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元・経営コンサルタントの投資日記

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2010/12/20
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カテゴリ:投資一般

 

読むきっかけ:

1:本屋で偶然目にしたから。

2:投資ポートフォリオが中国とアジア経済の成長に依存したテーマの企業が多く、リスクを少しヘッジする先として中南米に注目すべきと思ったから。

3:筆者が信頼できそうな人だと感じたから。

 

筆者は鈴木孝憲氏という旧東京銀行出身の「ブラジル通」の方。東京外大のポルトガル語科を卒業し、ブラジルの大学に留学し、現地での銀行員生活も長い。現在もブラジルに滞在されているようだ。

内容もブラジルの政治・経済・社会に関するよい点、悪い点を客観的にデータに基づき述べられ、私見もしっかり書いてある。安心できるベテランの方と思われる。

 

株式投資の前提ではなく、どちらかと言えば、日本企業の対ブラジル直接投資を考える経営者層向けの、最新概要書といった感じである。

 

章立て

第一章    世界金融危機からいち早く脱出

第二章    ブラジル経済を支える原動力

第三章    拡大する国内市場

第四章    花開く巨大なポテンシャリティ

第五章    ブラジルに重点シフトする欧米外資企業

第六章    更なる飛躍への課題

第七章    ポスト・ルーラのブラジルの政治

第八章    2020年のブラジル経済

 

約230ページの本であるが、200ページに渡り、これまでのブラジルについて書いてあり、将来については20ページ程度で、課題を交えながらも、年率5%の経済成長は可能であると結論付けられている。

 

私の感想ですが、ブラジルのよい面が全面的に出れば、この国は第二のアメリカ合衆国になりうるような気がしました。その人種融合度合いは間違いなく世界1位であり、多様性がもたらすメリットを受けると、爆発力を感じる。

一方、政治的な汚職・腐敗はラテン系にもつき物で(日本の某政治家の4億円程度では済まされない)、いったん経済が逆流しだすと、さまざまなひずみが生じ、政治的にも動揺するかもしれない。

さらに、中国経済がクラッシュすると、やっぱり影響を間逃れることが出来ない。

 

個人的なかかわり

私はスポーツをしたり、観戦するのがすきなのですが、経験のあるバレーボールを通じてブラジルを見た場合、ブラジルというと、剛柔自在で(日本人以上にテクニックがあって、西洋人以上に力強さがある)、明るくて、爆発力のある印象が強く、日本人では(逆立ちしても)太刀打ちできないという感じがしています。

また、社会人になって、数々の企業を調査しましたが、ブラジル人出稼ぎ労働者が企業の、工場の労働生産性改善の中核問題になっている企業をたくさん見てきました。

ブラジル人労働者が実際の工程での作業を行い、日本人はそれを監督しているだけですので、彼らの作業効率が工場の生産性を決めるのです。愛知県や静岡県などにはたくさんのブラジル人の方を見ました。

経営者や工場幹部の方にお伺いすると、評判はとても高く、いかによいブラジル人労働者に長期で働いてもらうかが、経営のポイントの一つだという回答が多かったです。

 

とまあ、こんな感じですが、印象に残った箇所をご紹介。

筆者はブラジルへの投資について、

A:中国偏重気味の日本企業に対し、地理的ヘッジとしてブラジルはよい位置にある。

B:なおかつ、ブラジルにはたくさんの日系の移民が活躍していて、ブラジル国内では「日本人は信頼できる」との評価が固まっている。

日本人を心底信頼する国はブラジルを置いてほかはない(歴史問題や領土問題を抱える中国・韓国と、ブラジル発展に寄与した実績十分な日系ブラジル人を評価するブラジルと冷静になって考えよう)。成長著しい新興国から、これだけ信頼が厚いのは日本にとってブラジルが一番のはず。

2020年まで、実質GDPの5%成長はおそらく可能であろうとの前提に立って、日本人経営者に以下のようなアドバイスを送っている。

 

:必要最小限の規模での進出は苦労するばかりで、スケールメリットも享受できず市場でも相手にしてもらえない。(中略)徹底した事前調査を行い、ある程度規模の大きな投資が必要だ。

2:現地への権限付与が不十分で、何でも本社の指示を仰ぐこととなる。ブラジルの事情が十分にわかっていない本社が判断すると、しばし、ミスジャッジかリスクをまったくとらない策しか選ばないことになりがちで、これでは優秀な現地幹部は集められない(待遇も欧米に劣る)。

3:日本から来ている現地経験の少ないトップが、3から4年の短期間で交代していては現地社会に解けこめず、人脈も出来ない。

4:現地人登用による戦力アップの早道として、日本に滞在している出稼ぎ日系ブラジル人を選考して、本社で採用・教育し、ブラジル現地法人の諸由来の幹部として送り込むべし。

 

一言で言えば、「ブラジルで稼ぎたければ本気になれ」という点だと思います。 

 

特に赤字でハイライトした箇所は、太平洋戦争で、日本軍が侵したミスと同じようなことであり(戦力の逐次投入で無駄な戦死者を続出、大日本本営の保身的で誤った判断がまかり通る)、歴史が繰り返してはいないか、心配になった。

 

ただし、日本企業でも、記憶ベースですが、三井物産はかなりブラジルに力を入れていると思います。ヴァーレ(鉄鉱石世界1位)に5%近く出資していたはず。このおかげ?で新日鉄もウジミナスという現地の製鉄会社を子会社化し、現地で高炉建設を行っているはずです。

住友金属工業でも、現地と合弁会社を通じて得意のシームレスパイプを製造し始めていて、ペトロブラスの巨大深海石油プロジェクトを通じてかなりの利益を上げそうです。

 

もっとも、高炉産業全体の外資のブラジル進出では、アルセロールミタルの勢いのほうがすごいらしいですが。

(個人的な意見では)相対的に規模が小さい日本企業はアジア・ブラジルの両面作戦についていけてなさそうに感じます。一方、韓国企業の必死さがここでも顕著なようです。

 

ブラジル経済は

自動車販売世界第4位、化粧品販売世界第3位、コンピュータ販売台数世界第3位、GDPも世界第7位と急激な成長を遂げ、人口も1.9億人でなお増加中となっている。実際にすむと、物価は日本よりも高いそうだ(リオデジャネイロのビッグマックはニューヨーク、ロンドン、東京よりも高いらしい)。

経済がより安定し、インフレ率が低下してくると、株価がまだ上昇する余地があるかもしれない。

 

来年は個別企業をもっと見てみよう。

 

最後に、この本を読み終えて、本音の感想を言いますと、2020年ごろになると、自分の息子が「お父さん、僕、ブラジルに出稼ぎに行ってくるよ」という時代が来るかもしれないなあ、なんて思ってしまいました。

 

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Last updated  2010/12/20 12:20:07 AM
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