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カテゴリ:政治
東京電力の責任問題について、世間では迷走しています。私もたびたびツイッターで呟いています(断っておきますが、かつて弁護士と法的整理のお仕事をやったことのある門前の小僧レベルの法律知識しかありませんのであしからず)。
議論の出発点
原子力損害賠償法3条の解釈 第三条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。 アンダーライン以下の但し書きの解釈が天災か人災かで意見が分かれていましたが、枝野官房長官は人災だと言ってしまったため、東電が一義的・直接的に責任をとるスキームが大前提とされていると思います。
一方、東京電力は足元の電力供給を(福島原発がないので)従来並みのコストでは出来ないので、A:採算悪化懸念があること、B:将来の原発損害賠償請求権の支払いが高すぎて、支払能力不足に陥りそうなこと、したがって自力経営が出来ないだろうという見通しがありますが、これは概ねみな一致した見方のようだ(というか、一番重要な損害賠償額がいくらになるのか、まだ誰も知らないのですけど...)。
とりあえず、この自力再生困難説を前提に話を進めたいと思います(この前提はすごく大事なのですが、あまり議論になっているように思えない。Aを値上げで乗り越えれば、Bは政府がいったん肩代わりをし、長期で分割払い出来るような気もします。そうすれば自力再建できるかも。我々東電の利用者にも何らかの負担責任はあると個人的には思います。経営者責任や株主責任は法的整理じゃなくても出来るはず)。 日本ではデフレ癖がついてしまったので、簡単に値上げとはいかないようです。
この前提(自力再建不能)があるので世間では、ちょっと乱暴な表現をすると
「これだけ世間を騒がしたのだから、一旦会社をつぶしてしまって、その後再出発させるべきだ。そのためにはJALのような法的整理が望ましい」。損害賠償請求は「迷惑をかけた東電が払え」。「私的整理=密室政治=官僚既得権益温存」。というものでしょう。
これが一般的なイメージでしょう。
そして、 先日、東京証券取引所の社長さんが、法的整理が望ましいという発言をし、今日再び官房長官が、法的整理は難しい。という発言をしています。
私は本件では(個人的には嫌いな)枝野官房長官のご意見が、原発事故人災説の前提では正しいような気がします。
東京電力を法的整理(例:会社更生をイメージしていると思います)にすると、枝野氏が言うように、原発損害賠償請求権は支払われなくなる可能性が(法律解釈上は)高くなります。
さらに、一番困っている被爆者や被害者の方に、非常に重たい決定をさせる羽目になりかねません。
仮に東京電力が会社更生法の適用を申し出たとしますと・・・。
そもそも会社更生は、再生できる見込みがある会社が一旦背負っている負債を棚上げにして、債権者と話し合い、再生の目処が立つレベルまで、負債をカットしてもらうことを債権者と同意することで、手続きが終了するというプロセスをとります。
債権者には担保をあらかじめ取っている担保付債権者と担保なく東電の支払いを目当てにする無担保債権者がいます。 東電の場合、担保付債権者とはほとんど社債の債権者となっています。多くの銀行や取引先企業は無担保債権者です。 そして論点の原発損害賠償請求権者も担保なんてありません。無担保債権者です。
一応、法律は法の下での債権者平等をうたっておりますので(担保の有無は担保権者が無担保権者に優先されることは疑問の余地がない)、にっくき?銀行も原発の被害にあった方も同じ10万円なら10万円の同じレベルの無担保の債権弁済を請求する権利ということになります、残念ながら。
東京電力は、棚上げしてしまった債権額を今後こういった形で返済します、という更生計画を策定します。このとき、担保付債権者と無担保債権者からそれぞれ一定数の同意を得る必要性があります。 普通、更生法を申し立てている会社は、「確実に再生」するためには、背負う借金は少ないほうがいいに決まっています。したがって、かなりの債権カットを要求します。ただし、担保付債権者はそもそも担保評価額までは優先的に弁済を受ける権利がありますので、そんなにカットできません(担保評価額でもめることはある)。 勢い、無担保債権者にカット要請が来ます。
会社更生法では、更生計画案を通すためには無担保債権者の場合、過半数の同意が必要とされています。もし同意が取れなかった場合は、清算の憂き目にあい、本当に電力がとまってしまう事態が法的に成立してしまうことになります。
更生法申請会社の手口としては、「これだけ借金棒引きにしてください。もし、この案に賛成していただけない場合は、当社は清算されます」という感じになります。
ここで、無担保債権者の主役はなんと言っても銀行や被害者になる可能性が高くなります。 銀行はどちらかといえば、返済見込みがないと理解すればさっさとあきらめて、出直しを図ります。
被害者はそうは行かないでしょう。計画案に賛成すれば自分の損害額の大半を自ら放棄することに法的に賛成してしまうことになります。一方、反対してしまえば、会社は清算されて、もっと損害賠償額の返済は減ってしまうはずです。
このような「究極の選択」を被害者の方にさせるのでしょうか???
我々国民も、被害者の方が、万一反対でもして、結果的に更生計画案が否決されてしまうと、東京電力が空中分解される危険が出てきます。かといって、「泣き寝入り」に同意させる権利などありません。
流れが誰にも読めなくなります。
では、会社更生法でカットされた債権を国が肩代わりするのか?というのも矛盾が生じます。枝野氏は東電が払えない被害額は国が用立てしてもいいような話をしましたが、カットに同意したものは、東電の債務から免除されてしまいます。 被害者はカットにある程度納得したはずの債権を法治国家の国会でお金を出すという変な前例を作ってしまうことは、嫌じゃないでしょうか? 「払わなくていいと本人たちが同意し、かつ、法が東電から免除を認めたものに税金を使うのか?」とか。
国会で通りやすい「落としどころ」を考えると、法的整理のプロセスでは最終的に大混乱が生まれそうな気がします。 東京電力は被害者の損害賠償金の多くを免除されて、更生会社として再出発する、というのも納得感を得にくいでしょう。
結局、「東電はやるだけやった。これ以上は国でお願いします」というプロセスを「東電が自主的に」要請してくれるのが政治的にやりやすいと思ったのでしょう。みんなの納得感を引き出すことが肝要かな。
個人的には、私的整理で、銀行債権をいくらかカットしてもらい、東電ができるだけ支払って、どうしてもダメな部分は国が支払うという案でいいと思います。そのための枠組みを国が用意してあげる、というのはありだと思います。
そもそも会社更生の場合、申請して1年から2年で更生計画案を策定しなければならないはずですが、肝心の原発損害賠償金額が確定するのはいつかわかりません・
法的整理の方が感情は 「当初」 はスッキリするかもしれませんが、被害者の賠償請求が法律でカットされ、法律上カットが認められた債権(債権者もある程度同意した債権)を国が肩代わりする前提を作るとなると騒ぎが余計大きくなると言う計算をしているのでしょうかねえ。法律作った国会が法律外で税金を使う?
間違っていたらごめんなさいね(ってここまで読ませていうなよって)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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