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元・経営コンサルタントの投資日記

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2008/12/17
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カテゴリ:敵対的買収防衛
すみません。当ブログで取り上げるべきテーマだった、東洋電機製造 と日本電産の敵対的買収提案の件は勃発時点が多忙であまりチェックできていなかったことを言い訳にほとんど取り上げていませんでした。

月曜日に日本電産側は提案期限切れを理由に、提案を撤回しました。詳しく正式発表文を読んでいないのですが、おおむね日本ハウズイングと同じようなことと想像いたします。強いて言えば、特別委員会の勧告を受けて、日本電産側と2回程度面会した程度で、「委員会の顔を立てた」ことぐらいが前進したのでしょうか。多くは無意味な質問合戦に費やされたようです。

 

タイトルどおり、東洋電機製造、Yahoo!、Rioティントの3社は敵対的買収の防衛に成功しました。が、防衛後の世界は欧米と日本ではかなり違うようです。

 

Yahoo!は現在、創業者でもあるヤンCEOは辞任を表明。後任CEOが決まるまで暫定的にCEOをしていますが、マイクロソフトに「あの時」売却しなかったことを非難されて、CEOの座を維持でいなかったようです。後任CEOには元ボーダフォンCEOなどの大物のうわさもありましたが、当人は否定し、選考プロセスは難航の模様です。

後任者はマイクロソフトへのヤフー株の売却交渉が第一目的になるか、マイクロソフトが提示した33ドルを上回る成績を上げることが求められるというきつい任務を負っています。

マイクロソフトはもう、お手の物で、サーチエンジン事業だけの買収だったら相談に乗る、とYahoo!側は非常に難しい立場にあります。

面白いことに、バルマー、マイクロソフトCEOも永守社長も、「(相手側は)最初から売却する意思を感じなかった」(趣旨)と同じような感想を直談判で感じていた模様です。 

「あの顔には、たとえ40ドルといっても売却しないと書いてあった」(バルマーCEO )と当時を語っています。

 

Rioティントは、まあ、Rioが悪いと言うより、欧州の公取委が却下してしまったことと、BHP側の景況感から今買収は得策ではないと判断したことが提案撤回の最大の理由のようです。

しかしながら、Rioは昨年夏にアルキャン(カナダ)を67%ものプレミアムで買収しており(当時確か5兆円)、ほぼ借入金で調達しています。したがって、BHPは買収後この借入金のリファイナンスを考えていたようですが、先行き不透明感から、多額の借財を負いたくないというのが提案撤回の最大の理由のようです。

ということは防衛後には、Rio自身も過剰債務の返済に苦しむことなり、アルバニーCEOは厳しい目で見られつつあります。株価も買収期待がはがれたので、30%下落した模様です。

鉄鉱石の価格や生産量とも急減が避けられないまま、バブルで高値つかみをした借金の返済が重くのしかかります。資産売却を急がねばなりませんが、資産価値が劣化しています。

そして、中国(中国アルミが10%前後Rioの株を保有している)がさらに増資などでRioの支配権を手に入れようとするうわさがあります。まさに前門の虎、後門の狼です。

 

翻って日本では。ブルドックソースの社長は全く何もとがめられていません。最近ではリストラのために閉鎖する予定だった工場すら閉鎖しないような記事を見ました。

TOCはダビンチからのTOBに僅差で「防衛」しましたが、これといって経営陣、創業家にプレッシャーはありません。

日本ハウズイングは、原弘産の保有株式を、お仲間のリロホールディングスに持ってもらい、6億円を「防衛費用」に支払った以外に特段変わりありません。

東洋電機製造では「提案可否の判断は株主がする」と繰り返し言及していましたが、株主が判断する機会はついに訪れませんでした。これから独力でこの不景気を乗り切る資金繰りが付いたから強気に出たのだと思いますが。

 

こういった日本企業はオーナー経営で持ち株のかなりが与党株主であるため、規律が働いていない点が欧米との最大の違いでしょうが、防衛した企業が買収提案前と比較して何も変化がないというのもいただけないというか、これでは防衛策を導入すればあとは「ごね得」となってしまいます。

日本でも防衛したとしても高くつく、という何かがないとせいぜい数億円程度で防衛できてしまうシステムだと防衛策入れたもの勝ちです。

あの永守さんでさえ、突破できなかった(永守さんだからと言う意見もあるが)ライツプラン。提案側がファンドだとか誠意があるとか、企業価値を向上させるとか関係ありません。ただNoを言い続けていればよい、ということになってしまいました。

(最も今回、日本電産側の景況感も悪化しているはずであり、リスクを負わなかったという側面があったのだろうし、銀行も期限を越えて株式買収資金の融資に応じるほど余裕がなかったのでしょう。東洋電機製造は「運」も味方だったと推察します。

 

以下雑談

昨日のゴールドマン、今日のモルガンスタンレーの決算発表でもニューヨーク株価はたいした反応を示しません。2社とも巨額の赤字計上をしましたが、株価は2日通算でかえって上昇しているようです(午前2時現在ですが)。モルガンスタンレーは続伸しています。

ひょっとして、金融恐慌の山を一つ越えたのかもしれません。後はバンク・オブ・アメリカの来月の決算発表が最後の勝負でしょう。おっとその前にゼネラルモーターズへの融資がどうなるのか、という山がありますが。

空売りする人がいなくなった、材料出尽し感があるのでしょうか。投資にはもってこいの時期が来たのかな?

 

最近の風潮はオバマ次期大統領が全てよくしてくれる、と期待が過剰に感じられます。彼の側近は元クリントン政権の重鎮です。「Change」といったものの閣僚はチェンジできていないし、オバマ氏のPER(株価収益率;期待感)はヒートアップしすぎではないかと感じてしまいます。確かに優秀だと思いますが、全知全能ではないので、等身大に見てあげたいものです(と言いつつ彼には日本経済復興の期待も副作用としてあるんですが)。

仮に政策や手腕が期待はずれ(これは高い現在のPERを上回る成果が上げられなかったに過ぎず、並み以上の成果を挙げても起こりうる)終わった場合、ちょっとかわいそうな気がいたします。






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Last updated  2008/12/18 02:21:03 AM
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