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テーマ:株式投資日記(20511)
カテゴリ:敵対的買収防衛
8月1日、米ヤフー!は遅い年次総会を終えた。争点の取締役改選をめぐる委任状争奪戦は経営陣の圧倒的勝利に終わりました。 85%の株主がヤフーのCEOヤン氏を支持したと発表され、取締役全9名が再選されました。もっとも、アイカーン氏はアイカーン氏またはアイカーン氏に近い2名のものを増員した計11名の取締役会のメンバーに迎え入れるというヤフー経営陣側の案に賛成していたこともあり、波乱は回避された模様です。 こういった直前のアクティビストと経営陣の「取引」 は米国でちょっと流行っていました。この春の年次総会でモトローラやニューヨークタイムズなどが委任状争奪戦を回避するために、事前に数名のアクティビストをボードメンバーに抱えるというような形で双方妥結しています。アクティビストは4~5名ほど候補者を示し、経営陣側は2~3名ほど受け入れる代わりに委任状争奪戦を取りやめるよう打診するというもの。 現在のところ、上記2社内でアクティビストが議論を巻き起こしているという話は聞かれません(注:他に数社似たような事例がありましたが、私が当時チェックしていたのはこの2社程度です。あしからず)。
さて、ヤフーに戻しますと、マイクロソフトとの数度にわたる提案、交渉を真剣に検討していないと批判されていた同社取締役会でしたが、異口同音にそういったうわさを否定し、あるものは、「1日26時間考えていた」 と言い、ヤフー取締役会が株主の利益を最大限に考慮して行動していることを強調しました。 今後の行方はまた色々議論があると思いますが、アイカーン「取締役」が他の株主の利益を代表していない(だろう)と考えられる点があります。彼は25ドルほどでヤフーの株を買ったといわれていますが、「長期的な」他の株主はもっと高い値段で株を買っている人が大勢いると思われ、30ドル前後じゃ本当は利益にならない人も大勢います。 しかし、アイカーン取締役はおそらく、マイクロソフトがもはやヤフーの「企業丸ごと」買収に興味がないことを感じているでしょうから、25ドル以上の価値が付く価格なら妥協する可能性も出てきます。一応、彼は33ドル以上なら、「長期保有の」他の株主にもけじめが付くと考えているようですが・・・。要するに、氏が取締役として全ての株主の利益を視野に入れて考えることが出来るのか、という点に興味が惹かれます。 残念ながら、あのブーン・ピケンズ氏はさっさと損切でヤフー株を売却した模様です。 過去3年程度で見てみると、やっぱり33ドル以上じゃないとしんどそう。 しかし、考えようによっては、ヤフーの新取締役会に対し、アクティビストが出てきて「物言う」 勇気ある株主がいますでしょうか?新取締役会に物言う株主が出たとすれば、まるで、北島三郎か和田アキ子に文句言う、傍若無人な新人芸能人のような感じでしょうか? したがってヤフーの取締役陣営は、外野の声がかなり小さくなって、数的優位な内野の議論に集中できそうです。しかし、どういった議論がなされるのか見ものです。
米国の医薬品メーカー、ブリストル・マイヤーズスクイブ社がイムクローンテクノロジーズ社に買収提案を行いました。イムクロンからの返事はないため、友好的か否かなんともいえませんが、イムクロンの取締役議長はあのアイカーン氏だそうです。ブリストルは30%のプレミアムを乗せて、1株60ドルで提案しているようですが、金曜日の株価は既に60ドルを超えています。 イムクロン取締役会の声明が見ものです。だたし、ブリストル社は既に16.7%程度同社の株を保有している模様で、他社との争奪戦は考えにくいですが、ブリストル社の平均取得株価は60ドルのもっと低い価格だと考えられるので、60ドルでは済まないのではないでしょうか? 取締役としてのアイカーンさんの手腕を見てみたいと思います。しかし、医薬品にインターネットに通信機器(モトローラ)に、小売など様々な業種に顔を出していますが、お忙しいんですね。 イムクローン・テクノロジー社(過去3年間の推移)は60ドルの提案が十分って感じ。
ヤフーが今回のマイクロソフトからの買収に耐え抜けたのは、ひとえにマイクロソフトに戦略上の迷いがあったからということになるでしょう。 自らの株価も低迷していますし、マイクロソフトはグーグルが将来世に出すといわれているネット上でエクセルのようなスプレッドシートが取り出せる機能(商品名忘れてしまいました)がヒットすれば、MSのOSそのものをパソコンに標準装備する必要性がなくなるため、グーグルへの危機感を抱いているといわれています。 検索機能はそれに比べると、戦略上の優先順位が劣後するのと、同分野で圧倒的優位に立つ、グーグルに経営体力をつけさせたくないという、むしろ自らの企業防衛上の理由でヤフーの買収にうごいたといわれています。 インベブやBHPビリトンなどが戦略上の野望を達成するために、是非にとも、というほど固執していない点がMS側の事情でしょう。 したがって、今回のヤフーの防衛(まだ終わっていませんが)が、日本の参考になるかはかなり事情が違うでしょう。しかし、アイカーン氏との取締役会での今後の議論はひょっとして、物言う株主との「付き合い方」に何かヒントがあるかもしれません。 氏はたくさんの企業のボードメンバーになっていますが、ヤフーほど有名企業はないので、情報量も多そうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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