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森繁久彌が山田監督と会食していると笠智衆の話題が出た。
するとあの名優が表情を改め箸を置き「山田さん、私のようなつまらない役者の前で笠さんのような偉い人の話をしないでください」と言った。 そして「私のような役者は、頭を掻いたりハンカチで汗を拭いたり鼻くそをほじったりと、色々芝居らしきことしなきゃ間がもたない。でも笠さんはそんなこと一切なさらない。ただ黙って座っているだけでいい。こんな人に敵うわけがない」と続けた。 吉永小百合も「私は女の笠智衆になりたい」と言ったそうだ。 また、新劇の重鎮宇野重吉は「僕が一緒に芝居したくないやつ、つまり絶対食われてしまう相手が三通りある。その一は犬や猫。これは自然そのものだから敵わない。次に子供。いい芝居をしようなどと思わないから敵わない。三番目が笠智衆。絶対食われてしまう」と漏らした。 だが、笠智衆本人は自分は下手だと思っていた。 実際、名監督小津安二郎に言われるがままだったようだ。 たとえば、「盃を口までもっていって三つ数える、そして呑む」と言われてその通りやっても「笠くん、今二つしか数えなかったね」とダメ出しされる。 つまり、笠智衆という名優のかなりの部分を小津安二郎が作っていたわけだ。 なので山田監督の寅さんの新作に自分を入れることを忘れないように頼んだりしたのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/07/15 03:40:06 PM
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