テーマ:心の病(7246)
カテゴリ:面白履歴書・小説風
交差点でエンストしてしまった。
バッテリーが弱くセルは回らなかった。 「おい、押そう」 馬島と僕は急いで外に出て、オンボロ車を力いっぱい押した。 ブオーーン かかった!! 誰も引き返そうなどと言わなかった。 止まったら、また押せばいい! 皆そう思った。 案の定、湘南の帰り、車は押しかけだった。 その金内は今はもういない、 40で逝ってしまった。 葬式の日、僕は大きな声で泣き続けた。 一緒にハワイへ飛んだもう一人の親友、小金もはばからず大声で泣いた。 馬島は目に涙をいっぱいに溜めてこらえていた。 群馬に引っ越してしまい、 金内と会うのは正月とお盆くらいになっていた。 39歳の11月の秋・・電話が鳴った。 「おー、俺だよ、 さおりちゃん猫の絵好きだっただろう、カレンダー取りにこいよ」 僕のカミさんのことだ。 猫の絵を取りに川崎まで呼んでいるとは思えない。 僕は一瞬で ”会いたいのだな” そう思った。 誰よりも時間を共にしてきた間柄だ、 声のトーン、言い回しで何でも解る。 次の日曜日川崎向丘遊園に飛んで帰った。 何事も無いかのように話しは弾んだ。 フェラーリで帰ったので金内とはこの車で初めてドライブした。 喜んでいた。 過去、僕の両親が病気だったこと・・ 僕の家が貧しかったこと・・ 両親が相次いで亡くなり2千万の借金を返していること・・ 這い上がってマンションを買ったこと、 会社を興したが収入が無かったこと、 何でも知っているヤツだ。 その彼が・・ 「俺癌なんだよ 手術したからもう大丈夫なんだけどな」 「癌、そうか大丈夫かぁ・・そうかぁ」 もしかすると・・ そう安心させながら金内自信が悪い予感がしているのかな? 僕に会いたかったのは、そんな予感がしたからかな?・・・ それから10ヶ月ほどは、 ずっとメールや電話でやりとりをした。 いつか「一緒に仕事しよう」 また秋がやってきた。 奥さんから電話がかかってきた。 「実は末期なの、会ってやって」 彼の奥さんは僕が紹介し引き合わせた人だった。 「だいぶ弱っているから会社の人には会いたくないって」 僕と馬島にしか会いたくないという。 弱っているところを人に見せたくないのだろう。 僕は聖マリアンナ医科大学の病室へと飛んだ。 馬島と僕と金内だけの世界! 黄金の時間を過ごした。 一分、一秒と心置きなく過ごそう。 思い出話をいっぱいした。 将来のことも・・ 群馬から隔週で通った。 毎度車中泊だった。 今日はもう検査の時間だという・・ 今日は声に力が無く身体を起すことも困難だった。 廊下に出て待った。 彼はベッドに乗ったまま移動してきた、 目が合った。 エレベーターに乗るところだった。 今でも忘れない、 その目は・・ サ ・ ヨ ・ ナ ・ ラ そういっていた、僕にはわかった。 ヤツの顔がかすんで・・・ よく見えない。 彼は手をやっと上げた、 精一杯のお別れをしている、そう思った。 最後になるかもしれない。 僕も彼の目をじっと見つめ手を上げ、 お別れをした。 時間が止まっているように感じた。 彼がエレベーターへ消えると・・ ・・・ こらえていたものがいっぺんに流れた。 それから1ヶ月弱。 40歳の11月、彼は僕を残して逝ってしまった。 あと10年、神様が生かしてくれたら・・ ・・・・・・ 金内、年とって、昔話を誰とすればいい?・・ 俺と親友で良かったか? またこみ上げた・・・・・・ ・・・・・・ 彼は生きたかったはずだ、愚痴一つ言うことなく、 逆に僕のことを案じてくれた、 もう時間が無いという時に。 これからの僕の人生はおまけだ、そう思って彼の分まで生きることにしよう。 《続く》 関連ブログ ■最近は親友が癌で亡くなりました。人生はそれでも前向きに考えることにしました。 (今ごろお父さんは天国であなたと家族として長く暮らせたことを感謝していますよ(^-^)あなたが悲しんでいること、泣いてくれたこともきっと喜んでくれているはずです) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/04/23 04:09:08 AM
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