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テーマ:株式投資日記(20509)
カテゴリ:投資一般
週末のNY市場は雇用統計が大幅悪化であったにもかかわらず、ダウ平均は2.7%も上昇しました。雇用統計の悪化を受けて米議会での景気対策案がかえってまとまるとの思惑からだそうです。実際土曜日には共和党の議員が一部民主党に歩みよるような記事が出ていました。
これだから株はわからない。 また、BRICsの一員であるブラジルも金利を引き下げるなど株式市場がやや回復気味とのことで、保有するヴァーレの株(ADR)はここ数日、絶好調の上昇振りとなっています(もっともゆり戻しのリスクも十分ある)。ヴァーレとはブラジルの資源会社で、旧社名をリオドセといい、90年代に民営化されました。日本の三井物産が確か5%ほど株式を保有しています。鉄鉱石の輸出では世界ナンバーワンです。 こういったコモディティが上昇する気配を見せると言うのは、ちょっと期待してしまいます。壊滅的な統計指標の中にも期待先行型の上向きな話題がチラホラあります。
とは言っても、企業業績、実体経済はこの1から3月が本当の正念場と思われ(10~12月はまだ、9月までの受注残などがあり、完全に不況モードとはいえない)、4月以降さらに落ち込むのか、底這程度で推移するのか、予断を許しません。私は(季節変動の大きい企業を除き)これからの3ヶ月の決算を4倍したものが10年度の決算だ、と思うようにしています。それ以上はアップサイド。
そういったさなか、1月23日にはゼネラルエレクトリック(GE)が4Q決算を発表しました。決算自体は自社の予想の範囲内(レンジの下限ぎりぎり)でしたが、市場が注目していたのは配当を減額するか否か、と言う点でした。 既にGEはスタンダードアンドプアーズ、ムーディーズの双方から、栄えあるAAA格付けのネガティブルックというイエローカードを出されています。大半のアナリストも09年、遅くとも10年にはAAに格下げになるだろうと予想しています。 また、配当も1株1.24ドルは約105億株の当社には130億ドル(約1.2兆円!!)の負担となっています。08年度の純利益は173億ドルでしたので、配当性向は75%にも上っています。 08年度はイメルト自身も「GEキャリアの中でもっとも大変な悪環境」と不況を認めながらも、1株1.24ドルの配当と会社予想では約150億ドルの純利益を目標(金融50億ドル、その他横ばいとする)に掲げ、利益の87%が配当になるという背水の陣を引いています(しかし、GEは12月のバランスシートに現預金が900億ドルもある!!!)。 したがって、配当を切り下げ、留保金を増やすことで格付けの維持を図る、と考えるのが妥当でしょう。配当の半分でもあれば、GEキャピタルの不良債権の償却ももっと踏み込めると思われます。 決算発表当日、イメルトはCNBCのインタビューにこたえましたが、私にはかなり動揺しているような印象を受けました。彼は悠然と大衆に語りかけるプレゼン力があり、ウェルチもそれを気に入っていました。しかし、インタビューでは「配当は絶対約束する。トリプルAも維持する。それがGEの哲学だ」と言い切りましたが、何となくしどろもどろしていました。それが気になりました。 (ちなみにCNBCはNBC放送の子会社で、NBCはGEの子会社である。子会社のTVに出演してこのありよう)。 彼は昨年3月に1Q決算の予想を大きくはずして、前任の元カリスマ経営者ジャック・ウェルチに大目玉を食らいました。詳細は下記参照。 GEと日立 サブプライムによる「信用の収縮」と「信頼性の問題」(08/4/21) したがって、彼が「配当も格付けも絶対維持する」と言い切っているのは彼のGE生命を賭けた発言だと捉えました。 GE幹部の発言も「格付けがAAになったとしても、業務に大きな支障はない。しかし、我々はGEなんだ」とコメントしています。しかし、こういった発言から、配当重視の姿勢を崩さないメッセージと考えられ、GEは決算発表後も大きく株価を下げています。 格付けが下がると、金利が上がるので、GEキャピタルの収益が激減する、と言うのがワーストシナリオです。
最近行われたM&Aでも買収ファイナンスの金利がとんでもない金利でその資金調達環境を物語っています。 アルトリアグループ(旧社名フィリップモリス)がUSTを1月上旬に買収したときの金利が7.125%、ファイザーがワイスを買収する際の金利がやはり年利7~9%(ファイザーはAAA格付けです)とクレジットクランチ状態です。調達できるだけまだましです(もっともブリッジローンというファイナンス上の性質も金利に影響しているはず)。 格付会社はサブプライムではA級戦犯扱いでしたが、さりとて、トリプルA格でもこれですから、企業の資金調達にやはり格付けは高いほうがよいに決まっています。特に金融は鞘抜き商売ですから(また格付けが落ちると株価も落ちる)。
私自身も900億ドルの現預金が積みあがっているバランスシートを見ると、配当は大丈夫と思うのですが、GEキャピタルの資産内容までわからないので、不安です。さらにイメルトがやや自信をなくしてしまったかのように見え、彼の危機感は伝わるのですが、不安になります(昨日もWSJのインタビューで同じことを言っていたが、必死に訴えているようでかえって聞く方は不安になる)。
が、週末、米経済再生諮問委員にイメルトが選ばれました。
私は、GE発行済み株式総数の0.0000001%程度のパーシャルオーナーに過ぎないのですが、まずGE、GEキャピタルの再生を優先し、諮問会議はそれこそウェルチ氏にでもやってもらう(その方が諮問会議も盛り上がること間違いなし)、配当は削ってもいいからやはりGEキャピタルのリストラを最優先にやってもらうことだろう。捕まえる兎は一匹でよい。 しかし、イメルトもCEOの座を賭けて配当を守っているのだろうし、今は見守るより他はない。内部成長を重視したこれまでの彼の手腕は比較的良好だと思っています。 GEの収益構造(10億ドル単位)。総売上高1825億ドル、営業利益263億ドルで金融部門は86億ドルの営業利益で部門トップ。 電球、原子力タービン、航空機エンジン、風力発電、TV局、映画会社(ちなみに「マンマ・ミーア」はUniversal)、LBOローンと実に多角化しているが、この会社はウェルチの時代に「シックスシグマ」を初めとする企業哲学が各事業にいきわたっていて、単なる事業のよせ集めでもない点が強み。しかし、イメルトはやや地味なので、「アメリカ株式会社」の色も褪せつつある。
ちなみに比較的堅実な三井住友FGの今期の予想経常利益は4800億円に過ぎない。GEは10年度の金融部門の予想部門利益を50億ドルと見ている。これでSMBCと同じレベル(最も邦銀は為替業務という「公共事業」を抱えているので、簡単な比較が出来ないがGEの巨大さがわかる)。 GEのバランスシート(10億ドル単位)。不良債権と思わしきものが、会社側発表ベースで3から4%であるが、果たして・・・。株主も今が正念場だなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/02/08 11:03:46 PM
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