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テーマ:株式投資日記(20528)
カテゴリ:敵対的買収防衛
マイクロソフト 動く。
嫌いだといいながら、展開が読めないこの案件にどうしても興味はそそられてしまいます(ポリシーないなあ)。 各紙によると、マイクロソフトはヤフーに新たな提案を示し、依然ヤフーに対し関心があることを示しました。一時はmoved on と表現し、新たな戦略を練るようなことを言っていましたが。 いわく、マイクロソフトとヤフーの検索事業を提携・合弁等の共同でグーグルと対抗するような勢力を作ろうとする動きです。今回の声明文ではマイクロソフトはヤフーという企業全体への買収に対しては提案をしていないとのことです。
アイカーンの側近は、マイクロソフトが買収に関心がないのならヤフーにグーグルとの提携を勧めるだろうという趣旨のことを記者に語ったそうです(マイクロソフトへの牽制ですね。しかし人の嫌がること徹底的にしますね。ビリオネアーさん)。 ヤフーの事業構成はよく存じ上げないのですが、仮にクラウンジュエルだけ抜き出してしまえば残りのヤフーは「焦土化」するのでしょうかね。仮に焦土となってしまうとマイクロソフトは日本流で言えば「濫用的買収者」なんでしょうかね? 非常にクレバーな提案にも思えるが・・・。
それよりも今日のメインはアイカーン側のコーポレートガバナンス。
NYTのDeal Book にDeal Professorというコーナーがあります。ここでは、米国のM&Aにおける論点を色々指摘してくれるので、とても参考になるのですが、英語とデラウエア会社法が両方理解出来ないとついていけない(私にとっては商事法務を英語で読んでいる感覚です。したがって訳が少しあやふやかもしれません)。 今回はアイカーン側のプロキシーファイトにおける論点を問題提議しています。これってデラウエアだけでなく、日本でもありうるのではないでしょうか?(詳しい人いましたら教えてください)
アイカーンは自らの取締役候補者名簿にコーポレートガバナンスで有名なロースクールの教授Lucian Bebchuk(株主民主主義推進派とのこと)を推薦しているようです(米国では送り込む候補者が結構いらっしゃるのですね。日本じゃOKする人少ないでしょう)。 仮にプロキシーファイトに勝利した場合でも(ヤフーの取締役会が「アイカーン派」に総入れ替えとなる)、すぐにマイクロソフトとの買収交渉に入るわけにはいかないといっています。 すなわち、今度は自らヤフーの取締役会として、ヤフー自身の長期的な見通しをレビューし、独禁法等の規制リスクなどをレビューし、それとマイクロソフトとの提案を比較検討してから結論を出さなければならない、というアセスメントプロセスを踏襲しなければならないはずであり、それを軽視するとヤフー株主への忠実義務(fiduciary duties と言っています。直訳は信託義務とか忠実義務とかになっていますが)を果たしていないということになる、と指摘。もっともこのかしこい教授なら「言わなくともわかっている」と思うが、と皮肉なコメントがある。 要するに取締役になったからといってすぐ売却交渉に入るというわけに行かないはずだ、と指摘しています。ヤフーの現取締役が行ったであろう手順をもう一回踏むんですよと。
エージェンシー問題。株主の決定という前提を利用してどこまで執行役員やディレクターをコントロールできるのかという点。最近流行のアクティビストによる株主民主主義の傾向に一矢。特にアイカーンはヤフーがマイクロソフトの提案を拒否してから株主になった人。なぜ取締役会がそういう決定をしたか内部事情を知らない人。 仮に僅差でプロキシーファイトに勝利した場合でもアイカーンは自らの思うままに出来るだろうか? 他にもBebchuk教授は会社重役(オフィサー&ディレクター)の特権批判(直行便、ファーストクラスとか)を批判しているけど、自分が取締役になったら、例えばカリフォルニアまでデトロイト経由のノースウエストで行くのか、みたいなこともいっています(結構せこい)。
これは「少数株主」が勝利した場合のケースを想定するからいえることなのか? 例えば昔懐かしい? 三角合併による敵対的買収脅威論争がありました。三角合併はそもそも総会特別決議が必要だから敵対的に活用することは「ありえない」とする正統派説? いやそんなことはない、TOBで50.1%とって取締役を入れ替えて、総会を開催して特別決議に持ち込めばいいとする経団連説がありました。(当然私は前者だと思っていましたが) 後者の場合、50.1%とらなくともプロキシーファイトで取締役を送り込めばいい、とする「極右」の意見もありましたが、この場合でも今回の「アイカーンの乱入事件」と同じようなことがいえるのではないでしょうか? 新任取締役にも忠実義務(ありますよね。一人株主にでもならなければ)。意思決定に多少時間かかりますよね。事業会社でも実際取締役になって色々レビューしたら買収しない方がよいという結論に傾くことは「論理的には」ありえるでしょう。
夜にみた日経ネットから。 あのブーンピケンズさんもこの買収劇に「乱入」し(といっても1%未満の保有)、アイカーン氏を支持する声明を発したそうです。たしかに、将来の会社のあり方を決めるための総会なんでしょうが、マイクロソフトが5月初旬にwalk awayした以降に所有した株主が、ヤフー経営陣を突き上げるのはこれも一種の「後だし じゃんけん」だと思いませんか?
「あのブーンピケンズ」の意味がわからない若い読者の方へ この人(79歳だそうです。アイカーン72歳といい、若い!)は、日本ではバブル絶好調時代に、トヨタ系列の小糸製作所(静岡市、東海道新幹線で静岡-新富士間で工場が見えるはずです。清水あたりかな)の株を買占め、トヨタに買戻しをさせようと企てた人です。そうです、「会社を食い物にする」未遂までいった人。
80年代の「コーポレートレイダー」の同窓会のようになって来ました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/05/21 02:37:40 AM
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