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テーマ:株式投資日記(20519)
カテゴリ:敵対的買収防衛
6月10日のフジサンケイビジネスアイによると、
住友重機械工業はかねてから、買収提案を行っていた、米半導体装置製造業のアクセリステクノロジーとのデューデリジェンスに入るための守秘義務契約の締結を発表したことを報道しました。 同紙によると、住友側の株主総会前に相手側と合意を取って、株主側に交渉が進展していることをアピールすることが狙いではないかというアナリストのコメントを紹介しています。
このディールに関するこれまでの進展は以下の拙ブログをご参照 住友重機、米アクセリス・テクノロジーズへ買収提案、アクセリス側は承諾せず、ポイズン・ピル発動? 2月13日 住友重機 VS アクセリス社 その2 日本人にとって株主価値の意味は何?? 3月3日 ディールとは関係ありませんが、本件に関する参考エントリー(後半部分) ブルドックソース 08年3月期決算を振り返る あの企業は今?5月18日 3月に住友とTPGが買収条件を1株6ドルに引き上げてから案件の進捗がスローダウンしていました。 一方、5月13日、住友重機械工業はこの総会で、自らライツプランの導入を提案しています。 現時点でアクセリス側がディールに関して3月以降のコメントがないものの実は、5月の定時株主総会で3名のディレクターが再任否決されており、株主からも住友との交渉の前進を促されている模様です。
もし、仮に、アクセリス側が、買収防衛策(策というより戦術)の一つである「パックマンディフェンス」(逆買収提案)を仕掛けたらどうなるだろうか(注:同社は赤字会社であり、経営陣についても上記の状態で、「外堀が埋まっている」状態で、パックマンディフェンスは非現実的であり、全くの架空の話)。 既に住友側は買収防衛策の導入を取締役会決議している(株主総会で否決されれば廃止される)ため、アクセリス側は住友のルールに従うものとします(けど34ページも分析しきれないので、買収提案初期段階における情報提供に絞ります。時間ある方ご一読ください)。 大規模買い付け者に対する情報提供 すべて日本語に限るそうです まず、これに先立ち「意向表明書」の提出 1を提出後、5営業日以内に 1:大規模買い付け者およびそのグループの概要 2:買い付け者の内部統制システムの具体的内容および当該システムの実効性の有無および状況 3:大規模買い付け行為の目的 4:当該重要提案行為の目的、内容、必要性および時期並びにいかなる場合において当該重要提案行為を行うかに関する情報 5:意向表明書提出前60日間における住友の株券等の取引状況 6:大規模買い付け行為に際しての第三者との間における意思連絡の有無および意思連絡が存する場合にはその具体的な態様および内容 7:価格の算定根拠、算定経(シナジー予想を含む) 8:買付資金の裏づけ 9:大規模買付行為の完了後に意図する当社及び当社グループの経営方針(当社の属するいわゆる「住友グループ」の中における当社の位置付けに関する方針や当社の商号の取扱い(「住友」の冠の取扱いを含みます)に関する方針等を含みます)、大規模買付行為の完了後に派遣を予定している取締役又は監査役候補者の経歴その他の詳細に関する情報(当社及び当社グループの事業と同種の事業についての経験等に関する情報を含みます)、事業計画、財務計画、資金計画、投資計画、資本政策及び配当政策等(大規模買付行為完了後における当社資産の売却、担保提供その他の処分に関する計画を含みます)その他大規模買付行為完了後における当社及び当社グループの役員、従業員、取引先、顧客、当社工場・生産設備等が所在する地方公共団体その他の当社に係る利害関係者の処遇方針 (長いんですけどこれだけ原文をそのまま抜粋いたします) 10:買収に投下した資本の回収方針 11:当該買収に際し、適用される可能性のある規制、独禁法、許認可などの取得の蓋然性(弁護士の意見書をあわせて提出するよう付記あり) 12:住友重機の経営権取得後に必要な国内外の許認可維持の可能性や各種法令の規制遵守の可能性 13:反社会的勢力ないしテロ関連組織との関連性の有無 14:その他会社側が必要と判断した書類
だそうです。一方、住友重機械工業がアクセリス社に提供した資料は公開情報の限りにおいては 米国の半導体製造装置メーカー、アクセリス・テクノロジーズ社に対する買収提案に関するお知らせ 2月11日付 米国の半導体製造装置メーカー、アクセリス・テクノロジーズ社に対する買収提案に関するお知らせ 4月16日付
アクセリス社の返答、情報開示は 同社HP (Press Releaseをご参照ください) です。住友側がどのような買収提案書を提出したか開示がないので、わからないですが、現時点ではアクセリス社が提案を行おうとすれば、相当高度な日本語が必須です(注:住友重機械工業側の外国人株主比率は19年3月末ですが43%もありますが、日本語に限定ですか 株主のための情報公開なのに 株主プロ参照)。
もちろん、住友さんも上記14項目すべて考えてアクセリスに提案はされたのだと思いますが(何語で提案したのだろう?)、すべてを買収時点で開示するのは・・・(必要な許認可とか相手側の開示なしにすべて把握できるのかな。全くの同業だとわかるかもしれないが、住友は建機とか造船とかコングロマリットだし。弁護士の意見書とかも。外国人に「住友の事業精神」が理解できるのかな。また、過去はこんなこともありましたよね)。 報道にもあったように住友側は株主から、ファイナンス的な買収提案の正当性を問われているのだと思います。でも、デューデリが出来てよかったと思います。対象企業が日本企業だと、帳簿閲覧権を否認(既に5%程度アクセリス株を取得していたはず)されたり、サッポロがスティールに言ったように、特定株主への開示はしないだの「目暗」のままの交渉になっている可能性が十分あります。 ただし、買収側のクラウンジュエルであるアクセリスと住友の合弁会社の内容は熟知しているはずなので、シナジー効果がいくらかぐらいかは公表しないと住友側の株主さんも、ファイナンス的な意味でいい買収か悪い買収か判断つかなさそう。 アクセリス側の姿勢が軟化したのはアクセリス側の株主のプレッシャーがあったと推察されます。過去の拙ブログでも言及している通り、アクセリスの株主はおおむね住友の提案価格を歓迎しています。しかし、アクセリスは粘って買収価格を引き上げています(これ、ポイント)。 デューデリ後には無事「友好的」な結末を迎える(と勝手に思いますが)でしょうが、そのときの買収価格に対する注目と、アクセリス経営陣の取った一連の行動、住友の買収提案内容とライツプランの情報開示要求条件などを総合的に勘案すると、色々思うところはありますが、ちょっと総会前なのでこれ以上は控えさせていただきます(アクセス数が激増しているので)。
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Last updated
2008/06/11 06:34:12 AM
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