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テーマ:株式投資日記(20510)
カテゴリ:投資一般
ダウ平均は1万ドルを割れてしまいました。 個人的にはバンクオブアメリカ(BAC)、シティ(C)の決算内容以上にGEの決算内容に失望してしまいました。GEの工業部門も売上が伸び悩んでいたようです。
さて、銀行収益の行方はわからなくなってきたように思います。 今回のサブプライムローン問題で、最も問題が多いといわれているのは、ローンの実行が2006年、2007年のものだといわれています。下記はフレディマック(FRE:米国連邦住宅金融抵当公庫:日本の住宅支援機構のようなもので上場している)のローン債権の組成年代別のデフォルト発生率のグラフです。
これを見ると、2006、7年ごろの住宅ローン組成内容のひどさが際立っています。また、現時点(09年6月)時点では、デフォルトは峠を越したとも言えません。まだ1~2年、デフォルト債権は増加を続けそうです。(デフォルト予備軍である)延滞債権残高のピークは失業率のピークと同じと言われていることから、2010年1Q~2Q、つまりあと1年程度かけないと落ち着きそうにないといえそうです。
さて、下に、BAC、C、FRE(注09年2Qまで)の決算のサマリーをまとめてみました。
まず、FREは主として、各金融機関や住宅ローン会社が貸付した住宅ローン債権を購入して、モーゲージ証券を組成します(MBS)。そのMBSを投資家に転売しますが、その証券の支払いを保証します。また、MBSをそのまま保有したり、住宅ローン関連証券(サブプライムローンもある)に投資して投資収益を稼ぎます。 したがって、ほぼ個人ローンだけの収支である点が、BACやCと大きく違いますが、米国の住宅ローン市場を見る上では、ファニーメイとともに、重要な指標になると思われます。
BACから見ますと、メリルリンチの買収は実は現時点においては正解だった可能性があります(それでもルイスCEOは退任に追いやられた)。買収効果が出始めた09年2Q以降、業務純益(粗金利収支と投資銀行部門の収益)が倍増しています。この投資銀行部門収支でせっせと与信コスト(将来の貸し倒れ損失に備えるための貸倒引当金と、当期の貸し倒れ損失)を捻出していた構図です。 09年3Qになって、金利収入と投資銀行収入の双方に伸び悩みが見られます。与信コストはピークアウトしたのかな?
Cは08年4Qにおそらくサブプライム関連の投資有価証券の減損を行ったのでしょう。それ以降の推移はBACと同じような推移をしていると思います。
最後にFRE。こちらは投資銀行部門といっても、アドバイザリーや引受けをするわけではありませんので、2009年1Qまでの赤字は、保有有価証券の減損やデリバティブの時価評価損(資金調達は全て市場金融で短期から長期までデューレーションが多様である一方、保有するMBSは30年金利固定が6割以上を占めるため、金利スワップを複雑に多用していた)が大半を占めます。 しかし、BACやCと一つ違うところがあります。金利収入が増加しています。これは長短金利スプレッドが歴史的に取れていることが原因と思われます(アメリカも短期はゼロ金利政策ですよね)。なぜBACやCではスプレッドが利益に貢献していないのかはわかりません。 また、与信コストも上記2行と規模では圧倒的に違うものの、かなり前倒しで貸倒引当金を積んでいます(BACやCの貸倒損失等にはクレジットカードがあるがFREは純粋に住宅ローン関連だけという違いもある)。 大量の市場取引部門の減損や時価評価損とかなり前倒しの貸し倒れ引き当てのおかげで、2008年に大赤字となって、世間を震撼させ、結局は政府管理下に今はおかれています(しかし上場は維持されている)。公的資金は約500億ドル(45兆円!)投入されています。
以下はBAC、C、およびFREの貸倒引当金(Provision)と貸し倒れ損失(Charge-off)の関係を掲載してみました。 BAC(貸し倒れ損失と貸倒引当金の増加)
青が貸倒損失で黄色が引当金。つまり、翌期の損失への備え。青と黄色を足すと与信コストになります。ちなみに、09年2Qの損失(青)が$8.7B(10億ドル)、引当金(黄色)が$4.7B、同3Qの青が9.6と2.1です。今後損失見通しが低いのなら黄色が小さくとも正当化されるでしょうが、果たして?決算推移を見ても引当金の設定次第で純利益の行方が決まってしまいますね。
次はCです。
大半が個人向けです。 CイメージもBACと同じです。
Cの住宅ローンの延滞債権額の推移です。09年3Qでもさらに増加しています。残念ながら90日以上の債権額が増加してしまいました。たった8億ドルの引当金では心細い限りです。
そして最後にFRE
緑が翌期以降の貸倒損失に備えた引当金残高です。灰色は当期に繰り入れた引当金の額です。青色が当期に発生した貸倒損失です。注目すべきは緑と青のギャップです。09年2Qでは、引当金残高(緑)が$25Bに対して、損失(青)がたったの$2Bしかありません。また、損失が2だったのに、5.2を新規積み立てしました。 想定されることは、FREは将来、延滞債権が差し押さえに移行し、競売となって回収漏れ(これが貸倒損失になる)が飛躍的に拡大すると見込んでいることになります。
では、FREの保証住宅ローン(又は保有MBS)はボロボロなのでしょうか?
実はそんなことは全くありません。全米の住宅ローンの平均なんかより遥かに良質なのです。上記グラフはMBA(抵当銀行協会)の平均的な90日以上延滞債権率は5.4%に達するのに対し、FREは2.78%で収まっています。 それもそのはずで、FREは一定の頭金や個人信用スコアリング以上の債権を買収したり保証したりすることが任務ですので、当然の結果です。
以上をまとめますと、
BACとCの将来収益(特に次の2~4四半期)は暗雲が立ち込めている可能性がある。 収入は大きく伸びそうにない。 金利収入は伸び悩み(ひょっとしたらスプレッドが改善する可能性もあるが3Qでは結果が出ていない)。また、迂闊に資産を増加できない(貸倒損失で自己資本が毀損する可能性を考える=貸し渋り)。 投資銀行部門は、難問だ。信用を落とすと(引受け部門など)顧客の声がかかりにくい(シティのコメント)、金融市場も落ち着きを見せてしまった。プレーヤーも減ったがパイも減っている(GSのコメント)、そして、世間体が仮にあれば、ボーナスを弾みにくい(人材確保が出来るか)など、課題が大きい。
コスト面では与信コストは下げ止まらない。したがって赤字転落になりやすい。 しかし、確か自己資本はある程度余裕があったし、TARP資金も余っている。したがって危機には陥らないと思う。
一方、FREは 金利収支がかつてないほど好調。時価評価関連は一過性。 貸倒が続発してもある程度引当金で吸収できる。 したがって、後どれだけ引当金を積む必要性があるかわからないが、これ以上のお化けは潜んでいそうにない。 (しかし、本質的に政府が資金調達の面倒を見てくれて、新規に発行するMBSm政府が買い上げている状況なので、政府次第である点が最大の弱点)
これを見て単純に、日本と同じだ、という人もいるかもしれませんが、米国では差し押さえ、競売、回収のプロセス・市場が確立されているので、即ち債権や住宅売買のセカンダリー市場は確立されていますので、一定の地価下落はあるかもしれませんが、大きく地価下落を促し、底なしに危機的状況になるとまでは行かないと思います。 何に対してでも商売できる人が揃っている国です。来年前半に銀行決算がきつくなって実態経済がどれだけインパクトを受けるのか、という点で見ていこうと思います。
政府引受けの優先株って配当は10%だったと思います。米国債は10年物が4%前後のはず。ひょっとして最後に笑うのは実はTaxpayerだったりして・・・。 ただし、ジム・クレーマーを始め、米国の市場関係者はこれまでは米銀にかなり強気でした。最後までお読みいただき、大変恐縮ですが、あちらには銀行株には強気な人たちが多数いることをお忘れなく。また投資は自己責任でお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/10/19 02:12:42 AM
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