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元・経営コンサルタントの投資日記

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2011/08/24
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カテゴリ:投資一般
 

アメリカのヒューレットパッカード社(HPQ)は、先週パソコン事業の分離を検討し、ソフト会社を買収すると発表。相場急落側面であったことや、ソフト会社の買収価格が高すぎたこと(プレミアムがなんと80%!)や、世界1位のパソコンビジネスの分社・分離検討(タブレットPCを作るといった直後の決断)など大胆すぎるプランであった等により、株価は1日で20%も急落しました。

 

このことについて、ブルームバーグがかつてのHPQのCEOだった、カーリー・フィオリーナにインタビューをしています。

 

Fiorina on HP's Strategy, PC Business Spinoff

 

HPQ.PNG

 

(ビデオを埋め込めなかったので、上記リンクでご覧ください)

カーリーは、非常にきれいで、明確な英語でしゃべっていますので、聞き取り易いです。

 

2002年、彼女は委任状争奪戦の末、コンパックコンピュータをヒューレットパッカード(HPQ)に吸収合併しました。旧コンパック株主に新株を割り当てるため、旧創業家株主側から希薄化を嫌がられ、大きな反対に合ったことが委任状争奪戦に発展した原因でした。

その後ITバブル崩壊などもあり、思った結果が出せずに、2005年HPQのCEOをクビになってしまいました。

 

彼女がCEO生命を賭けて主導したとも言えるパソコン事業を今や分離する方向性にある、ということについてどう考えますか? というのがインタビューの主旨。

 

それについて彼女は、

CEOたるもの、会社の将来の成長について考えるべきで、過去の結果にすがっていてはいけない。PCビジネスの本質がiPadの出現ですっかり変わってしまった。企業経営者は会社を将来にわたって持続的に利益成長させて株主価値を最大化しなければならず、テクノロジー企業は、その方向に投資を続けなければならない。

HPQはゴタゴタ続きで株価が急落しており(前任CEOのマーク・ハード氏もクビになってしまった。そのハード氏は、オラクルのCOOとして厚遇されており、HPQの面子が台無しとなっている)そういった環境の中での経営陣の決断だったのだろう。その決断は尊重しなければならない、といった趣旨を語っています。

(もっともPC事業は世界1位のシェアになって、儲かっていたし、サーバーやストレージ事業などグローバルに展開して成長できたと成果も強調)。

 

またHPQがソフト事業に乗り出す(今回の決算発表時には、英国のソフト会社を買収することも発表されている。何となくIBM路線を目指す印象)ことについて、HPQは過去数年ソフト会社を買収しており、今回もその一環であるが、規模や金額が大きいので大きな挑戦だとも語っています(もっとも、現在のCEOは独SAPの出身の人のはず)。

(ただし前回のナントカというソフト会社もべらぼうな価格で買っていた)

この辺は、優等生発言?の域が出ませんが、新しい英国の企業をHPQに統合することや、大胆なリストラの遂行能力が問われる、とチラリと本音も覗かせています。

 

彼女によれば、HPQは「各従業員が自分の仕事に非常に造詣深く、プライドを持って仕事をしている。意思決定のプロセスは非常に複雑で、CEOが会社を引っ張っているというよりは、CEOは会社を代表しているだけで、マネジメントがタフ」なので、そういった人たちをまとめて行くのは並大抵ではないと言っております。

要するにHPQのような大企業(またはHPQに特有な名門意識?)では、組織防衛能力が高く、彼女も苦労したようです。最後は彼女自身が 「抵抗勢力」 の影響なのか?クビになりましたね。

最近のフィオリーナは、乳がんの手術後、カリフォルニアの上院議員選挙に立候補しましたが、選挙途中に病気で入院してしまい、現職候補者に敗れてしまいました。

2010年という年も彼女に逆風だったのかもしれません。失業で困惑するアメリカにおいて、CEO時代に3万人のアメリカ人をリストラして、何億円もの報酬をもらっていたやつだ、とネガティブキャンペーンをされていました。

 

個人的には力強い彼女のリーダーシップは好きなんですが、あちらでは好き嫌いの激しい部類のタイプのようです。体力的にも第一線復帰は厳しそう。

世界でもっとも影響力のある女性の第1位に選出されたと思えば、最もできの悪いCEOの第19位に選出されたりされていました。

 

日本人が見るべき注目点は、世界1位の事業を分離してでも、将来の利益成長(または経営効率強化)にまい進するアメリカ企業のど根性と言うべきか、ダイナミックさと言うべきか、大胆な方向転換でしょう(私は仮に日本企業がダウ平均に入れるのなら、HPQに代わってキヤノンが入れる可能性があると思っていましたが、この戦略が当たれば、それも難しくなるかもしれない。カーリーも言及していますが、経営陣の実行能力にかかっている)。

どこかの超有名な日本の電機メーカーは、数年来赤字続きのテレビ事業に固執していますね。これとは大違い。黒字のうちに世界1位の事業を切り離すのですから。

 

肝心のHPQの株を買う予定は今のところありません。多分バナナのたたき売りの様なバリュエーションだと思いますが、自分の投資戦略に集中したいと思います。今のところITソフトウエアセクターはIBMで長期ホールドする予定です。

 

参考

「私はこうして受付からCEOになった」カーリー・フィオリーナ著 ダイヤモンド社
私はこうして受付からCEOになった

私はこうして受付からCEOになった
著者:カーリー・フィオリーナ
価格:1,680円(税込、送料込)
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これを読むと、男女雇用機会均等時代の初期に出世した彼女の並々ならぬ苦労が赤裸々に描かれています。村井章子さんの和訳も絶妙。キャリアで悩む女性には、おススメの一冊。日本で彼女のような仕事振りはなかなか容易ではありませんがガッツは伝わってきます。

 

余談ですが、パソコン事業を分離売却した場合、ティッカーシンボルはHPに戻るのでしょうか?(元来HPだったもをコンパックを合併したことでHPQとなっていた)

 

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Last updated  2011/08/25 02:32:33 AM
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