ターナーの映画
「ターナー、光に愛を求めて」を見てきました。この映画はハラハラドキドキするようなストーリー展開はないし、カッコ俳優さんが出て来るわけでもない、美しい恋愛物語でもないので誰にでもお勧めというわけにはいきません。また、ターナーをあの有名な自画像やヴェネチアなどの絵で知っている人に対しても、イメージを壊してしまうかもとためらいます。でも、そんなことはない、やっぱりターナーが好き、何よりも映画が好きという人にはぜひ見て欲しい映画です。決して損はしない、どころか10年に1度見られるかどうかわからない傑作です(私にとっては)映画の舞台になる場所はロンドンにあるターナーの自宅兼アトリエ、ロイヤルアカデミー、パトロンのお金持ちの家、ブース夫人の宿屋がある港町、後は近所の市場やテムズ川とごく限られた場所です。ターナーは広くヨーロッパを旅して絵を描いているのにその風景がほとんど出てこないのです。きっと彼はたくさんの場所を旅しているけど、その目的はあくまでも絵になる光景を捜すことで、彼自身がその土地の人々や景色と交流を持ったわけではない、下手に観光名所を入れたら現代の旅行案内番組になって彼の見た景色ではなくなり印象の薄いものになってしまうからあえて狭い地域だけの撮影にした、そんなことを考えました(違っているかも)実際のターナーがあの肖像画とは違っていると知っていました。知ってはいても映画での登場の仕方は衝撃的です。無愛想、醜男、いつもゼイゼイと息苦しそうにしているし・・・絵を知る前に映画を見ていたら夢中になったかどうか、微妙です。さらに女中のハンナに手を出したり、昔の同棲相手や実の娘が訪ねてきても無関心だったり、娼館に行ったりとこれは許せない!という場面もたくさんありました。それでも映画の画面の人物はターナーであり、圧倒的な迫力と存在感がありました。ターナーは母親を精神病で亡くしていて父親とだけに強い絆があった、その父親を亡くした時の表現がすごかったです。普段感情を表わさない人間がこうなるのかとびっくりしました。ロイヤルアカデミーの展覧会は華やかだけど画家にとっては戦いの場所ライバル意識がすごいです。また会員になれずにターナーに借金をして最後には自ら命を絶ったと言う画家も出てきて(パンフレットにあった)芸術の残酷さも突きつけられました。あの時代イギリスは発展したけどターナーの母のような不幸な人生や夭折した芸術家などもたくさんいて華やかな時代というだけではないと実感しました。ターナーは晩年港町で宿屋を営んでいたブース夫人と親しくなり、一緒に暮らすようになります。2人並んで写真を撮ってもらう姿が微笑ましく言葉に表現するのが下手な彼の唯一の愛情表現だったのだと思いました。でもそうやってターナーが長くもどらないことで女中のハンナは苦しむ、何かを得れば何かを失うのだと強く感じました。パンフレットを見ると、映画の撮影期間は16週間だけど監督は12年間も構想を練っていたこと、主演の俳優さんは2年間絵を習いに行ったことなどが書かれていて、監督、出演者、スタッフの誰もが真剣勝負で映画作りに関わったということがよくわかりました。勧める相手を選ぶけど、やっぱり多くの人に見て欲しい映画です。【送料無料】絵画:ウィリアム・ターナー「自画像」●サイズF15(65.2×53.0cm)●プレゼント・ギ...価格:48,800円(税込、送料込)