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カテゴリ:なぜに私は京都に来たの?
こんばんは。お待たせしました。って待ってへんか?
宵山ですがもう四条通は落ち着いた頃でしょうな。 四条室町にローソンがあるんですが、いつも宵山の時は大繁盛します。 店の商品がほとんどなくなっているサマは まるで集団強奪にあったような感じでした。 余計な事はええか?じゃあ。 T子は舞鶴の出身。「岸壁の母」で有名な町だ。 「うちのばあちゃん、岸壁の母やねん」 こういうつまらぬ冗談をいう女だった。 『「岸壁の母」より「完璧の母」でも目指しな』 ボクのありきたりな使い古した返しにもつきあって笑ってくれる そういう意味では、リズムの合う女だった。 ただし、それは恋愛感情にはならなかった。 本当にY男とK美は来なかった。 予定通りの進行となり、ボクはT子と予定外のデートをすることになった。 それも祇園祭の宵々山に、浴衣姿で。 これは傍から見れば完全に恋人同士だろう。 とりあえず二人で人の波に流されながら「鉾」を見た。 「長刀鉾って男って感じしいひん?」 T子がいう。 「下ネタかい!」というと 「わかる?」とT子はいつものようにニヤリと笑う。 「じゃあ、女性的な山鉾ってあるか?」と尋ねると 「う~ん。。。月鉾やな」 「なんで?」 「なんとなく。。。」 「それってメルヘンチックにいえばかぐや姫からの連想だろうし あとは女性は月単位で物事考えるっていうな。男は週単位だけど。そのへんか?」 「なるほどね。ごんちゃんみたいに理由付けしなくてもええねん。だからなんとなくや」 なんとなく・・・なんて話がいつまでもボクの記憶に残されている。 山鉾、「山」と「鉾」があるのだが、実はその当時、女性が山鉾に上がる事は 禁じられていた。21世紀になってから開放されたように思う。 だから性別でいえば「女」なのかもしれない。 他の女を乗せると、怒るという。。。 焼きトウモロコシのいい匂いにつられて、二人で食べる。 りんご飴は二人とも好きじゃないので食べなかった。 食べにくいし、中身はりんごだし。 綿飴とかも、いつのまにか手がベタついてしまっているからイヤ。 それならたこ焼きとかお好み焼きの方がいい。 そんな感じで夜店で売られているものの好みはとても合う女だった。 関西の女は「粉もん好き」なので、当たり前なのかもしれないが。 「珍しい鉾をなんていうか知ってる?」 会心の一撃のような質問を、ボクはたこ焼きを食べながらT子にぶつけた。 「ちんほこやろ?」 「あ!そこは丸つけないんや」 「いつもいつも期待通りいくと思ったら大間違いや」 T子は青のりをつけた歯を見せて笑った。 かき氷を食べに入った店でいちごミルクと抹茶ミルクを注文して 「祇園祭特別料金」に一応文句をたれあうと T子はいきなりいった。 「M、怒ってるんちゃう?」 ボクはちょっと驚きながら、とぼけた。 「え?なんで?」 「知らんと思ってるん?デートしたんやろ?映画観たって?」 まさか見た映画がメリーゴーランドでそこで号泣した事まで知っているのか? でもそれ以上はT子はいわなかった。 T子は知っててもそういう事で笑う女じゃなかったし MさんもそこまでT子に話す女じゃないと思いたい。 「なんや。知っとったんかいな?」 ガヤガヤと賑やかな店だったので、そして東北弁ベースの京都弁に T子は聞き違いをしてこういった。 「嫉妬???う~ん。わかる?」 「知っとったんかいな?」を「嫉妬したんかいな?」くらいに聞こえたのだろう。 いつもの「わかる?」のようだが、ひょっとするとT子にとっては 特別の「わかる?」かもしれないので、訂正はしなかった。 「小さい時から友達の持ってる人形とかうらやましかってん。 別に貧乏とかいうんちゃうで。友達のんよりええの持ってるくせに そっちの後から考えるとしょーもないもんが良く見えるんよ」 T子は微妙にボクを傷つけながら、告白とも取れるような事を言った。 ボクは笑ってごまかした。 いくぶん人通りの少なくなった四条通を二人で歩いた。 まだ歩行者天国は続いているが、夜店の数も減っているように感じる。 売れ残って氷がほとんどとけかかったケースの缶ビールを2本買った。 想像よりずっと冷えきっていて、持つ手が少し痛いくらいだった。 四条通を歩く人達はほとんどが「酔い覚まし」なのかもしれない。 ボクたちはガードレールにもたれて、今夜初めてのアルコールを乾杯した。 喉から流れ込んで食道までも冷たく感じるようなビールだった。 「ああ、うまい!!」ボクより先にボクの感想をT子が大声でいった。 「こんな旨いビール初めてやわ。いい思い出になるわ。ごんちゃん、ありがとね」 風が少し出て来たのか、T子のうなじの後れ毛が優しくそよいだ。 *イラストはあくまでイメージです。本人の似顔絵では決してありません。 *あとがき 京都の皆様、今年はよい宵山でしたか?「よいよい山」だって。プッ。 このお話のその後ですが、ボクはMさんにバナナをもらってフラれます。 T子からは失恋に対するなぐさめの長い手紙をもらった気がします。 でもそこにもボクに対するT子の気持ちは最後まで書かれていませんでした。 でも今思えば、いろんな伏線が引かれていて彼女が一番いいたかったのは やっぱり、「ごんちゃんわかる?」いや「ごんちゃん。わかって!」 だったのもしれません。 T子は今も独身で京都に住んでいます。 仕事は何だったか忘れてしまいました。 会社勤めだったからきっとおエラさんになっている事でしょう。 20代後半から最近まで所帯持ちの男と 半同棲のような日々を送っていると噂を聞いたことがあり モテ山君のコミュニティースペースでの同窓会の時に 酔った勢いでT子に聞いてみました。 (写真も一瞬アップしましたね。即削除しましたが・・・) その時の返事は「わかる?」ではなく「そうやねん」でした。 その所帯持ちの男が全然わかってくれなくて、 ついには「わかる?」も言わなくなったのかな?って ちょっと淋しく思ってしまいました。 グッドラック。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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