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カテゴリ:ポートフォリオ分析
「投資のプロ」が語る アセットアロケーション とやらによると、大きく、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券にバランスよく資金配分をすることがよい、ということのようです(バランスよくと言っても傾斜配分されているようですが)。
最近では、ブラジル、トルコ、南アフリカ通貨建てで、よくわからない発行体(何とか金融公社とか)ですが、格付けはAAAらしきものに人気があるようです。
しかしながら、しっかりした企業への株式投資は、考えようによってはこのような債券以上になりうるということも言えます。
ざっくりですが、債券のメリットとしては、投資元本と利回りが確定していること(注;発行体さえしっかりしているという前提が必要)だと思います。 一方、デメリットとしては、償還期間までは資金が固定化されてしまうこと(期限前に売却した場合、ディスカウントのリスクがある)や、高金利通貨の為替リスクはよく言われていることですが、仮にインフレになった場合、実質的な価値が目減りしてしまうことなどのリスクがあります。(高金利通貨はそれだけインフレ率が高い点とさらに不況の際、金利下落余地が大きいため、含み損のリスクあり)
株式投資によって、比較的元本の確実性を確保したうえで、利回りの極大化と資金の流動性を保つことができると、債券投資以上のメリットを得られることにもなります。
S&P500の中でも特に、25年以上連続増配を行っている企業(約40数社)があります。 S&P 500 Dividend Aristocratsと呼ばれています(配当貴族とでも訳しましょうか)。 登録すれば無料で個別企業が見られます。
この中でも貴族中の貴族といってもよい、プロクターアンドギャンブル(P&G)を例にとって、見てみることにしましょう。
P&Gは日本人なら誰でも知っている家庭用品で世界1位の売上高を誇る米国企業です。紙おむつのパンパース、洗剤のTide、化粧品のマックスファクター、電動髭剃りのブラウン、髭剃りシェーバーのジレットそしてスナック菓子のプリングルスなどが有名で、最近ではドルチェ&ガッパーナなどの趣向の違うブランドも手を出しています。アメリカ以外の地域で利益の過半数を稼ぐ多国籍企業で中国でもシェアトップに立ちます(元高ドル安になると…)。
同社は54年に亘って増配を繰り返しており、一株当たり配当(DPS)の成長は米国企業でも屈指の企業です。 同社のアニュアルレポートの抜粋ですが、増配がスタートした時のDPSを1セントとした場合、2009年のDPSは$1.64で、54年で164倍となっています(2010年のDPSは$1.91)。この間年率平均9.5%のDPSの増加率となっています。
また、同社は決して無理をして増配を行っているわけではなく、2009年度の配当性向は46%と過去の平均的な水準にとどまっています。
アメリカにはこういった企業があるということを知っているだけでも、投資の幅が広がると思います(花王が意地でも増配を繰り返す理由がここにあると思います)。
現在のの株価は$61.75、実績PER14.7倍、配当利回り3.13%、PBR2.3倍、ROEは20%となっています(Firstrade証券による)。
P&Gの基礎データ これは、Fistrade証券では無料で見られるスタンダード&プアーズのStock Reportの一株当たり情報をグラフ化したものです。
Earningsとは一株あたり利益(EPS)、DividendsとはDPS(一株当たり配当)のことを指しています。EPSの成長には売上高成長のみならず、コストカットや自社株買いも貢献します。 Payout ratio とは配当性向です。 PERは、各年の実績ベースのPERの最高値と最安値を2で割った数値です。
利益は基本的に右肩上がり成長を継続し、配当性向は無理のない水準で推移し、PERだけが下がっていく状況です。従いまして、ここ10年間の株価動向は、
ITバブル以前とそれほど上昇していません。
しかし、過去のPER水準から考えると、下値は限定的かもしれません。
将来の投資採算を考える。 もし仮に、EPS、DPSの成長率が2000年~2009年と同じだった場合、こんな感じになるかもしれません。
2000年~2009年のEPSの年平均成長率(CAGR)は15.1%、同DPSは11%でした。向こう10年間ではDPS10%、DPS9.5%の成長率を想定してみました。
この場合、5年経過すれば、4.92%の配当利回りが得られる計算となります。5年間の平均配当利回りは3.97%となります。 仮にDPSが過去10年同様11%で成長したとすれば、5年後は5.27%、同平均4.12%となります。
また、株式ですので、当然ながらいつでも換金可能です。株価はPERことミスターマーケット氏のご機嫌しだいですから、参考資料程度かもしれません。 そのPERが現在と同水準とした場合、2010年まで保有したとして、年率リターン11.8%になる可能性があるということになります 注:配当金は20%税控除される前提。確定申告すれば、外国配当控除などが受けられる可能性があるが省略。また、配当は本来四半期毎に配分されますが、簡易的に年1回として試算。しょせんモデルですので、精緻にやりすぎるより、ベターな設計で十分と思います。
長期間保有すればするほど、渋みが出てくるDividend Aristocratsへの投資。高利回りの新興国向け外債と比較した場合、投資対象物の透明性(何に投資しているかのわかりやすさ)、投資柔軟性(換金自由)、為替(ドル円がなんだかんだ言っても相場変動率は比較的安定している)などの観点も入れると、悪くないかもしれません。
よくわからない発行体に、 「よくわからないけど高利回りで、かつ、高格付」 という投資は、そうです、まさしく サブプライム関連証券 への投資と本質は変わりません。アセットアロケーションに過度に気を使う必要性はないと思います。外債にはよくあるので気を付けたいものです。
DRIP(配当金再投資)については機を見てまた何か書いてみたいと思います。ちなみにアメリカの大企業の状況は大なり小なりP&Gと同じ傾向(利益成長、PER低下、株価伸び悩み)の状況にあります。株式相場強気論者の大きな根拠になっています。 注:P&Gへの投資を推奨するものではありません。投資判断は個別でお願いします。よく内容を見て投資しようということが言いたかっただけです。
応援よろしくお願いします。
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