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カテゴリ:ポートフォリオ分析
この1か月、ついにJNJ(ご存じ、バンドエイド、ベビーパウダー、ワンデイアキュビューなどのメーカー)に参戦しました。
私はアボットラボラトリーズ(ABT)をホールドしていますので、JNJの動向は気になっていました。主力品で激しくシェア争いをし、現時点ではABTに軍配が上がっていますが、JNJはそれ以外でも実にバランスよく多角化された企業ですので、ずっと「やっぱりいい企業だ」と横目で見ておりました。FIRSTRADE証券のDRIP(配当金再投資)を起用。
1:なぜ今JNJなのか 株価バリュエーションが良い水準にあります。取得平均株価$58.2(金曜日終値は57.6)、配当利回り3.7%、過去12ヵ月実績PER12.3倍、向こう12ヵ月予想PER11.3倍。 言うまでもないが、EPS(一株利益)、DPS(一株配当)の過去の成長実績が抜群。 後期パイプラインが充実している。特にABTと競合するANTI-TNF製品や、やや失敗に終わった薬剤ステント「サイファー」の後継品の「ネボ」の評価が高い。 当社は世界シェア1位、2位の事業の集合体で、11年以降は巡航速度並みの成長率が期待できる。 同時に候補とした、イーライリリー、メルク、第一三共、久光製薬、参天製薬、ツムラ等と比較した場合、最も安全パイでかつ、十分なリターンが見込めると考えた。 ヘルスケアセクター自体が過小評価されている。
2:なぜJNJ株が安いのか?(私見) ヘルスケアセクター全体の問題として、株価は医療制度改革法案議論の時点から下がったままで、同法案の影響に未だ不透明感が残っているから。 これもセクター全体の問題として、主力薬の特許切れによる業績リスクに嫌気がされている。 EUも日本同様の薬価・医療機器価格の下落圧力、米国は不況による単価抑制圧力が強い。 一般大衆薬の自主回収が相次ぎ、米FDAから調査を受けるなどマイナス材料が続出しているから。 ウォーレン・バフェエットが一部売却したから? ミスターマーケット氏のご機嫌がよくないから?(要するに不景気)
3:株価バリュエーションのヒストリカル推移
このグラフは黒線が各年の平均株価推移、赤い線は理論株価です。影はEPSの推移(右軸)を表しています。 当社は調査期間の27年間で、各2対1の株式分割を実に4回実施し、27年前の1株は 現在の16株に相当することになります。
EPSは各年の分割調整後のEPS(年平均13.8%の成長率) 平均株価=毎年、月足の株価12カ月分の平均値を当該年度の平均株価と看做す(同成長率14.5%)。 理論株価= A:各年度の平均株価÷EPSで当該年度の実績PERを出す。 B:過去27年間の平均PERを出す(15.5倍) C:各年度のEPS×15.5倍を各年度の理論株価とする。 JNJのHPでさかのぼれるEPSの最古値が1983年まででした。
平均株価と各年の実績PER(右軸)の関係。
ITバブル時代の1999年のPER25倍はやはり高すぎると言うことになります。1999年から2009年にかけて、バリュエーションの調整が起こっています。リーマンショックまではEPSは順調な伸びがありました(この時期にブロックバスターの特許切れもあったりした)。 平均株価が理論株価を割っているのは80年代全体、90年代前半、そして現在です。80年代はインフレ鎮静化傾向とはいえ、10年物米国債金利が10%前後常にあった時代。 90年代前半は、ヒラリー・クリントンによる医療保険制度改革の議論があった時期。 現在はとうとうオバマ大統領によって医療制度改革法案が可決してしまった時期。
非常にざっくりですが、 80年代のJNJの株式益回りが8.7%、米国債10年物が10%。 同95年~03年は5.1%、と5.5%。 04年~09年はJNJの株式益回りが7%、米国債は4%。 そして今は8.1%と3%です。
イールドカーブは現在5%に達しようとしています。
結論として今がボトムかどうかわかりませんが、長期的にホールドした場合、いつかむくわれるだろうということで、もうキメの問題で投資実行しました。
4:将来リターンの推測(DRIPですので、配当金再投資の複利効果あり)
自分で作った簡易モデルで計算すると、IRR13.3%となりました。この簡易モデルの変数は、EPS成長率、DPS成長率そしてPERです。 本来、配当は年4回ですが、便宜上年1回で計算しています。 過去27年の年平均EPS成長率(CAGR)は13.83%、DPS成長率も13.8%、PERは15.5倍です。直近10年で見ても、それぞれ11.0%、10.2%、PER18.6倍です。 一方、モデルでは、EPS、DPSの成長率をそれぞれ9.7%と過去27年の70%程度で見ました。 仮に100株買った場合、当初投入資金5,820ドル、2020年には20,310ドルになります。PERが今現在と同じであれば、ざっくりとEPS成長率+配当利回り分のIRRになりますね。 アメリカの期待インフレ率を3%とした場合、実質でも約10%の年率リターンです。 JNJの様な数少ないAAA(S&P長期債格付け)銘柄で年利10~13%のリターンが見込めるという試算になります。NHK「マネー資本主義」でやっていたサブプライム証券の利回りはAAAで6から7%でしたね(あっちは「確定」利回りでしたが)。
5:JNJの過去の実績
前回のP&Gよりも長い時間軸で見ていますが、これぞまさしく「右肩上がりの成長」と呼ぶにふさわしい。
現在の株式相場 要するにこういうことですね。
企業自身はしっかり成長していますが(EPSの成長)、株式相場からの評価(PER)は低くなっています。PERが低いのは、JNJやセクターの問題もありますが、アメリカ自身の景気の問題の方が大きそうです。 参考までに、ウォルマートとマイクロソフトのグラフを掲載しておきます。IT、小売り、医療のすべてで同じ傾向になっている点は相場自体=景気自体の問題だと思うのです。そしてこれがまさしくダウ平均の現状に直結します(3社;P&Gともダウ構成銘柄) 最近は新聞でも、景気が悪いのに企業だけが儲かっているような記事を目にしますが、正直まさにそういうことだと思います。マイクロソフトやJNJが儲かっているのは「金融至上主義」のせいではないと思います。 特に、新興諸国のIT化の進歩がすさまじく、IT業界はまったく違った需要で潤っているそうです。ウォルマートもインドや中国に店舗を積極展開しています。
JNJも売上高のうち、先進諸国以外の売上高が約25%に達しているようです(米国約50%、日本・EU約25%)。
6:現在過去未来 過去に起こったことと同じことが将来も起こるのか? と言う点が最大のポイントでしょう。 私にもわかりません。幸い、JNJのプロダクツ(注:JNJの売上高・利益の大半は医療機器と医家向け医薬品)を必要とする人口は爆発的に増加していくことだけは確実です。
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