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2010.03.27
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カテゴリ:作品紹介
今夜は第三夜です。八重子の店に美代と二人で行きます。
小さな店の中でのまさに歪んだ三角関係が描かれてます。
八重子は倍賞美津子さんのイメージで書かれております。
って特にファンではないのですが・・・すいません(笑)
こないだ、石橋が久しぶりに『猪木さんが倍賞さんを誘って凧揚げをする』って
とんねるず初期のコントをしていました。わろた。
倍賞さんって猪木クラスの男じゃないと・・・って感じがします。
ボクなんてとてもとても・・・無理っっす。いろんな意味で。

 美代とはそれから一週間後にアルバイト先で再会した。
私はなんとなく照れくさかったのだが、美代は至って普通に接してくれた。
その日はもの凄い忙しさで、閉店まで働いた私と美代は、売上げが良かった事でご機嫌な店の主人に呼ばれ、二人で何か食べて帰れと大入り袋を特別にもらった。思わぬ臨時収入に喜び、二人で礼を言って、店を出た。
「さあ、どこにいこか?」
 美代が口火を切った。
ただこの界隈も夜十時を過ぎた頃には、ほとんどの食堂は閉まっていて、
夜遅くまで開いている店といえば、居酒屋とかお好み焼き屋しかなかった。
 私はこの辺でお好み焼きを食べるなら、八重子の店に行きたいと思った。
「お好み焼きで良かったら、下宿の近くにたまに行く店があるけど」
「うん。ええよ。そこにしよ」
美代はあっさり同意してくれた。
 電車の中で隣り合って座っていると、美代は私の肩にもたれてウトウトし出した。
「もうすぐ桂やで」
 車内アナウンスより少し早く、私は美代に声をかけた。
うーんと言って目を擦る仕草には、まだあどけなさが残っていた。
桂駅で嵐山行きに乗り換えると、車内はガラガラで、また二人で隣り合って座ると
美代はいきなり肩にもたれて来て、小さな声で囁いた。
「キスしよか」
「……誰かに見られたら嫌だから。それにすぐ着くよ」
「なんだ。つまらんなぁ」
 美代はわざと頬を膨らませて見せた。
美代の唇の柔らかさと暖かさが蘇り、蠢くものを感じていたが
駅への到着を知らせる眠そうな車内アナウンスが気分を落ち着かせた。 
 改札口を出て、八重子の店に二人で向かった。この時間でも既に店を閉めている時もある。
美代は何か話しかけて来たが、うんうんと相槌を打ちながらも、何も頭の中に入って来なかった。
八重子に早く会いたくて急ぐ私に、美代は必死に付いて来ていたのだろう。
「なんか急いでる?」
 少し息を切らしながら、美代がそう尋ねて来た時、ちょうど店の前に着いた。

「いらっしゃい」
 いつものように無愛想な八重子がいた。
店の中には他には誰もいなくて、いかにも閉店間際の雰囲気が漂っていた。
暖簾を持ち上げたまま、私は遠慮がちに聞いた。
「あのー、まだいいですか?」
「どうぞ。入って」
 私の次に美代が入って来たので、八重子は一瞬驚いたが、すぐに何食わぬ顔に戻った。
「珍しいやん、彼女連れて来てくれたんやね」
 八重子から話しかけて来る事の方が珍しかった。否定したかったが美代に先を越された。
「はじめまして。『彼女』の美代といいます」
「可愛い子やねぇ。どこでも好きなとこ座って」
 私はいつものように、八重子が見えるようにカウンターの端に座った。
美代は横に座りながら、壁に貼られてある黒い板に書かれた沢山のメニューを見ながらつぶやいた。
「何にしよかな。何が美味しい?」
 私の方を向いて美代は聞いたのだったが、その質問に八重子が反応した。
「まずいもんなんてないで。うちは」
 少しトゲのある言い方ではあったが、それに対して、美代がひそひそ声で
私の方を向きながらも明らかに八重子に向かって、挑戦的に言い返してしまった。
「そうなん? 随分、自信があるおばはんやね」
「ミックスでええか。お肉の他にも、えびとかイカとかもたくさん入って美味しいから」
 私は慌てて美代におすすめの品を言って、同意を求めた。
「じゃあそれ、ミックスふたつ。それから……ビールも飲もか」
 美代がビールも一緒に注文した。八重子は冷蔵庫から冷えた瓶ビールを出し
カウンターにドンと置き、一緒に冷えたグラスも二つ置いた。
「お嬢ちゃん、アルコール大丈夫かい? 無理せんようにね」
 年齢よりも若く見える美代を心配して言ってくれたのかもしれない。
でも『お嬢ちゃん』と言う呼び方は明らかにさっきの『おばはん』に対抗するものだった。
「若いんで。まだまだ無理利きますからご心配なく」
 そう言い返す美代の耳元で、私はいい加減にするように低く強い声で言った。
「あら? ええやん。こんなはっきり物言うお嬢ちゃんって気持ちいいもんやで」
 カウンターごしに八重子は言いながら、かき混ぜ終わったタネを鉄板に流した。
それはいつもの形ではなくハート型を作ろうとしていた。
八重子の指先にじっと見とれていると、美代が私の左手の甲を軽く抓った。
そして二つのグラスにビールを注いだ。
「乾杯。うちらの未来に」
 美代がまた余計な事を言った。
八重子はいつものように煙草に火をつけて、スツールに座った。
煙草を吸う様子をじっと見ていると、美代は今度は強く左の太ももを抓ってきた。





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最終更新日  2010.03.27 18:11:14
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