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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/03/10
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カテゴリ:敵対的買収防衛
昨日の「武田ショック」はすごかったですね。ストップ安とは・・・。新薬開発のプレッシャーが強くのしかかりますね。

以下のアステラス側の事実は同社のHPの公開文書を参考にしています。米国のSECファイルはとても読めませんので、そちらでもっと詳しいことが公開されていると思いますが、時間がなくご容赦ください。

昨日は憶測段階のブログエントリーでしたが、今日、アステラス製薬は、正式に敵対的買収の提案先である、CVセラピューティクス社にプロキシーファイトを挑むことを公表しました。

CV Therapeutics社に対する株主提案に関するお知らせ

要するにCV社の取締役の首を挿げ替えて、アステラスの提案に「Yes」と言わせてしまうということでしょう。

 

これによると、アステラスの推薦する2名の取締役はアステラス社によれば、「高い適格性を有する独立した」者とのことで「株主にとっての価値最大化機会を前向きに検討する意思がある取締役会の選任」のためには必須だと主張しています。

相手側のCV社は「ポイズンピル」(すなわちライツプラン)を導入済みで、「Just Say No」 の状況です。

 

一旦、強行策をチラつかせて、今後、CV社側の出方を見るのでしょうか、それともそのままプロキシーファイトに持ち込むのでしょうか?

では、このポイズンピルをどうやって突破するかと言えば、TOBで出来るだけたくさん買い集めて(2/3超が必要)、(日本人が忌み嫌う)株主の権利とやらを行使して、アステラスに好意的な(注:同社は「独立したもの」と述べています)取締役を送り込み、ポイズンピルを消去することです。または2/3を超える委任状を集めてその意思を貫くことにあります。

 

なお、CV社はスタッカードボード(取締役の期差選任;取締役の任期を期ずれさせることで、一度に過半数の取締役のイスを乗っ取られないようにする。米国では取締役の任期は3年程度が一般であり、取締役総数を3で割った人数を毎年改選するケースが多い)を取り入れている模様ですが、これも、アステラス側はTOBで2/3を掌握して、一気に残り2/3の取締役を解任させようとしています。

これが成功すると、近年まれに見る敵対的買収劇になるかもしれません(もっとも私が見ているのは大型のM&Aばかりなので、今回の1000億円程度のM&Aですと、見落としている可能性がありますが、何といっても、仕掛け人が日本企業ですからね)。

 

多くの敵対的買収は、結局、買収者が価格を上乗せし、被買収者が「友好的」に降参してしまいます。

アステラスは09年1月27日に提案した、1株16ドルを変更していません。価格は買収提案発表日の前日の終値より41%のプレミアムが付いています。しかし、それ以降は16ドルを貫いています。

アステラスによると、16ドルはどこの誰ともわからない「第三者の意見」も取り入れた価格、とのことで具体的な算出根拠は公開されていません。原弘産と日本ハウズイング(懐かしいなあ)のような、完璧な計算の後はないですね。

 

かなり飛躍しているかもしれませんが、うまく2/3買い集めても、残りの株主にヘッジファンドのようなモノがいて、「16ドルではまだ安い」と反対するとか可能性がないのでしょうか?その場合、アステラスの息のかかった取締役は、どういった判断をするのでしょうか?(独立した方なんですよねえ???)

杞憂かもしれませんが、こういった可能性を排除するために(CV社の株主名簿が手元にあるわけではないと思う)、もう一声ぐらい価格を上乗せした方が良いかもしれません(もちろん、M&A後の採算の方が大事ですが、M&Aの戦術としては)。

 

TOBはすでに2月27日にスタートしていますので、さらに何らかの反応があるかもしれません。俄然ヒートアップしてきました。

蛇足ですが、どこの証券会社がアステラス側のアドバイザーなんでしょうか(たぶん米系だと思いますが)。米国だとアドバイザーは開示されるのですが。

 

日本だと、「提案どまり」 で 実際にTOBに突入することは敵対的の場合は(今まで)ありませんが、アステラスは思い切った手を打ってきました。強気のアドバイザーがいるんだろうなあと感じた次第です。野村や大和の仕業ではないことは確かです(旧リーマンの現野村の人ならありうるか)。

 

アステラスの株主側の立場はどうなるのだ???

アステラスの株主にとってみれば、なぜここまで強硬な姿勢をみせてまで、CV社を買収する意義があるのか、という点については十分な説明がないと思いますが?

バイオベンチャーたるCV社は開示資料によれば3期連続で最終赤字です(たぶん研究開発費を吸収できないのだと思いますが)。そのような企業に約1000億円を投じてどのようなシナジーが得られるのか、など示す必要性もあるのではないでしょうか? よく「3年後に100億円のシナジー」とか言うあれです。

アステラス株主に今回のM&Aのメリットが何であるかの十分な説明は重要だと思います。アナリスト向けの説明会や株主向けの説明資料などの開示は跡がないです。エーザイさんはこの辺はとてもきちんとしていましたが。

 

一般論

M&Aは自社の株主の価値を最終的に向上させるための一つの手段であり、一番重要なのは自社株主への説明責任ではないかと思う次第です。株主はM&Aでなくとも内部成長でもいいので、業績が良くなればそれでいいのです。ただし、その業績達成のために、どれだけ資本を効率的に投下しているかが問われるはずです。

 

M&Aは友好的に行われることが良いに決まっています。無理やり買収しても、買収後のインテグレーションが大変です。もう少し、柔軟な方法をとった方がいいかもしれません。買収提案に対して、注目を置いているのは株主だけでもありません。従業員や取引先も注目しているはずです。そして、自社のステークホルダーも注目しています(うちの会社は結構えげつないなあ、なんて思う人もいるはず)。

M&Aが活発化していますが、社長の功績はM&Aをやったこと、ではなく、やはり利益の極大化、株主価値の極大化で評価されるべき、という風潮が出てくると、ずいぶん雰囲気も変わるのでしょうね。

それともし、このM&Aが成功すれば、この程度で日本でも敵対的買収が成功できる制度を作り変えてほしいものです。ことM&Aにおいては制度的に他の先進国とアンフェアーで、もし仮に、日本企業がのそアンフェアネスを 「有効利用」 しているとすれば、海外からの非難は間逃れないでしょう。






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Last updated  2009/03/10 01:35:27 AM
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