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テーマ:心の病(319)
カテゴリ:仕事
今日サロンに来てくれた台湾人の女の子。
もうかな~り長いお付き合いで、この度無事に大学院を終えて今就職活動している。 奨学金で大学院に行っていたので、自分の専門分野の講義を学生にしたりしてその給料を返済に充てていたとても真面目な女の子なんだが、研究機関に就職希望していて来週火曜日から3日間、ミシガンの大学の研究機関に面接に行く事になったそうだ。 毎回あれこれ話をするんだが、いろいろ突き詰めて物事を考える性格の彼女の場合、のほほん人生の権造のお気楽アドバイスが結構新鮮に映るようで、来るたびに『話してラクになった気がする。』と言ってくれる。 今日は面接のプレッシャーに悩む彼女の話を聞いていたんだが、面接自体とは別に非常に今頭を悩ませていることがあるらしい。 実は彼女には長年悩む『恐怖症』があり、それは『他人の運転する車に乗るのが怖い』というものらしい。今回の面接は2泊3日なんだが、空港まで大学の人事課の職員が迎えに来てくれて、その後2日間丸々と大学構内や町を案内してくれて、いざ面接通れば向こうとしても内容が研究だけに長期に渡って居て欲しいらしく、町を気に入るかどうかという点も面接の重要なポイントらしい。 よって実際の面接以外の云わば大学周辺の町並みツアーにも向こうはかなり気合が入っていて朝食から夕食まで付きっ切りな感じでアテンドしてくれるのだが、彼女にしてみれば『他人の運転恐怖症』が今から気になってしょうがなく面接自体はこなせても このツアー中にとてつもないミスをしでかすのではないかと不安でしょうがないらしい。 彼女の場合、普段の町並みを走っているときには大丈夫らしいんだが、高速や一本道などスピードの出る道に入ると、途端に恐怖感が襲ってきてパニックに陥るらしい。パニックと言っても叫んだり暴れたりとかのレベルではないのだが、外を流れる景色を見ているだけで居ても立っても居られなくなり、冷や汗がダラダラ出てきてじっと目を閉じていないと叫びたい衝動に駆られてしまい、人と話すどころではないらしい。 むーーーーー。 適切なアドバイスなど全く浮かばない権造。他のときだったらぶっちゃけ相手に話して高速を使わないでくれとか、スピード出さないでくれとか、運転させてくれとか言えばいいのだろうが、就職の面接となるとそうもいかない。 この手に限らずパニックアタックというものは、その内容がどうであれ面接にとっては不利になるんだろうし、ぶっちゃけ話しちゃうという訳にもいかないのだろう。 毎回毎回必ず襲われるという事でも無いらしいので、『今回は面接って事だから、そっちの方に気をとられていていい意味で緊張してるから、きっとパニックにはならないよ。』と言ってみると『そうだよね。。。面接で緊張してるから余計に心配になるのかもね。。』と言う。 カラーリングの間に他のお客さんの予約が入っていなかったのでずっと座って喋っていたんだが、他にも * 丸々2日間車の移動ばかりが精神的な負担になるのなら、『1日はゆっくり大学構内を歩いてみて生徒やキャンパスの様子をじっくり見てみたい。』とか言って車移動を半分にする。 * 高速だと町並みが分かりづらいから一般道を走って欲しいとリクエストする。 なんて案を2人で出して検討してみた。 他にも、自分の専門分野だと喋りだすと止まらないくらいだが、基本的にシャイなので初対面の人といきなり何日も過ごして何を喋ったらいいのか分からない、と言うので、面接だという事もあり、向こうが質問してくる事も多いだろうが念のためにネタ帳を作ろうと言う事になり、権造が言う事を逐一メモる彼女。 この手の場合は権造が日常経験していることであり、初めてのお客さんと接するときなんかに話している事なんかを伝えて『万が一話が途切れたときの為のネタ帳』が完成した。 丁度今日の最後のお客さんが精神科のカウンセラーだったので、その人にパニックアタックについて聞いてみるよ、と伝え彼女は『思っていた不安を全部ぶっちゃけてちょっと楽になったみたい。』と言ってくれてた。権造が何か不安になったりしたらメールでも電話でもいいから連絡してねと番号を書いた名刺をお守りにすると財布にしまって帰っていった。 そして精神科のお客さんが来たのでさっそくカットの間に聞いてみた。 やっぱりパニックアタックの場合は、その人の背景なんかを掘り下げて原因となるものを探して行き、それとうまく付き合えるようにするか それ自体を取り除いちゃうかしないと中々収まらないものらしいが、とりあえず医師が処方する薬はあるらしい。ステージ上で堂々と歌っている歌手や舞台俳優にもこの薬を飲んでる人は多いらしく、長期に渡ると今度は依存症になったりして新たな問題も起きてくるらしい。なかなか難しいものである。 この精神科のお客さんも前のサロンから知っている10年以上のお付き合いなので、もし彼女が月曜日にでもボクの所に来たいのなら話を聞いてあげると言ってくれた。 彼女の方にはその由をメールで伝えておいたのだが、自分で決めてなるべく自分がいい状態で面接にのぞめるように心から祈っている。 数年前に居たアシスタントはまだ19歳の美人の女の子で、愛想もいいし仕事もチャチャっとやってくれるしとてもスタッフに好かれていた。 そんな彼女も情緒不安定という心の病を抱えていて、中学生の頃から精神安定剤を飲んでいた。 薬を飲んでる間はとても調子がよく情緒不安定だなんて知らない人は全く気がつかない様子だったんだが、彼女がパニックアタックに襲われた瞬間は凄まじいものであった。 週末の朝だったと思うんだが、駐車場で車を降りようとしている彼女がサロンの中から見えた。 何となく見ているとなんだか様子がおかしい。車から数歩離れてはまた戻って車のドアを開けたり閉めたり。なんだか泣いているようである。おかまっちと他のスタイリスト1人も気がついて3人で見ていたら、車の横に立ちすくんで泣きながらこっちを見ているようだ。 情緒不安定だという事は聞いてみんな知っていたので、3人揃って出て行っては却って向こうが緊張するかもという事になり、おかまっちは中に居ることになり同僚と権造の2人が車に近づいていった。 『今日は仕事がすごく楽しみだったんだけど、絶対に無理なのよっ!!』と叫んで座り込んでしまう彼女。手足をバタバタして暴れているので、なんとか落ち着かせてとりあえず店の中に入ろうと同僚が抱えて店の前まで連れて行くと、ドアの前で悲鳴をあげる。 どうしてもドアを開けて中に入れないらしい。今日は調子が悪いの?と聞くと、薬を飲むのを忘れちゃったから怖くて怖くてしょうがないと泣いている。 権造達には到底想像つかない恐怖感と、なんとかそれに勝って仕事をちゃんとしたいと思う気持ちとが入り乱れて次々に顔を出すのが見ていてはっきりと分かり、ドアにしがみついて開けようとしながら、やっぱり出来ない!!と崩れ落ちたり壮絶なものであった。 もちろんそんな状態で仕事をするのは無理であり、サロンの中にも無理に入れないほうがいいという事で、隣のレストランが外に置いているベンチに座らせて、もちろん運転も出来ない様子だったから彼女の親に電話して迎えに来てもらって帰っていった。 その後も時々アップダウンが激しく、仕事に来れないときもあり、でもおかまっちも含めみんな心配していたのでクビになどせず様子を見守っていたんだが、結局『サロンの前でパニックになってしまった』事が新たなストレスになったようで、来れなくなってしまって辞めていった。 以前に書いたADHDを持つ子供もそうであるが、薬というのは症状を抑えるものであってそれで治る訳ではないと思う。なので根本的に治療を平行してやらねばならないものだろうが、精神的なものだとか先天的なものだとか自律神経の問題だとか、よく分からないけどもし染色体の異常だとかもあるとしたら、ものすごく難しいんだろう。 自分があっけらかんと人生を生きていて、パニックアタックとは呼べないレベルの閉所恐怖症だとか飛行機に乗るのが苦手だとか(閉所恐怖症は結構コワイが)、そんな不安しか感じないので、こういう人達を目の当たりにすると見ていてとても辛くなる。 自分は専門家でも何でもないので、ただただ向こうが話したい時に話を聞いてあげるくらいしか出来ないのだが、こういう方面の治療と言うのももっともっと研究が進んでちゃんと治療が出来るものになっていって欲しいと思う。 以前にお客さんの鍼灸師の人がADHDの子供の治療をしていると書いたが、このような治療に効果があるのなら、もっともっと広く普及して欲しい。パニックアタックもきっと応用が効くんだろうが、今度このお客さんが来たときによく聞いてみようと思う。 針の話は一応台湾人の女の子にもしたんだが、カウンセリング同様あくまで彼女の選択肢の一つなので、薦める事はしなかった。 自分と闘う事も自分を受け入れる事も生きていくうえで中々難しい。 彼女の面接が無事に終わる事ばかりひたすら願っている感じである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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