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カテゴリ:なぜに私は京都に来たの?
こんばんは。ごんどうごんぞうです。
京都は今夜、宵々山ですね。明日が宵山。 そんなわけで久しぶりに気分は京都・南村荘に戻って・・・ 「宵々山いくんやったら、昼のうちに散髪してやろか?」 神奈川育ちのジュンがいつものように廊下の窓越しに 頬杖をつきながらまだ慣れきらない京都弁で言った。 ちょっと不安で黙っているボクに 「せっかくみんなで浴衣着ていくんやし。ね?」 京都人なら、この場合は「ね?」ではなく「な?」だと思う。 ボクも彼と同じ「半京都弁」のような言葉を使っているのだが。 ひょっとするとジュンよりもベースが東北弁な分だけ 変なイントネーションかもしれない。 「浴衣に長髪はヘンだよ」 これが決め手になった。ジュンに散髪をお願いする事になった。 勿論ジュンは素人である。 しいていえばボクらはデザイナーをそれぞれ目指しているので 多少は関係あるのかもしれない。 とはいえジュンはインテリア専攻である。 散髪はなんとなく陶芸とか立体造形の方がうまいような気がする。 それをいったら「ごんちゃんよりはまし。あの熊よりはね」 「あの熊」とは実習でボクが作った鮭をくわえた熊の置物。 北海道でよく売ってる木彫りの物をマネてつくったものだが 正面からみるとイイ感じなのだが上から見るとやたら幅が広く、 象のように見えてしまう代物だ。 やはりボクは平面のデザイナーの卵なのである。 散髪の道具はスキカルの手動版のようなもの。 短く刈る刃と長く残す刃が二面についていて、櫛の根本に刃がついているものだった。 ゆっくり丁寧に作業は進んだ。 ボクも鏡を持ってそれを見ながらだったので、 そこまでは大満足だったのだが。 「ジュン。お前、美容師にもなれるんちゃうか?」 「そうか?あっ!!!」 「え?どした?どうしたんや?」 ちょうど後頭部のあたりをカットしているところだった。鏡では見えない。 「わりい。刃先反対にあててしもた」 ジュンは手を止めた。 「えええええ!」 ボクは驚いておそるおそる指先で後頭部をさぐった。 ジョリジョリというまるで坊主頭をさわるような感触だ。 面積は約4cm四方ってとこだろうか? 「すまん。本当にすまん。」 ジュンは両手をついてあやまったが、笑いをこらえているに違いない。 「ええよ。もう」 「そうか。とりあえず後で方法考えよう。まずは仕上げないと・・・」 結果、残りの部分は上手く仕上げてくれた。 でも後頭部にはハゲがある。 野球でいうとノーヒットに押さえたのに、 エラーでの失点で1-0で負けたような悔しさがある。 そこを除けばすべてうまくいったのに・・・ 本当に悔やまれる取り返しのつかないエラーだ。 「仕上げながら、ええ事考えたよ」 ヘンなイントネーションの京都弁でジュンが言った。 「どうせ暗いんやし、ごんちゃんは背が高いんやし、 マジックで塗っといたら大丈夫だよ」 「・・・。そやな。しゃーないな」 ジュンはボクのハゲ部分を太字のマッキーで塗りつぶしてくれた。 「ついでに眉とかもカッコよくしたろか?」 「・・・。それはええよ」 こうして南村荘の住人は皆、浴衣姿で電車に乗って宵々山へと向かうのだった。 女の子たちもみんな浴衣で張り切って待ち合わせ場所に向かっている事だろう。 今夜はヘンなシステムが前もって組まれていた。 というのも男女合わせると総勢20名ほどになってしまうので もともとカップルのものは、ほっといてもいいのだが その他大勢が宵々山の夜に団体で動く事など不可能なのである。 いや無理すればいけるだろうが、効率が悪い。 例えば、かき氷食べようとしても、まず店には団体で入れないだろう。 トウモロコシの屋台で「すいません。とうもろこし20本下さい」もないだろう。 そんなわけで「小分け」にした。4人ずつくらいに分ける事にした。 まるで修学旅行だが、結構その方がうまくいきそうだ。 うまくいかなかったのはそのアミダによる組み合わせ結果だ。 残念ながら一度みんなには内緒でこっそりデートした Mさんとはチームになれなかったこと。 ボクはY男とT子とK美の4人チームということになっていた。 待ち合わせ場所にはすでにたくさんメンバーが集まっていた。 ボクのチームはまだT子しか来ていなかった。 そのT子が近づいて来てこう言った。 「ごんちゃん。Y男とK美、来られへんようになったんやて」 「えっ!そうなん!残念やなぁ~」 「そう。うちはどっちかいうたらうれしいで」 「・・・お前、まさか二人に毒もったんちゃうやろな?」 「わかる?」 T子はニヤリと笑って振り返り、みんなのところに戻った。 いつもと違って髪の毛をアップにしていた T子のうなじがとても白くてきれいに見えた。 後編は明日の宵山に続く。グッドラック。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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