらしていないのに労働組合等から「企業文化が違う」と一方的に反体声明文が出たり(こういう言葉は合併後よく聞く言葉ですよね)、圧倒的に買収者に不利な仕組みとなってしまった。
非友好的な買収提案をするほうだって、下手すりゃ濫用的買収者呼ばわり(最近では「著しく企業価値を毀損するもの」と曖昧かつ拡大解釈されるトレンドにある)されるレピュテーションリスク(原弘産は相手企業から呼ばれている)やプレミアムの用意、アドバイザーの協力やら、そのための時間とコストをかけて提案するわけですよ。そういう提案者は実は株式市場にプラス効果をもたらし、ひいては国民の年金運用にも寄与する大事なリスクテイカーなんですよ。 リスクをとり行くものに報われる途がない仕組みって、おかしくないですかね? 日本人がリスクを好まないのは理解しますが、だからといってその行為を否定するような雰囲気はいかがでしょうか?他人が儲かると自分は損するんですかね? 事業会社がやりにくい泥を投資ファンドがかぶっている事だってありうる(スティールは米国でEXITは基本的に他の同業の事業会社への売却が多く、結果的に産業再編に貢献しています)。
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