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芒洋の日々 

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February 13, 2007
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1.28日記コメントに対する議論の続き。

今勉強中のところだが、イギリスでは1985年のハンズワース暴動を最後にpolitical discoursesが大きく変わってきている。大局を見れば、80年代のraceから90年代のethnicity、そして2001年以降のreligionの議論へという変化だ。そもそも80年代までは、Black CaribbeanもSouth Asianも全て引っくるめてBlackという表象がされていたのだが、それ以降はインド人、パキスタン人、中国人などのethnicity単位で見られていく。その大きな要因の一つは、エスニシティ間での経済的成功の格差が拡がっていったためだ。しかしまたこの変化は明らかに、従来のマルクス主義的階級闘争が影を潜め、宗教、ジェンダー、ゲイ・レズビアン、バリア・フリーなどの運動が勃興してきたことと結びついているように思われる。1989年のサルマン・ラシュディ事件は、イギリス国内において初めて南アジア系のイスラム教徒の存在に焦点を当てさせることになった。言うまでもなくこの『悪魔の詩』事件は、経済的貧困と疎外への抗議ではなく、宗教的・文化的尊厳を求めてのものだった。これを契機に、移民に対する敵意は、Black Caribbean系からSouth Asian系へと対象を移していった。それ以降イギリスでは、生存のための闘争から、recognition(承認)のための闘争への質的変化を経験していくことになるのである。

日本の状況も似たようなもので、おそらく89年の昭和天皇の死が象徴的に時代の転換をもたらしたように思う。その平成という時代を最も先駆的に描き出したのが、ノーマ・フィールドの『天皇の逝く国で』であっただろう。ノーマはこのルポルタージュで、沖縄人というエスニック・マイノリティとクリスチャンという宗教的マイノリティ(靖国に対する)を扱っている。95年の米兵による少女暴行事件以降、沖縄は日本の抵抗運動(従来型も含めてだが)の一つの拠点となっていく。例えば現在沖縄の辺野古には、昔からの反基地・反戦運動者だけではなく、現代の下級階層であるフリーターからクィア活動家(?)まで様々な人々が集まっている。また日本では、西洋諸国のようにはイスラムとの“対立”が表面化しなかったように思うが、既に90年代にオウム真理教によるテロリズムを経験している。麻原というテロリストの親玉を、ただのきちがいの宗教犯罪者だったと言って終わりにしてしまうことができるのか。何が麻原を生んだのか?

更に特筆すべき点は、バブル経済崩壊後の経済低迷が、会社における終身雇用と立身出世の神話とモデルを完全に奪い去ったことであろう。その影響をもろに受けた私たちとそれ以降の子どもたちには、予め引かれたレールのようなものは用意されていなかった。その点でBOOWYの抵抗は、80年代のみに留まる。何故ならば私たちは、もはや“エリート”などというものを信じていなかったから。90年代初頭の教育現場での一つの転換、すなわち“登校拒否”の否認から“不登校”の承認へは、この衝動の影響を受けているように思う。学歴神話の崩壊、画一化から個性重視への変化、フリー・スクールの登場などは、少なくとも形の上では各々の子どもたちに合った教育を選ぶ自由と権利を与えるようになった。


このように90年代は、「差異の(もしくはそれを承認するための)時代」だったとも言える。この観点で言えば、山田洋次の『息子』(1991)は特に興味深い。この90年代の『東京物語』とも言える映画は、地方から上京してきた肉体労働者の青年(正確にはフリーターだが)と同じ工場現場で働く聾唖の娘との恋を描いている。聾唖者としらぬまま一目で恋に落ちた永瀬正敏は、彼女に偏見を持つ友人の中年労働者(田中邦衛)に対して、「聾唖のどこが悪いのだ」と宣言するのである。マルクス主義的階級闘争の主体者であった肉体労働者によるマイノリティとしての身体障害者の認知は(そもそもなぜ男性青年労働者による女性身障者への承認・認知・代弁が必要なのかという問いに答えられないのが、この映画の限界ではあるが)、新しい時代の幕開けの宣言であったようにも思える。

その頃イギリスでもまた、差異の政治学というべきものが進行していた。





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Last updated  February 13, 2007 10:22:08 AM
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