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2010.03.28
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カテゴリ:作品紹介
こんばんは。ごんどうごんぞうちゃんです。

今夜は第四夜です。酔っぱらいがでてきます。
ちなみにガッツ石松さんをイメージしております。
そしていよいよ、八重子とのカラミがあります。
当初、えんえんと原稿用紙3枚くらいその場面を鼻血流しながら書き綴ったのですが
パートナーの検閲にまたもやひっかかりたったの4行に余儀なく変更させられました。
ていうか、原文のままだとここでもはじかれる単語で一杯だったかもしれませんが(笑)
それは『まぼろしの原稿』という事になるのでしょうか?
少し残念です。 ではどうぞ。



「おおきに。また来てや。お嬢ちゃんも連れて来てや」
 今夜の八重子は最後まで少しおかしかった。
美代はもう怒り心頭なのだろう、店を出てからずっと黙り込んでいる。
私の下宿の前を通りかかったので、建物を指して教えるとチラリとそちらを見て立ち止まったが、
また黙って急ぎ足で歩き始めた。
大通りにさしかかり、信号に歩みを止められると、振り返って一気に怒りを爆発させた。
「どういう事? どんな関係なん? あなた、おばはんばっかり見てたわ。
おばはんだって何か色目使って気持ち悪いし……。
それに何? わざわざハートのお好み焼き作っておいて、
憎々しげに半分に切ったやろ? 見てた? 
頭おかしいんちゃうあのおばはん。
それか年甲斐もなく、あなたが好きなんちゃう?
ホンマ気持ち悪いわ。あのおばはん」
「考え過ぎや。それにそんなにおばはん、おばはん言うなよ」
「おばはんにおばはん言うて、何悪いん? やっぱりあなた、おばはんのこ……」
 思わず、美代の左頬を平手打ちしていた。
見る見るうちに両目からポロポロ涙を溢れさせたかと思うと、
振り返ってちょうど青信号になった横断歩道を走って渡って行った。
 美代の泣きぼくろの上を伝わる涙は、右手の平の苦い痛みとともに、
一生忘れられないものになった。
後を追いかけて謝ろうかとも思った。
どんな理由があろうと女性を殴るなんて最低だ。
でも八重子を悪く言う美代の事を、その時は許せなかった。

 気分を変えたくなり、下宿に帰って銭湯に行く準備をした。
銭湯は八重子の店のすぐ近くにあった。銭湯を出た時に、八重子の店が閉まっていたら、
それはそれでしかたないと思いながらも、私はいつもより急いで身体を流し、頭を洗った。
熱い湯に浸かりながら、美代を殴ってしまった事を思い出した。
謝りにいこうか、いや、やっぱり八重子を一人でゆっくり見たい。
店にもう一度行こうと銭湯を出た。今夜はとことん酔いたかった。
 店に戻ると、八重子は一人でコップ酒を飲んでいた。私はさっきと同じ位置に座った。
「どないしたん。彼女と喧嘩でもしたんか。石けんの匂いやな。銭湯いってたんか」
 八重子はトゲのない声に戻っていたが、少し酔いが回っているようだった。
「……。さっきはいろいろ生意気な事言ってすいませんでした」
「そんなん、謝る事ちゃうがな。ま、一杯飲み。これは『おばはん』の奢りや」
 わざとそう言って笑いながら、冷えてないコップに一升瓶から直接溢れる程、酒を注いでくれた。
私はグッと半分程一気に飲むと、気管に入ったのか、咽せてしまった。
「あわてんでええから。ゆっくり飲も。私も飲みたい気分やから。アテはこれでええな」
 小鉢に入った筑前煮を出してくれた。
「これもメニューに有るんですか?」
「ちゃう。うちかてお好みばっかり食べてられんがな。『おばはん』の晩ご飯用や」
 その夜の八重子は雄弁で、いろんな話をしてくれた。
八重子の名前の由来は、生まれ故郷が八重桜の名所だったから。
自分もいつか子供が出来たら、桜にちなんだ名前を付けようと思っているという事。
でもこの歳になって、相手もいないので無理だろうと感じている事。
昼は会社勤め、夜はスナックで働いて一生懸命お金を貯めて、この店を開業した事。
この場所にしたのは、駅のホームの桜並木がキレイだから。
そしてホームのベンチに座って、サクラを眺める季節が大好きだから……。
 私は夢見心地で話を聞いた。
酒も少しずつとはいえ、もう随分飲んでいる。八重子の顔も輪郭が時々ぼやけて見える。
このまま、幸福の絶頂で八重子のそばで眠りたいと思った。

 その時、幸福な空間を引き裂くように、入口がいきなりガラリと乱暴に開けられた。
「まだやっとるか」
 作業服を来たベロンベロンに酔っぱらった男が入って来た。
「ああ、すんません。今日はもうおしまいです」
 八重子は丁重に断ったが、男はかまわず私からひとつ離れたカウンター席に座り込んだ。
「まだ、このにいちゃん、飲んどるがな。わしにも一杯、飲ましてくれや」
「いや、もう今夜は店閉めてもうたんで、また来ておくれやす」
 男は私を睨みつけてから、八重子に向かって聞き捨てならない事を言った。
「なんや、若いにいちゃんいるからってカッコつけて。また、ひいひい言わしたろか」
 八重子に対する侮辱が許せなかった。席を立って、酔っぱらいの男に言った。
「おっさん、ええかげんにせえや」
「お、なんや、にいちゃん。やる気け?表出るか」
 私は男の後を付いて行った。私より随分背も低くて、ずんぐりとした男だった。
「あかん」といって八重子があわてて、カウンターから出て来る気配を感じた。
 男は首を左右に振り、ポキポキと鳴らしたかと思うといきなり振り向いた。
その瞬間に鳩尾に激痛が走り、胃の中の物が全部飛び出しそうになった。
次に左目にもの凄い衝撃が走り、星が飛び散った。私はそのまま仰向けに倒れ、
アスファルトの冷たさを背中に感じていた。夜空の星が回って見えた。
バシャリと音がして、私の顔に水しぶきがかかった。
「何するんや。このアマは」
「うるさい。帰れ。そっちこそ素人さんに何するんや。もう一杯かけたろか」
 どうも八重子がバケツか何かで男に冷水をかけて、追っ払ったようだ。
私は八重子の肩を借りて店になんとか戻り、階段を二人でよろよろ登り、横にならせてもらった。
そして酒の酔いとパンチの威力のせいで私は意識を失ってしまった。
 左目に冷たいタオルを感じて、目を覚ました。
天井からは和風のペンダントライトがぶら下がっている。
オレンジ色の豆球になっていて、部屋は薄暗い。
畳の上にいつのまにか布団が敷かれ、その上に私は横たわっていた。
「気が付いた? あんなやくざ相手に無茶したらあかんよ。元ボクサーやで」
「そうなんですか」
「それが逆に良かったのかもしれんけど、即KOで。刃物とかも持っとらへんし」
 八重子はタオルを絞り直して、もう一度左目の上に乗せてくれた。
「でも、うちの事、守ってくれようとしたんやね。おおきに」
 そして女神のような微笑みを浮かべて、横たわる私の顔を覗き込んでつぶやいた。
「優しいんやね」
 そう言うとそっと唇を重ねて来た。
長いキスの後、八重子は私の右手を取り、自分のTシャツの裾から乳房へと導いた。
そして自分の手を上に添えて、動きや強さの加減を教えてくれた。
左目の痛みも忘れて、私はバネのように上半身を起こし、八重子をそのまま布団の上に押し倒した。
美代の事はもう忘れていた。
さっき男が言っていた事なんてどうでも良かった。
私がずっと望んでいたのは、これだ。私の腕の中に、憧れの八重子がいる。





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最終更新日  2010.03.28 18:54:08
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