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カテゴリ:ポートフォリオ分析
持ち株の3月決算が概ね出そろった(シスコシステムズとHSBC以外)。
対象企業 フィリップモリス・インターナショナル(海外たばこ)、ダウ・ケミカル(総合化学)、フォードモーター(自動車)、IBM(テクノロジー)、アルトリア(米国タバコ)、アボットラボラトリーズとジョンソンエンドジョンソン(ともに医療機器・医薬品)、プロクター&ギャンブル(家庭用品)、シェブロン(総合石油)、シティグループ(金融)、アフラック(金融)、AT&T(通信キャリア) マクロ経済を俯瞰するには十分だと思う。
「戦前」の注目ポイント 1:原油他コモディティ高に対する決算への影響 2:日本の震災に対する業績へのインパクト 3:新興国、先進国のマクロ経済の見方 4:ドル安 5:その他
「戦後」の感想 1のコモディティ高 恩恵を受けた企業。 シェブロンは当たり前。株価が暴騰していました。原油高=マージンアップです。 ダウ・ケミカル。これも調達コストをほぼ販売価格に転嫁しているので、業績が絶好調だった。ちなみにアグロサイエンス部門(トウモロコシや綿花の種など)も数量増加が著しく、来年は豊作が期待できるかも?
業績の足を引っ張った企業。 フォード、P&G。 フォードは鋼板を始めとした原材料コストの上昇を値引き抑制で乗り切っていた。ただし将来的にはまだ不安の種は残る。さすがに今回は低燃費小型車の開発が奏功して、販売を伸ばしていました。マツダへの出資は決して無駄ではなかった模様です。原材料よりも、労組との賃上げを始めとした固定費の再上昇が気になります。
P&G(6月決算)はこれも昨年夏の当初見込みの原材料増加分の3倍もの値となりそうだということで粗利益を直撃。しかし、ここ数年の新興国への販路を一気に拡大したからということで、実行税率が数パーセント下がるらしい。また、米国内でははっきりと値上げすると断言していました(但し効果は今年の夏以降になる)。 業績の足を引っ張った両社ですが、総じて付加価値を引き上げることで、事実上の単価アップを図って乗り切ることを計画しているようです。税務戦略もポイントになっています。新興国で事業を拡大する別の観点があるようです。
2に対して 総じて、「大したことがない」という意見が大きかった。 まず、IBM(日本での売上高は全社の11%)。会社側は、日本での収入の2/3はサービスであり、製造拠点がなく、調達先は必ず複数社を確保しているので、穴が開くことはない。世界中にインフラを張り巡らせているので、こういった点はすぐにふさぐことができ、被害は最小限ですむ、とそのバックアップ体制を強調していました。さすが。
フォードはアジアで売る車の部品を日本の部品メーカーから調達しているが、そもそもアジア向けの販売台数が大したことがないので大きな影響はないと言っていました。サプライチェーン上の問題は軽微なようです。アジア向け戦略は遅れていたのが不幸中の幸い。
P&Gは4-6月決算で影響が出るが、その度合いは年間のEPSで0.02ドル程度だ、と数値化していました。ザックリ0.5%の減益(多分40-50億円ぐらいか)。これが一番明快な回答だった。
フィリップモリスはJTの生産停止等を受け、シェアアップが出来ると思われますが、「評価できる段階ではない」と濁していました(日本の営業利益額は全社合計の8%ぐらいあるようです。日本を重要視しているので攻勢にでるかもしれません。マルボロの販促品がよくなるかも??)。
アボットやジョンソンは発表時期も早かったので、「コメントできるほど情報がない」と中立的でした。アボットは日本の薬剤ステント市場で50%を超えるシェアを持っていますが製品の大半は米国からの輸入でしょうから、生産への影響はないでしょう。売上高に占める割合は両社とも5-10%程度だと思われます。
さて、全社売上高に占める日本売上高の割合が全米トップクラスと言ってもいいアフラック(75%)は、震災における予想支払保険料、約30億円を引当金として設定していました。 肝心の新規契約は銀行窓口販売が好調で、影響は軽微だと説明していました。原発事故における放射能被害による長期的な癌の発生は業績に(当然ながら)織り込んでいません。 日本法人社長は3月にやや営業のペースは落ち込んだが、4月以降ノーマルになりつつあるとコメントしていました。 アメリカのアフラックダックの声優さんが、ツイッターで日本の震災で悪いジョークを流した事が発覚して、CEOは12年間声優をやった男性を即刻クビにしました。新しい声優を採用するといって、全米で大キャンペーンを行ったことが話題となっていました。 そのアメリカで保険の契約数が底打ちし始めているので、非常に心強い。
尚、ほとんどの企業がかなりの額の義援金を贈った報告していました(例えばダウ・ケミカルで6百万ドル)。
3:先進国と新興国の景況感 まず先進国 ダウ・ケミカルの見方が参考になるかも知れません。同社は電子部品、建築資材その他幅広い産業に化学品の基礎的な商品を提供しています。 欧米での売上高は数量・単価とも大きく改善しています。特に欧州では単価・数量とも2ケタ増収になっています。先進国でも景気は着実に改善しているように見えます。
アボットとジョンソンの医薬品部門の売上高も底打ち感が漂います。アメリカの場合、処方薬は処方されてもお金がなければ買わないと言う人もいるようで、景気が落ち込むと製薬会社の売上も落ちます。「ヒュミラ」(リウマチ治療)の米国内売上高が予想以上だった。J&Jも新しく承認された新薬の売上が堅調だった。
またJ&JはEUの医療機器でも値下げプレッシャー(緊縮財政による保険の絞り込み)が「多少」軟化したとコメントしていました。その後、一気にM&Aを発表していますね。
AT&TもiPHONE独占契約が切れたのちも堅実な収入が見られ、T-Mobile USAを買収すると強気な姿勢。
新興国 新興国では、自動車等の商品は動きが鈍化しています。中国やブラジルにおける政府税支援が終わったことにより、需要一服感が見られるようです。
一方、IBMは超強気です。おひざ元インドでも、インフォシスやタタコンサルタントなどの地元企業を一気に追い上げています。 さらに、ナイジェリアやコートジボワール等アフリカの新興国でも政府機関の給与計算サービスのアウトソーシングなどADPのような仕事もやっています。20%増となっています。 アボットやJ&Jの新興国のドラッグ需要(OTCやジェネリック)も超強気で、売上高の前年比2ケタ増は当たり前って感じ。
P&Gに至っては、多少粗利を犠牲にしても、世界中の人に商品を売るという執念の様なものを感じます。インドの女性にパンパースを売るのに苦労していますが、なぜ紙おむつがいいのかを理を説いてこまめにマーケティングしているようです(インドでは紙おむつを使うと、主婦は家事を怠けていると見られる古い価値観があるらしい)。
新興国については、稼げるところならどこでも行くって感じで、最近はやりのWhitespace(空白地帯)を埋めにかかっています。
4:ドル安 確かに効いています。各社とも今後ともドル安が継続するような業績ガイダンスを示しています。さらに、4-6月期は、前年同期にギリシャショックがあり、米ドル高に振れた時期ですので、仮にこのまま推移した場合は、対前年同期比ベースでのドル安はかなり大きなインパクトを残す可能性があります。
もっともEUの方でも、そうは問屋がおろさない、と思っているのか、ギリシャがEU離脱とか、ECBの利上げは夏までお預けとか、ドル安をけん制しているように思います。 「通貨戦争フェーズ2」って感じでしょうかね。日銀さん、対応してね。ほうっておくと70円台が確実になりませんでしょうか。
この通貨戦争と商品価格の連動は不安定要素ですね。
5:その他 P&Gやキンバリー&クラーク(クリネックスというティッシュの会社)は米国内ではっきり値上げすると言っています(この夏ごろから本格開始)。ついに最終製品に価格転嫁されそうです。 値上して米国消費者の財布が持つか否かが試されそうです。これが成功したか否かは夏以降から年末商戦の成果を見るのでしょうか? 年末商戦での売上増加やCPIの上昇を見て、FRBのバランスシート調整をどう考えるのか、はたまた利上げを視野に入れるのかということでしょうか???
したがって、米金利上げへの道のりはまだ長いような気がしますねえ(つまり円高が続く)。
様々な事象はデータを掲載すれば説得力も増すのでしょうが、時間がなくごめんなさい。とりとめもない感想文になってしまいました。
こうやって一つ一つ企業を分析すると落ち着くのですが、期中の出来事やマクロ指標のインパクトに対して判断が迷ってしまうので、困ったものです。 応援よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/05/10 01:54:37 AM
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