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元・経営コンサルタントの投資日記

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2010/02/17
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フィリップモリス・インターナショナルの分析 2009/12/22

私の投資元本ベースナンバーワンポートフォリオ(時価ベースでは3位)である、フィリップモリスインターナショナル(PM)の2009年第4四半期の決算が発表されました。

この不況下にあって、非常に頼もしい内容で、販売数量が伸びずとも、なんとか決算を作ってくるところはさすがです。4Q決算を見ると、価格主導権を握ると企業は強いと思わされます。

 

決算は・・・

図1.gif

当社はNYSEに上場していますが、米国以外でマールボロやバージニアスリムを売ることをアルトリアグループと線引きしておりますので、為替の影響を受けやすいのです。 

通期で見た場合は減収減益でしたが、これは09年1Qのドル高が影響しています(当時は流動性危機でドルと円に資金が回帰していました)。

期中に東欧中心に大幅に値上げした影響があり、これが大きかったようです。

しかし、4Qに入り、出荷数量が0.5%ですが増加したことと、値上げ効果で、純利益で5.3%、EPSでは12.7%の増加と昨年を圧倒しました(さらに、昨対比で大きくドル安に転化している)。

2010年は仮にドルレートが一定の場合、EPSは17.3%の大幅増加を見込んでいます。

 

PMの安定業績を可能にするのは、何と言っても価格戦略にほかなりません。タバコ産業は世界的に寡占化されつつあり、価格コントロールは供給者側に移っています。各国政府が増税するに合わせ、価格を引き上げていきます。値上げすれば販売数量は減少しますが、それを価格増加で補ってお釣りがくるようにうまくコントロールしています。

 

グローバルでは、EUやカナダでは数量が落ち込んでいますが(イタリアでは数量増加に転じている)、インドネシア(中国、インド、米国に次いで世界人口第4位。通貨危機は過去のもの)や韓国でもタバコは数量ベースいまだ伸張している模様です。

 

PMの地域別販売動向を見ていると、政府財政とタバコ価格は一定の相関関係があり、財政が厳しくなると、たばこ増税を過度に引き上げ、たばこ市場は数量ベース縮小していきます。(世界的に)政府としては安定税収源としてタバコを重宝しているはずなのですが、各国とも、「取りやすいところから」税金を取っていくようです。

 

今最もホットなギリシャでも、57%もアップさせる大幅増税が予定されており、PMのCEOは「将来的なギリシャのタバコ市場に大きな影響を与える」と警告を発しています。

世界的にこういった増税を正当化させるため、健康問題を持ちあげている面もあります(多少健康に良くないといっても、それだけでタバコをやめる人も少ないのが実情。結局、増税に成功する)。

世界中で、タバコを叩くと、政治的に、票にもなるし、増税にもなる。産業界も数量が縮小するけど、儲かる、医学関係者も潤うし、弁護士さんも儲かる。という何とも珍しい業界環境にありますが、消費者がどこまでついていけるのやら。

同じ嗜好商品で、健康に良くないはずのアルコールはこんなバッシングはないですね。

 

PMの営業利益の7%近くを占める重要市場でもある、日本(シェア約25%)も今年の10月に増税がほぼ決まりと想定されています。CEOは日本市場では価格決定権が政府から企業に移りつつあると言っていましたが果たして?

 

健康を大義名分にしながら、貴重な税収源を自ら首を絞める行為が世界で蔓延しています。

 

 

今回、度肝を抜いたのが、自社株買い計画です。これまでも、2008年5月から2年かけて、総額160億ドルベースの自社株買いを実行中であり、2010年5月でその自社株買いは終了するのですが、2010年5月から向こう3年間で最大限総額120億ドルの自社株買いを新たにスタートさせると発表しました。

もちろん、増配を今後とも継続すると言っています。増配&自社株買いはFCFの中からバランス良く展開するとのことです。

通算5年で、総額280億ドルにも上る自社株買いを実行できるキャッシュフロー創出能力に脱帽です。新興国市場の回復と成長に自信があるのでしょう(もちろん口頭では世界的な景気回復の足取りはもろいと言っていますが)。

 

通算5年の自社株買い総額を円換算($=90)すると、2.5兆円にも上ります。ちなみに、日本のJT(日本たばこ産業)の時価総額が3.2兆円程度です。キリンHDが1.3兆円、アサヒビールは0.8兆円です。

(ちなみにPMの時価総額は8.5兆円です。2010年1月末現在で、東証では、1位トヨタが12兆円、2位三菱UFJフィナンシャルGが6.6兆円ですので、仮にPMが東証で上場していれば、時価総額で第2位になります。)

 

したがって、期間5年で2.5兆円程度の借り入れ・社債を発行し、キリンHDとアサヒビールを買収できるぐらいのCFを株主還元すると言っていることになります。借金は5年で返済できるというワケ。

 

今後数年間大型M&Aの実行予定がないと受け取れそうです。テレフォンカンファレンスでCEOは「自社株買いも買収も両方できる」と言っていましたが、1000億円以下程度の中小型M&Aに限定されるでしょう。トップシェアからくる余裕が感じられます。

 

英国で、喫煙率を20→10%に引き下げる動きが出ています。健康のためだとか。

そのため、タバコパッケージをもっと一般的な(Genericと英文で記載されていました。要するにタバコパッケージをもっと地味で統一的な模様にすべきだという解釈をしております)ものにすべき、という議論をアンチタバコ団体が主張しています。

一方、インペリアルタバコやPM等のメーカーは「知的財産権(商標権)の侵害であり、パッケージと健康侵害の連関が全く科学的でない」と一蹴していますが、アンチタバコキャンペーンは世界的にも情緒的な観点で支持される傾向にありますので、留意が必要になります。

 

英国で36%ほどシェアを握るJTさんのコメントはWSJには紹介されていませんでした。

 

この決算発表後。PM株価は急回復し、押し目買いのチャンスを逸してしまいました。これは残念。

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Last updated  2010/02/17 12:59:25 AM
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