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テーマ:株式投資日記(20509)
カテゴリ:敵対的買収防衛
ついに堪忍袋の緒が切れた? FT.comによると、中国アルミ(チナルコ)は英豪Rioティントへの195億ドルの出資を見合わせるようです。 Chinalco set to quit $19.5bn Rio deal いきさつは以前にも少し書いていますが、以下をご参照 中国は「漁夫の利」を得たのか? Rioティント、チナルコ195億ドル・ディール、BHPの反撃があるのか?09/2/13 中国の経済成長は歓迎されているのか、それとも妬み・嫉妬のタネなのか? M&Aで考える。09/04/02
結局、Rioティントの株主(注:チナルコはRioの約9%の株を保有する筆頭株主でもある)が猛反発したこと、Rioのメインの資産があるオーストラリア政府の許認可がなかなか降りないこと(豪州では中国の相次ぐ資源資産の買収に最近神経質になっているともいわれている)など、アンチ中国の風が激しく吹いていました。 Rioは200億ドルといわれる多額の借入金の返済期日が迫っており、資金調達は必須でした。そこに、ナンバーワンのお客様である中国国営企業からの出資の申し出は「渡りに船」でした。 しかし、英国他の大口株主の猛反発にあった(英国では株主割当増資の検討を優先する習慣が強い)ため、デットロックになっていました。特に、中国側がRioの鉱山に直接出資すると言うのが、Rioの企業価値を骨抜きにすると反発していました。
いやー、非常に滑稽な結果となってしまいました。Rioは借入金の返済に困窮していて、結局これが返済できないと経営が行き詰ってしまいます。Rioの経営が行き詰ると困るのはほかならぬ株主のみならず、中国側も困ってしまいます。したがって、本来このディールは利害関係者が皆ハッピーなはず? でした。 何せ長期安定的な大口顧客が自ら出資してくれるのですから。中国以上のお客様は今の資源業界にありません。
反論の大半が、中国企業がかなり大きな株主になると、Rioは中国の言いなりになって、不当に廉価な価格で鉱石を中国に売る、と言う利益供与的なものでした。 しかし、今年の鉄鉱石の交渉では、Rioは中国側の昨年比40%ダウンの提示を跳ね除け、先に新日鉄とポスコに対し33%ダウンで契約をまとめ中国に強気の対抗姿勢を崩していません。したがって、Rioは忠実に利益の極大化を追求している、と言えそうです(今年だけとの声もあるが)。
株主割当だけで十分な資金が調達できるのかが次の焦点で、ひょっとするとBHPビリトンの再来がありうる展開にもなってきました。BHPビリトンはこの状況で、会社丸抱えは消極的で、Rioの持つ優良鉱山の権益買収で生産性を高める戦略を狙っているようです。それが証拠に、この冬かなりの額の社債を発行していまして、軍資金はあるようです。西豪州のピバラ鉄鉱石やチリの銅山が有力と言われています。
一応、これまでの報道ではRioティントは「Plan B」(株主割当)も考えている、と主張していましたが、「Plan C」(同業他社への資産売却)も検討せざるを得なくなってきました。
外野からは、ちょっと注目度が上がってきます。チナルコは「ええ加減にしろ」といった感じでしょうか、それとも米国債の買い入れを優先したのでしょうか? 空気を察したのでしょうか?Rioの経営陣は益々眠れない夜が続きそうです。
「感情論」 ならぬ 「勘定論」 で考えればいいディールだったのに。英国の人は「功利主義」と思っていましたが、案外こだわりますね。
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