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カテゴリ:敵対的買収防衛
5月28日未明、修正いたします、申し訳ございません。 インベブ社が「Plan B」としてアンハイザー・ブッシュ社の買収が難しい場合の代替案として考えているのは、SABMiller社との「合併」提案だということでした。要するにどちらかと合併を主導的に考えているということになります。誤訳でした。
(なお、直近情報では米国では、自国を代表する企業が外資に下ることに議員の反発が予想され、オバマ氏もそういった考えを支持するだろうという論調らしいです)
ビール業界世界1位(生産高、売上高とも)のInBev(インベブ、本社ベルギー)は、同3位のアンハイサー・ブッシュ(米国、バドワイザーですね)に買収提案を計画しているとFT.comで報じられた。買収価格は460億ドル(1ドル103円で約4.7兆円!)といわれている。買収後のビールの生産量は2社単純合計で世界シェア25%になり圧倒的首位となりそう(キリンは同2~3%程度)。両社広報関係者は共にノーコメントという。 当ブログでは、意識していなかったのですが、取り上げている業界では実はビール業界が一番多いのですね(次に資源関係、金融関係、電力関係などでしょうか)。特にサッポロとカールスバーグ、ハイネケンなどを採り上げていました。 したがって、ビール業界の巨人であるインベブやサブミラー(本社南ア)などが、どういう動きをするのかという点についてもある程度ご紹介していたかと思います。 このインベブの件については、当ブログ バドワイザー、デルタ航空、リオドセ。資源バブルと玉突きM&A 2月17日 でも多少取り上げていました(インベブは世界2位じゃなかったのか?)。
世界のビール業界(数値以外の記載は筆者の記憶ベースなので、ご了承ください) 日経ビジネスオンライン2007年4月18日より。現在はハイネケン、カールスバーグのシェアが2~4%ほどアップしていると思われる 鉄鋼業界同様、アルコール飲料もかつては地域密着的な志向の強い業界で(かつ重要な税収源)、国ごとに味付けやブランドがあり、他国のマーケットにはなかなか踏み込めませんでした。しかし、欧州や北米では事業化が進み、嗜好も類似していることからハイネケン、カールスバーグやバドワイザーといった巨大ブランドが育成されました。 ただし、日本を含めた欧米先進国ではアルコール消費量の成熟化、低減傾向は強く、成長性が見込めなくなってきました。 また、ビールの原材料である穀物の急騰、アルミやデリバリーのための運搬コストの高騰など規模のメリットを更に追及しないと競争に勝てなくなるという危機感もあるようです。 一方、いわゆる新興諸国(BRICs又は南アフリカのSを取ってBRICS)の台頭により、こういったマーケットがビールの消費量を底上げし、典型的な「デカップリング」業界となりつつあります。 こういった欧米市場の成熟化などを見越し、インベブやサブミラーといった企業がM&Aをテコとしてついにハイネケンやバドワイザーから世界市場の主導権を奪ってしまいました。ブランド=企業ではなく、ブランドの集合体が企業という発想で、LVMH(ルイヴイトンモアへネシー)と同様のブランドコングロマリット化しつつあり、ブランドの枠を超えた規模のメリットを追求しだしました。
インベブ 本社はベルギーなのですが、2004年にベルギーのインターブリューとブラジルのアンベブが合併して出来た会社です。現状はブラジルを中心とした南米市場の成長がすさまじく、経営の主導権はブラジル人が把握しています。したがって、「ビール版アルセロールミタル」の要素があります。13人のトップマネジメントのうち、ブラジル人が実に7人を占めるといわれています(これも日本板硝子同等買収後経営主導権が入れ替わったケースに近いのではないか?)。 07年インベブの収益構造、約2兆円の売上高の41%を南米が占めるが、EBITDA(償却前営業利益)はなんと56%を占める南米依存型の構造。欧州はこのポジションが逆転しますね。それだけ南米では収益率が良いということになります。このインベブがアンハイサー・ブッシュに1株65ドルをメドに買収提案を出すといわれています。 昨年秋に非公式に打診を行ったといわれており、そのときはブッシュ側に拒否されたとのことです。今回もインベブは確実にオフォアーするか決めかねているようですが(InBev was not about to push the buttonと表現)、様々な憶測が流れています。
オファーを強行するという説 まず、地理的な補完関係が完璧であるという考え方。インベブは欧州と南米をほぼ手中に入れているが、北米、特に米国ではさっぱりのシェアです。その北米ではブッシュが50%のシェアを握っています。 今、ビール業界は日本も同様、「プレミアムビール」が売れ筋となっていますし、利益率も格段良い。したがって、アンハイザーの北米基盤にインベブと共同開発したプレミアムビールを流し込めば、シナジーが非常に大きいといわれています。当然アルミ缶などコストメリットも莫大です。20011年までに14億ドルのシナジーが見込まれるといわれています。 今週中にももう一回話し合いを持ち、そこで、正式に提案するといわれています。仮に拒否をされた場合、「株主に提案の良否を直接訴える」可能性があるといわれています。非友好的買収提案をするということですね。 さらに、「Plan B」として、
オファーを撤回するという説 既述の通り、インベブはベルギーの企業とブラジル企業が2004年に合併して出来た企業であり、大方の見方と違いブラジル人主導で統合が進められており、現在厳格なコスト管理の下、グローバルなオペレーションの統合を粛々と進めているといわれています。ただし、この統合に当然反目する勢力もいるので、現時点ではただでさえ広範囲な管理地域に対し、「進行中」の段階で、統合に成功したとまで言うには早いといえそうです。 したがって、今度はもっと大変そうな米国企業の統合となると、時期尚早ではないかとブラジル人が考えても無理はありません。 アンハイザー側 CEOであるAugust Busch 4世は乗り気ではないらしいです。ただし、防衛策といわれていたスタッガード・ボードを廃止したらしいですので、現状では丸腰となっているらしい。 (スタッガード・ボード:取締役の期差選任。米国では通常取締役の任期が3年といわれており、3年の交代期を同時期に設定するケースが多いがこれを、例えば3分の1ずつ毎年改選していけば、敵対的買収者等に取締役を一気に変更されることがなくなる。買収防衛策の一種。日本では、1年改選が主流となりつつあること、東証がライツプランとの併用の自粛を申し出ていることから、取り入れている企業は極めて少ないと思う) 第2位の大株主(5%ぐらいの保有)はあの、バークシャーハザウェイ、そう、「米著名投資家」のウォーレン・バフェットです(彼の枕詞、米著名投資家はアイカーン氏と同じ枕詞だが、市場では全くアイカーン氏と比較にならないほど尊敬されています)。 彼の出方が非常にキーポイントになってきそうです。彼はP&Gがジレットを買収したときにも、「絶対に売らない」といいましたが、P&Gに説得されて売却しました。 尚、投資家はアンハイザー側が昨秋の打診段階で、積極的に提案を検討しなかった取締役会に不満を抱いているといわれており、次回の提案は真剣に検討するようにプレッシャーをかけているといわれています。
雑感 ユーロ経済によるドル経済の支配の象徴的なディールになるのでしょうか?ドルが凋落するとそのまま円もズルズルいってしまいそうな気がします。 また、BHPビリトン、Rioティント同様、買収企業と被買収企業が業界トップ同士で大差がありません。世界シェア3位だから、といって安穏としているとやられてしまうのでしょうか。厳しいですね。
なお、インベブ側は既に買収に必要な総額5兆円近くの資金調達をJPモルガンチェースとバンコ・サンタンデール(スペイン)にメドをつけたといわれており、あとは「ボタンを押す」だけに整っている。
しかし、毎度ながら、取材努力がすさまじいのか、口が軽いのか、ほとんど買収提案書のドラフトを読んでいるかのような内容ですね。 まあ、日本も産業再生機構案件で特に、ダイエーの処理なんてのは「筒抜け」状態だったので、あまり他国のことをとやかく言う資格はありませんが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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