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テーマ:株式投資日記(20516)
カテゴリ:敵対的買収防衛
左がABのCEOブッシュ4世、右がインベブCEOブリトー(なんとなく元広島東洋カープの「鉄人」衣笠さんに似ている)。両者とも若い。 アンハイザーブッシュ(AB)は正式にインベブの買収提案を拒否しました。 主な内容 AB取締役会は全会一致で、インベブの提案を拒否する。その理由は、「InBev's Proposal Inadequate」だからというもの。 なぜ、「Inadequate」かと言うと、 昨年秋からスタートした「プロジェクト・ブルーオーシャン」を推進すると、10億ドルのコストカットが出来ること 大規模な自社株買いを実行すること メキシコ、中国などの新興国向けプレゼンスを加速させること(海外資産への評価が低いと言及) 絶え間ない生産性の改善や原材料分を賄える値上げが期待できること 結果として、09年度には、営業利益率を3%改善できる EPS(一株当たり利益)も09年度までに2桁成長率を達成できる フリーキャッシュフローは$5億ドル改善できる と言及した。 10億ドルのコストカットの目玉は、全従業員の10から15%に当たる正社員の早期退職制度を実施する。残った従業員には強いインセンティブ制度を導入して、効率的な働きをしてもらう。というのはちょっと刺激的です。 サブプライムで揺れるウォール街でも、それぐらいの人員カットなので、「なんで赤字でもないのにそこまで?」と素朴に思うのと、あの市民の声はなんだったのかという気と、買収の有無にかかわらず、リストラは行われる現実(日本もブルドックが同じ防衛策をとしましたね)。
そして、こういった自助努力と他のメガディールと比較しても、その評価が低い。 自助努力と他社比較の双方を勘案すると、アメリカの「iconic」(象徴的な)ブランドに対する評価が「Inadequate」だ、というロジックになっています。
これは、他の大型ディールのEBITDA倍率(ざっくり言いますと、企業価値/(営業利益+減価償却費))の比較をしています。他のディールの営業利益が予想値か実績値かわかりませんが、要は企業のキャッシュフローの何倍で企業価値(時価総額+ネットの有利子負債)を評価するかということです。 ちなみにABはEBITDA倍率が0.5倍違うと1株あたり3ドルも違うはずだと反論しています。 ABの2位株主であるウォーレン・バフェット氏はP&G VS ジレット(2番目に高い)のときのジレットの大株主でした。最後にはP&Gが直接バフェット氏を説得に行ったと言われています。
インベブ 同日付で、ABとの「友好的な」交渉をするスタンスに変わりないが、AB側の回答の遅れや買収提案を不当に阻止するのであれば(これはメキシコのジョイントベンチャーの買収、インドJVの買収などインベブの買収提案後にABが「防衛策」として行ったと勘ぐられている行為を指す)、ABの取締役会全員の解任を求めてくと激しく抗議し、ABの株主にこういった抗議が出来るような確認を裁判所に訴訟した、とされている。
氏名とメールアドレスを登録すると見れます。英国のサイトと思われ、ロンドン証取上場の巨大企業のCEOの15分前後の単独インタビューが見れます。たまたま、ブリトー氏がインタビューを受けています。 以下趣旨 彼は経営に一番大切なのは人材だ。ビールを造るのも、売るのも、ブランドを作るのも全て人によって作られる。インベブの30カ国にわたるオペレーションでもその国の人の勤勉性や価値観の多様性を認め、ベストのブランド、ベストのビールを造ることで引っ張っていく、というような感じのことを述べています。 ABの中間業者は「ビジネスパートナーである」、尊敬の念を持って接する、バドワイザーの従来のイメージを変えることはしない。アメフトに対する派手な広告や流通業者の協力、セントルイスでブッシュ家が創業を始めた農場の跡(記念館となっているらしい)、美術館、これらは全てブランドを形成している、我々は地理的に全く重複していない。セントルイスの街もバドワイザーブランドだ、と不安を打ち消すことに全力を挙げています。 インタビューの間中、終始にこやかに自分の言葉で、今回の買収提案のメリットやインベブとはどういう会社かを力説していました(インタビューは具体的な提案内容には触れず、市民向けのメッセージという前提があったと思われる)。 (内容だけ聞いていると日本人社長さんもこれぐらいのことは言うので、コストカッターの片鱗が見えない)
それと日本人は注目。 6月11日付で、インベブはこの大型現金買収をラザード、JPモルガンチェース、バンコサンタンデール(スペイン)を中心とし、バークレイズ、BNPパリバ、ドイツバンク、フォルティス、ING、ロイヤルバンクオブスコットランド(RBS)の「Strong Support」を受けている、と述べていました。 しかし、6月25日、金融機関から「committed financing」を受けたと報道された。コミットした金融機関は、NYTの報道順に述べますと、バンコサンタンデール、東京三菱UFJ、バークレイズキャピタル、BNPパリバ、ドイツ銀行、フォルティス、ING、JPモルガン、みずほコーポレート銀、RBSとなっている。50百万ドルのフィーを支払ったとのこと。 11日時点から東京三菱UFJとみずほコーポレートが加わりました。理由までわかりませんが、他行がサブプライムでコミットメントできる金額が小さくなった、邦銀が攻勢をかけたなどが考えられます。 元々邦銀は80年代のLBOブームのときから資金の出し手として活躍していたようで、KKRのRJRナビスコの敵対的LBOなども有力な資金の出し手として加わっていたそうです(ちょっと言葉悪いですけど、会社を食い物にしたM&Aブームの影の功労者だったとも言えなくもない)。 2点あります。邦銀は昔からキャッシュフロー主体の融資手法のノウハウが海外ではあったこと、敵対的M&Aでも特段融資すること(彼らの経済合理性からは別に悪い話ではない)をチェック。 おそらく、これらの銀行が「主幹事団」となって、さらにぶら下がりシンジケートを組むのでしょう。単純計算でも1行あたり3600億円~4000億円の「ノルマ」があるため、邦銀としてはビッグプロジェクトでしょう。 (彼らも、サブプライムで損をしたら叩かれ、手を出さないと「弱虫」と叩かれ、やや同情的な面もある)
その他 インベブのライバル、SABMiller(SABはSouth African Brewery)は本件に手を出すことはないと示唆。ただし、買収後リストラなしで、$65ドルの価格を正当化させるのは難しいと述べています。
グルッポ モデロ(メキシコのビール会社)
コロナビールはおいしいですね。ライムを入れて飲むとよりおいしい。 モデロのCEOはABの取締役を兼ねていましたが、退任しました。「利益相反の可能性があるかもしれない」という意味深な言葉を発しました。 ABがモデロの残り株式50%を買収すると言う説、モデロがABの残り50%を買収すると言う説、インベブが密かにABの買収成功後の経営の独立維持を約束した、そのためにはMBOも許容すると言ったという説、SABミラーが全株引き受けるが経営の独立を維持するといったという説など、台風の目になっています。 ABとモデロはJV関係にありますが、仲がよくないといわれていますが、ABは自分の独立維持のためにはモデロを逃がしたくないインセンティブにあります。影のクラウンジュエルになる可能性があります。 専門家の予想では、今の価格では落ちないだろうが、ABが逃げ切れるのは難しいし、プロジェクト・ブルーオーシャンが実を結ぶのに2年は短いと言う意見もあります。
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Last updated
2008/06/30 12:08:18 AM
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