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元・経営コンサルタントの投資日記

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2008/10/20
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カテゴリ:敵対的買収防衛

22日深夜、1文字だけ修正しております

スティール・パートナーズ(SP)に関するエントリーは久しぶりで、アデランスでの総会におけるまさかの社長解任劇以来だと思う。

本件への結論としては、ノーリツ側は後がないという感じで、SP側は株主総会(12月決算なので3月ごろ)に何か提案するのに向けたプロセスという感じかもしれませんが、そろそろ日本を理解したほうがいいかもしれません。そのほうが効果的です。

 

16日、ノーリツ側はSPのTOB提案について、TOBの際はライツ・プランの手続きに従うように意見具申しました。

ノーリツ側の回答

 

これに先立ち、SPは08/09/11に1株1025円で発行済み株式総数の50.1%以上の取得を目指すという提案に際し、SP自身の提案が企業価値の向上の資するはずであるという理由から、ライツ・プランのルールの適用外で本提案をTOBにかけるよう取締役会の同意を得るという趣旨であったものと理解されます。SPのノーリツへの買収提案

 

これまでの経緯

SPのノーリツに対するプレスリリース

07/12/13に「企業価値向上のための提案」と称する分析レポート以来、盛んに赤字のキッチン・バス事業についての方針を問題視しています。

その後

1月29日付では、上記提案を経営計画に組み込むことへの警告

7月14日付では、不採算事業の撤退と経営陣の交代をも示唆する文章を発表しています。

そして

9月16日のTOBへの取締役会の賛成提案へとつながっていきます。

 

これに対してノーリツは

2月20日に、「第三次中期経営計画」で、同事業を黒字化するといっています。

 

 

争点は、

SP側が不採算(赤字)の住設機器(システムキッチン、システムバス等)の事業が赤字化し、かつ固定費もかさむので、ライバルであるリンナイ(5941)と比較してかなり収益性が悪化していることに対する不満です。

さらに、ノーリツがキャッシュリッチで低ROEなので、もっと株主還元をしっかりしてほしいというものです。

 

一方、ノーリツ側は、住設機器の事業は温水空調器(給湯器など)、厨房機器(コンロや食洗器)の事業とシナジーがあり、これを撤退しても固定費の抜本的な削減にならず、逆に赤字幅が広がる(営業赤字だけど固定費は賄っている)と主張。

また、創業事業で経営理念の中核だからはずせない(とメッセージ)とのことです。

ただし、SPの提案に対しては

「本公開買い付けが当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上に『明らかに適う』とまでは認められないと言う消極的な判断を行ったにとどまり、当社の企業価値および株主価値共同の利益の確保・向上に「反する」ことにつき、積極的な判断に至ったものではありません。」

という、あいまいな言い回しとなっています。ざっくり言えばSPの提案が共同の価値向上に資するかどうか取締役会としては絶対的な自信がない、ということでしょうか。

ノーリツとしてはお風呂が創業の原点で、「お湯を作る、お湯を使う、楽しむ」が価値提供の会社だと信じて今まで事業を行ってきたので、いきなりその原点を否定されても判断できない、という風に言いたげな内容となっています。

ただし、同社の発表資料ではシステムバスの損益分岐点は05年以降、3年連続売上高実績を回っており、黒字化が厳しいことを匂わせています(会社側は固定費削減で達成しようと考えている模様)。今期も7億円の営業赤字を計画段階で計上しており、黒字化は11年12月期まで待てという中期計画です。

 

なお、SPとしては、TOBにより経営権を把握できれば、自らの提案を実行すると言っています。9月の提案では経営陣の帰属については言及していません。

 

株主価値は向上することは間違いない(この市場動向のなかでプレミアムが付いているし、今のところ買取株式数の上限を言及していないので、非公開化もありうるのではないか)のですが、企業価値の向上に資するかわからないというのは言い逃れに聞こえます(ただし、従業員一同がSPをどうしても生理的に受け付けないので、経営権を支配した瞬間に全員辞表を叩きつける、という風であれば別ですし、結局は事業を売却するとなると従業員の処遇をどうするのか、という点に不安があるのと創業家に気を使っているということでしょうか。それが守るべき「企業価値」なんでしょう)。

 

SPは、このままライツ・プランを活用した提案に進むのか、別の手をとるのかわかりませんが、「じゃあ黒字化してROE8%をやってくれよ」というのが本音かもしれません。要は業績を改善して資本効率を改善して株価が上がればいいのですが、埒が明かないので提案やTOBに踏みきったのでしょう。

 

客観的に見ていますと、ノーリツ側は黒字化への執念を見せることと、資産効率の改善は必須でしょうし、外部環境が悪化したとはいえ今期決算が山場かもしれません。10年先を見据えると中期計画では述べていますが、今年がなければ10年先もないというのが実際ですし、創業事業から撤退して成長している企業もたくさんあります。2期連続赤字は許されないと思います(実質無借金企業だから悠長なのかもしれませんが、銀行から見ると要注意先候補になってしまいますので、色々銀行対策も本来なら大変になってくる)。

もし仮に創業事業だから、多事業とのシナジーがあるのだ、というのならこの事業を早期に黒字化し、利益化することが創業者から託された現経営陣の宿命であり、ただ継続しているだけでは、創業者も悲しむでしょうし、3年先に黒字化とは変化のスピードの速い今日の情勢では悠長すぎると考えられます。何が何でも早期黒字化、利益化を断行すべきです。経営理念という目標を追求・実現するためには利益という燃料が必要だと思います

 

SPは9月7日付日経ヴェリタス「脱『こわもて』対話重視へ 米スティール、日本での投資スタイル転換」に記載されているような対話重視路線に転じたようにも見受けられず(今回の提案にいたるまで十分な対話があったとは思えない経営陣との食い違いなのか、経営陣から敬遠されているのか)、新聞記載を実践してほしく思います。

また、まずは経営陣と一緒に赤字事業の黒字化の道を探って見るというのが「日本的」だと思います。赤字だから止めましょうでは、オーナー色が強い日本企業は「わかっちゃいない」と一蹴されるだけです。

SPが出資する企業は上場とはいえ、実質オーナー企業が多く、公開企業と言えど、オーナーは戦前の天皇陛下とあまり実態が変わらないケースが多く、「尊王」する姿勢を見せないと、ウォールストリート式のロジックを投げ込んでも、二重橋の向こうには届かないと思います。

また、自社株買いの提案はいつも極端なメッセージが多く、保守的な経営陣には腰が引けそうで現実的な提案ではないと思われます(提案では議決権の38%の株を自社株買いすると記載ある)。

ただし彼らが日本に上陸して6年経過し、その間完全撤退した銘柄は少なく、「長期的な株主」とは一応いえそうな気がしてきました(単に売り抜け出来なくなっただけかも知れませんが)。

 

今回は例の「買収防衛策の在り方」に行く手前の攻防ですが、ほとんど取締役会の意見は今回の社長声明に出し尽くされていると思います。したがって、このままライツ・プランに沿った手続きを踏んでもあまり画期的な進展がないのだろうと推測します。

もしSPが「長期的な株主」なら、赤字事業の早急な黒字化を支援し、それでもダメな場合にもう一回、大胆な提案をすれば効き目があるかもしれません。

本来は経営資源をぱっとしない事業につぎ込むより、強みのある事業に注ぎ、リンナイ他の競争相手とのシェア争いに負けないようにしないと、「その時」では遅きに失する可能性もあります。

個人的には経営判断が遅くなって手がつけられなくなるほど事業劣化した企業をたくさん見ていますので、風邪ではないですが早目、早目の対策がいいと思いますが、こうもかたくなな以上は経営陣と一緒に考えることでしょうか。

蛇足ですがキッチン・バスなどは、山勘ですが、製品価格に占める材料費割合が高いため、主要材料の高騰が結構利益を直撃するコスト構造ではないかと推察します。TOTOや松下電工などでも苦戦しているようです。

 

いずれにせよ、腹を割った話し合いが出来ていると思えず、今回の提案も従来型SPの姿勢とそれほど大きな差がないように感じます。一方、ノーリツの株主構造は硬直的なので、経営陣が賛成しない限り、抜本的な株主構成の変化も望み薄な気がしますが、経営陣も経営理念だというのなら、意地を見せるべきでなんとも締まりのない争いのような気がします。

一応、経営陣側から今後の対応策をSPと話し合いたいという声明が出ていますので、今回のTOB提案は話し合いのきっかけになるのかもしれません。






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Last updated  2008/10/22 02:47:52 AM
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