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テーマ:株式投資日記(20527)
カテゴリ:敵対的買収防衛
ご参考 アデランス VS スティールパートナーズ 08年2月11日 ご存知の通り、29日の定時株主総会でアデランスは新任取締役候補2名以外の再任が否決されました。ざっくり言えば、スティールパートナーズのアクティビズムが勝利したことになります。 当ブログではスティールパートナーズを盛んに取り上げてきましたが、最近頻度が減っています。理由はサッポロHDとの「妥協」とも取れる総会前の敵前逃亡的な対応に失望したことが原因でした。
アデランスの件は2月11日に一度取り上げていますが、それっきりです。 この後経営陣は再度 08年4月17日にまたまた中期計画を開示しています 20011年に売上高900億円、営業利益111億円、配当性向50%、ROE10%以上という数値目標を掲げています。これ しかしながら08年2月期決算は 売上高 750億円、営業利益約40億円にとどまっています。このギャップを説明し切れなかったことになります。業績改善のためにM&Aをするといっていますが、チト違うような気がしないでもありません。 今回はISS(議決権行使助言会社世界最大手)が取締役の再任に賛成していたのですが、約28%の株式を保有するスティールに先導される形で反対票は過半数を超えた模様です。
さて、ここで考えなければならないのですが、これからどうするかです。 単に業績悪化と狼少年(下方修正を繰り返し、計画を発表した翌月に決算下方修正するような計画ですから)だから社長がクビになったのは仕方ないと思うと同時に、こういった株主の発言はむしろ全体的かつ長期的な株式市場や日本企業の競争力改善には好ましいと考えます。 単純にハゲタカが勝ったとかスティールが牙をむいたとかそういった議論をしてもあまり意味がありません。スティールはなんだかんだ言っても(へたくそな面がありますが)、日本企業のガバナンス改善にある程度の貢献を村上氏同様していると考えられ、誰が言ったかではなく、何が事実なのかに目を向けるいい機会かもしれません。
そして、岡本社長以下取締役にこれ以上託せないというのはわかるとしても、ではどうするんだ? ということについて。 スティールはこれまでの提案から言って、明らかに企業ごと売却を推進すると考えられます。日系ネットでは、これまでの取締役と新任取締役の計2名が暫定的に経営継続となることになっていますが、
売却するのか 新任社長を選んでアデランスという企業体を継続するのか 新任社長は内部昇格か外部招聘か(外部招聘だと身売りと同じ意味かな、日本の場合)
と言ったところに、意見を持って反対した人がどれぐらいいるかということでしょう。また、ここで空気をうまく読まないとスティールさんも「スティールの再選反対案は賛成するが、会社を売るのは嫌だ」という方も多いでしょう。 一方、外国人株主はその質のほどがわかりませんが、スティールさんのお仲間さんだったら、身売り大賛成ですし、まともな機関投資家だったら是々非々かもしれません(しかし、ISSの助言に動じないところを見ると、前者の可能性も比較的あるのでは?)。 一応、これまでのスティールさんの行動様式から、リヒテンシュタイン氏自ら取締役に就任する可能性が大きいと思います。 リヒテンシュタイン氏は「今回の株主からの不信任という結果に鑑みて、SPJSFは、同社には企業価値を拡大させるためのあらゆる戦略的選択肢を検討していただきたいと思います。」と発言しているので、以下省略ですね。「Unlock the value」 という言葉を好むようです。 反対票を投じた他の株主は売却に賛成したのでしょうか?また、再選に賛成したいわゆる「物言わぬ株主」はどう考えているのでしょうか? 人が一杯いる大企業ならともかく、アデランスは根本氏という取締役現最高顧問で現在も約9%の株式を保有する創業家の君臨する企業ですし(ちょっと指揮・命令系統が複雑な印象を客観的には受けますね)、こういった方が身売りに素直に賛成するとも思えないです。ちなみに根元氏、大北氏の創業者2名も再選を否認されています。 外部招聘するといっても米国の取締役会のように、じっくり人選して、外部の「経営のプロ」を雇うことも一般的でありません。 個人的には、拙速な身売りをせず、よい経営者を招聘してうまく企業価値を「再生」できれば、もっと彼らに賛同する株主が増えて、結果的に彼らの利回りにとってよい結果を生む、win-winの関係が出来るのになあ、と現在の日本社会の空気を読むとそのように考えますが、そんなこと関係ないでしょうかね。
ちなみに
こうやって比較すると、アデランスさんも人を使って何か開発していたけど、現時点では芽を生んでいないように感じられます(研究開発費が成果に結びつかない)。競争も激しくなっていますし(粗利率の低下)、コストコントロールをしっかりやっていかないと売上高が半分以下のアートネイチャーに利益額で追いつかれてしまいました。今なら巻き返しが出来そうな位置づけにありそうです(もっともアートネイチャーも今期、本社家屋で大幅な減損を計上し赤字に転落しており、まあどっちもどっちな感あり)。 投資有価証券の中身をチェックしていないのですが、ざっくり半分は換金できるとしましょう(税金を考慮せず)。キャッシュリッチで、持ち合いリッチ?だと、この分は実質買収価格から控除できますので、30%のプレミアムで買った場合でも、実質は8%程度のプレミアムとなります。 したがって15%程度のプレミアムだと実際は「おつり」が来ることが予想されます。なお、時価総額842億円は29日終値ベースです。 持ち合いやキャッシュリッチが「企業価値をフルに生かしていない」という意味をよく考えましょう。 また、なぜスティールがMBOを提案したかもお分かりでしょう。仮定実質買収価格約900億円(イコール企業価値)のうち、仮に450億円を借入金で賄った場合で3年後に仮に企業価値が1100億円程度になっていたら、株式価値は450から650億円となり、450億の投資で3年間で200億円稼げる結果となります(彼らのターゲットはもっと高いと思いますが)。 グリコやらハウスやらブラザー、ノーリツやら、お尻に火がつきそうですね。 ウイークデーなのでざっくりとした分析ですので、早とちりしている可能性もあります。ご了承ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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