のらりくらりと行きたい

仕事の合間にジュニアスタイリストのAがラップトップをいじってるので覗いてみた。
Facebookに何やら書き込んでいるようだ。
FacebookとはMyspaceみたいなアメリカ版SNSで権造もお客さんに誘われてるんだがこれ以上手を出すと収拾付かなくなりそうで始めるに至っていない。
『アレ？　AもFacebookやってたの？』
『うん。最近始めたばっかりで。』

Aは２５，６歳なんだが、最近２回目の結婚がダメになってしまった。以前の結婚の連れ子とこの前の結婚の子供の２人のチビを抱えており、元ダンナとは何度も何度もやり直そうと努力して２人揃ってカウンセリングなんかにも通っていたが、結局溝は埋められなかったようだ。
ウチの店も以前一度辞めており、権造が紹介した友達のサロンで働いていた。が、やっぱりココが一番いい、と出戻り。無鉄砲だし落ち着かないんだが性格は良く元気もあり、権造は妹分として可愛がっている。仕事に関してはとても勉強熱心なんだが、まだ美容師一本では食っていけずに、アパートで子供と暮らす生活を始めたために今は仕事が終わると近くのスポーツバーで働いている。

『で、それは何を書いてるの？』
『あ、コレ？私のプロフィール。』
へぇ～～～、見せろ見せろとラップトップを引ったくり、見てみたプロフィールには
『アホでクソッタレな男共には嫌気がさした。これからは女をターゲットにします♪』
え。。。。。。
前半のゴートゥーヘル的なコメントは分かる。が、後半の宣言はマジなのか？？？
『ココの部分なんですけど、マジ？？？』
『イエース、ゴンゾウ！別の人生歩むことにした！』
『コレはカミングアウトって事？？』
『アーハー！！』
アーハー？？？？？

いつから心境の変化が、と聞いてみると　やっぱり離婚のゴタゴタ時らしい。詳しく話を聞いていたので同情してたんだが、二手に分かれた岐路に立ったときにAはこちらの道に進むことにしたらしい。
性同一性障害で生まれつきの場合もあれば、人生のふとした瞬間でそちらの道へ行くこともある。
『なんで教えてくれなかったんだ？』
『なんだか説教されそうだったし～。今報告してるし～。』
説教されそうのフレーズでスイッチオンしてしまい、反対はしないがチビの成長にくれぐれも影響をあたえないように、親としての責任はちゃんと果たすように、とウダウダ述べる権造。ハイ、分かりました、とこのときばかりは神妙に母親の顔に戻るA。
『で、好みのタイプとか、、、。』
『あ、今日仕事終わってからデートなんだ♪』
『ええええええ！！！だからそんな格好してんだ！』
気合の入った勝負服で仕事に来ているA。本日すでに初デートらしい。。。。

権造はアシスタント時代、時々この道の方々からモテた。シャンプーしてる時に下から思いっきりガン見され緊張してコチコチになっているとすっと手が伸びてきて権造のほっぺを触ったりする。ひぇぇぇぇ～～～となり、お湯が顔にかかるといけないからおさわり禁止にしてもらい、他の人からも愛のポエムをチップと一緒に貰ったりしたんだが、そんな話をAにしていると
『私はゴンゾウは無理だな～。』
『ええ？無理ってなんだよ～、無理って。』
自分にその気は無いくせに頭ごなしに拒否られると何だかちょっと寂しい気が。仲がよすぎるから無理だよ。と言われて、あわててマジに考えなくてもよろしい、と返す。
ゴンゾウはお姉さん以上でもお姉さん以下でもないな～と言われ素直にほっとした。

昔、まだ作造と付き合う前にバイト先に来ていたミゲルというカッコいい権造のタイプど真ん中のナイスガイが居た。
元々権造がマイアミに来てすぐから知り合って仲良くしていた面々の友達であり、電話番号なんかも貰っちゃってよっしゃメシでも行くか～～！と気合を入れてた矢先に、その面々の一人であったやはりその道のピーターという男に横取りされてしまった。。。。
後にラブラブとなった２人が来るたびに、『ミゲルよ～～、なんだよ～。権造とデートするはずじゃなかったっけ～～～。』と怒りをこめて抗議したのだが、『ソーリー、ゴンゾウ。ピーターと出会っちゃったから、、♪』そして目の前で手を握り合い見つめあう２人。きぃぃぃ～～っとしばらくは怒ってたのだが、その後作造と付き合うことになりその間もミゲルやピーターを含めた面々とのお付き合いも続き、権造達の結婚式にはみんな揃って来てくれたし、ゲランの専属メーキャップアーティストだったピーターは権造のメイクも担当してくれた。

その後、ピーターと破局したミゲルはなんとストレートの世界に逆戻りして普通に女性と結婚して子供まで出来たらしい。コレは珍しいケースらしいんだが、子連れで作造の店に顔出したりなんかもしたようだ。

過去にその道に入って日々確実に変化していく様子を目の当たりにしたのがこのミゲル。
そして今回、目の当たりにしそうなのがウチのA。
いろんな人生があるものだ。

Aに言わせると権造はその道の人には絶対に見えないそうなのだが、今の髪型が思いっきりショートなのでバイには見えるらしい。
へぇぇぇぇ。
権造はあくまでストレート人生を歩んでいるし歩んでいくであろうから、どう見えようが構わないんだが、バイに見えると言われたヘアスタイル（ｂｙジョージ）は切りすぎただろうか、と一瞬思った。

ちなみに高校生の時も近くの女子高の女子にモテた。
剣道部だったので、防具を担いで電車に乗ってたりするとチラチラと遠くから見る女子高生。目が合うとキャーーーー。
『ゴンゾウセンパイ♪いつも電車で見てます♪』なんてラブレターも貰ったんだが、カワイイ年下男子だったらいつでもガブリと食いついてやるのにぃ～～！と歯ぎしりしたものだ。
バレンタインもその辺の男子よりはチョコの獲得数が多く、次の日に学校に持って行ってはウリャウリャと負け組男子に見せびらかす。ゴンゾウセンパイは当時剣道部のセンパイに惚れていたので律儀にも食べるのはセンパイに対する裏切り行為である気がして（一方的な片思いだったんだが）散々見せびらかした後に１日遅れの義理チョコとして再利用させて頂いた。


結局、Aは一日ソワソワしており、アポなしの時間に髪をトリートメントしてみたり、メークを何度も直してみたり。権造や親友のCにからかわれながらも勝負の気合充分であった。
勝負パンツ見せろとCと２人で詰め寄ってみたのだが、勝負パンツは秘密らしく封印されてしまった。
一体どんなパンツ履いてんだろう。Cと絵を描いたり色を塗ったり非常にくだらない休憩時間を過ごした１日であった。

おかまっちが去ってから、ウチのサロンのその道度は０％になっていた。美容師自体その道の人が結構な割合を占めるので、０％もすごいよな、と思ってた矢先のAのカミングアウト。

顔にすぐ出るタイプなので、明日サロンに入ってきた瞬間にチェックして、オ～ラ～イ！とハイタッチするか、よちよちと慰めるのか見極めることにしよう。