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元・経営コンサルタントの投資日記

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2009/07/12
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カテゴリ:投資一般
7月12日、両国国技館で表題のセミナーが行われました。出席しまして、その雑感など。

 

講演者

午前の部

榊原 英資氏

森永 卓郎氏

午後の部

澤上 篤人氏

堀古 英司氏

和島 英樹氏

福永 博之氏

大島 和隆氏

 

でした。楽天証券を利用している人には、おなじみの顔ぶれ。私は今年が初参加。午前中はエコノミスト、午後は投資家的観点による経済解説といった内容。楽天証券なのに、山崎元氏が不在というのは少し残念。

今日の講演前の個人的なポイントは堀古氏。米国経済が日本経済を決定するからです。自分の米国株投資方針も知る必要性があります。

その堀古氏の講演が終わって、帰ってしまいました。大島さんのご尊顔を拝謁したかった気持ちも大きかったのですが、彼はどちらかと言えばテクノロジー系の株式投資が主力のイメージで、配当成長投資(Divedend Growth Investment)を目指す私とはやや方向性が違うだろうと思ったのと、堀古氏の内容があまりにも、悲観的だったから。

 

トップバッターは「ミスター円」こと榊原氏。彼は2番底を警戒つつ、世界経済は構造変化の真っ只中にあり、21世紀型資本主義のトレンドをよく見て投資しろ、とアドバイス。今回の不況は循環型ではなく構造型であると指摘。世界は構造変化が必要だと。

米国は金融バブル、消費バブルが終焉し、経済構造の変化が必要、欧州は貴族的政治から庶民的社会への社会構造の変化、日本は政治構造の変化が今後の重要テーマであると。

20世紀型モデルとは自動車産業中心であったが、21世紀型は(従来型の)自動車中心とはならない、と主張。

日本の今後の成長分野は、規制緩和があればとの条件付ながら、医療、教育・娯楽、農業などになる可能性があると示唆。

リップサービスを兼ねて、20世紀は自然と闘う欧米型の世界観だったが、21世紀はグリーンニューディールに代表される、自然と共生型の世界観であり、農耕民族であるアジア人にとってはフォローの風だ、とホッケースティック型の論調で締めくくり、「明日の希望」 を見させてくれた。それと政権交代は確実であるかのような論調も。

 

二番手は森永氏。彼の基本ロジックは常に、世の中を資本家と労働者に分断し、労働者寄りの世界観を説くところにあり、世の評論家諸氏(おおむね経営者より)とポジショニングを正反対に取ることで、存在感を増している。

そのワーキングクラスヒーローな彼が、資本家の集う講演に出演するというのも面白いが、講演の内容はその倍以上面白かった。

いまの低迷は、米国ではなく、小泉・竹中に象徴されたインチキ新自由主義経済の崩壊と断言。資本家が労組者をポイ捨てするような社会では繁栄は興らないと主張。これまでの世の中を戦国時代にたとえ、信長・秀吉を新自由主義社会の資本家にたとえた。

いわく、戦争で勝利して得た領土を部下に分配するというのは、元手がなくリターンを得るレバレッジ投資と同じで、分配する領土がなくなって、朝鮮侵略を企てて、失敗しバブルが崩壊した、と。

戦国時代が面白いように感じるのは、武将(経営者)の観点からのみ書かれており、農民(労働者)の立場から見た戦国時代は悲惨の一言。

ただし、ここからがリップサービスだろう。これからは江戸時代になる。江戸時代は町民の時代で、何も生まない戦争時代と違い、文化的発展が望める、と。会場は爆笑の渦だったが、「革新的なアイディアは最初は常に馬鹿にされるのだ」と反論。

PBR1倍割れの株価は異常であり、今が買いのチャンス、と締めくくったのは、ご愛嬌か?主張の是非はともかく、楽しませてくれた。

 

3番目は澤上氏。話の内容はいつもと同じ長期投資。それも将来のインフレヘッジとして株式投資が有望といういつもの論調。ただし過去の強気相場は、年金資金の運用手段として債券や株式に資金が流入していたことが低金利、高株価の好循環をもたらしていたが、今後は先進国の年金資金の流入も先細りがありうる、と核心を突いたコメントが(新興国のSWFからの投資資金の流入期待は聞かれなかった)。

彼は個別銘柄に注意を払って投資すれば、今後の循環的な投資環境でもかならず、アウトパフォームする企業はあるので、心配ないと主張し、インデックス型投資家は泣きを見るとポジショントークだろうか? かれは今回の不況も循環的であると示唆。相場については10年スパンでいたって楽観。

 

4番目は堀古氏。かれはしばしTV東京のワールドビジネスサテライトでもコメントしているし、ブログの分析観が鋭いので、今日の私のメイン。

が、彼自身が米国の経済(特に金融政策)に失望しているようなコメントが湧き出ていて、彼も2番底があると主張投資を知らないエコノミストなら聞き流せるが、投資で食ってる人の意見は重みが違う

要するに、財政赤字と不良債権問題がほとんど先送りされているので、今の公共政策が息切れする来年には2番底をつける可能性がある、2番底はひょっとして今年かもしれない、というのがメインの論調。

米国型金融が破壊されていると嘆いていました。相場観については、今年は何とか持つが、来年に向け絶望的なイメージが漂う。

確かに、クライスラーの破たん処理の際の有担保債権者への扱いは私もひどいと思いましたが、「自動車を作るのに銀行はいらない」というオバマ政権担当者のコメントが象徴的にショックのようでした。

(有担保債権者を債権の額面の85%カットを要求。最終的には65%程度まで政府は譲歩したが、担保価値というものをほとんど政府が評価しなかったため、貸し手側に将来の貸し渋りのタネを残すようなことをすると結局、一般企業にも災いが及ぶというロジック。TVでも確か言ってたなあ)

また、米国の住宅ローンでノンリコースとなっている(州によって違うらしい)ものについては、合理的なデフォルトリスクを懸念。つまり、持ち家が大幅な債務超過(住宅価格<借金残高)になると、家を手放して、借家に住んだほうが合理的と考える米国人が増えると指摘。

政権の担保価値の無視、消費者の「合理的デフォルト行動」など、金融業界におけるモラルハザードの横行は、最期は全て米政府の借金となって帰ってくる、米国民への将来のツケだと指摘し、米国経済は泥沼状態だと示唆。

最期に2010年には、ブッシュ政権時代の減税がサンセット条項を迎えるため、増税となることなど市場下方圧力に事欠かない、というのも2番底ロジックの根拠となっていました。米国国債のトリプルAを危ぶむ発言まで出る始末。

 

ただし、ここはウォール・ストリート人らしく、バブルを招いたのは米銀ではなく、投資家だと。投資家が高格付けでも高リターンな商品を渇望したから、あのような商品が編み出されたのだと。

また、このバブルに日本の果たした役割は大きいと指摘。2003、4年ごろの小泉政権の円売りドル買い政策の中で、ドル資金の大半で米国債を買ったため、米国経済が好転したにもかかわらず、米国長期金利が上昇しなかったのは日本が30兆円近い資金で米国債を買い支えたからだ、と。その低金利が住宅バブルを呼び込んだ一因だと、グリーンスパン元FRB議長のコランドラム(謎)の犯人は日本だと言いたげでした(日本だけでもないような気がしますが、中国とかも買ってますね。中国が日本を抜いて米国債債権者ナンバーワンですよね)。

旧東京銀行出身の彼の言い分は一理ある(貸し手を馬鹿にしたようなことをすると、結局借り手が最期は損をして、経済がうまく回らない。金融危機で金融機関を守ったはずが、そうなっていない矛盾を指摘)が、やや上から目線的に捉えられるリスクがまだ今の日本にはあるでしょう。

 

ただ、彼は日本が今回のバブルの被害者だという被害者妄想を正そうとした点には私も正しいと思います。また、私も銀行出身者なので、貸し手や投資家軽視の姿勢に疑問を抱く彼の気持ちも理解できます。

 

彼の講演は絶望が支配していました

 

5番目の和島氏の話は、「これから有望なセクター」といっていましたが、米国経済がこれほどひどいとわかってしまえば、聞く気になれず、帰ってしまったという次第です。

 

ここまで言われて、2番底懸念を気にせざるを得ません。榊原氏が省略した2番底の根拠を堀古氏が補足した感じです。

確かにPPIFも小型化し、不良債権問題はとりあえず、騒がれなくなってしまいましたが、今週からJPモルガン、ゴールドマンサックス等の決算が始まります。JPモルガンの貸倒引当レベルは注目でしょう。この銀行は比較的体力があるので、思い切った引き当てをするでしょうが、バンカメなど体力に不安のある銀行の引き当てはどうなるでしょうか? 

シティなんて2Qが終わったとたんにCFOが辞任するなど、くら~い 話題がでています。さらに、負債評価損(1Q決算時点では負債評価益が話題となっていましたが、相場が改善すると今度は評価損のはず。1Qのモルガンスタンレーがそうだった)の懸念があって、株価の下方圧力が一杯ですね。2Q決算の主役も不良債権問題となりそうです。

 

やっぱり資産バブルの結末は不良債権処理ということでしょうか。日本の二の舞論が現実味を帯びてきつつあります





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Last updated  2009/07/12 11:48:27 PM
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