僕はサラリーマン、
タイムカードを打ち、馬車馬のごとく働く。
目標を達成しないと上司に叱られた。
理不尽をたくさん感じてはいたが、
そんな中、
僕が経営者だったらこうしよう・・
そんなことをいつもテーマにしながら
"勉強"いや"修行"のつもりで日々過ごした。
良いところは学び、悪いところは反面教師にしよう。
こう考えると悪い上司も面白かった。
悪代官のように笑えもした。
僕はお金を頂きながら修行をした。
ある日のこと、
異動して来た子がいた。
無口で目立たない素朴な子だった。
人の気を引くことも無く、
いつもそっといる子だった
色気無し、スカート姿は見たことが無かった。
仕事ぶりは真面目そのもの、
敵を作らない子だった。
猫が大好きで猫を見るとその場から動かない、
そんな子。
その子に初デート、初デートプロポーズ。
それが今のカミさん、さほりだ。
仲人は恩師町田課長、お世話になった。
結婚して2年も経った頃・・・
子供が出来たらしい。
何度か病院へ通っていた。
今日は超音波でお腹の様子を見せてもらったらしい。
帰ってくると・・・
「画面の中にね・・・」
そこまではしゃべった。
指で
「こんなに小さいの」
と言おうとしたようだが、
・・・
胸がいっぱいになって言葉がつまった。
いっぺんに涙がこぼれ落ちた。
・・・
超音波で小さな命を見て感激したのだろう。
僕はお父さんになったんだな。
僕の父の思い出が蘇る。
初めて一人で床屋さんに行った帰り道、
僕を途中で待っていてくれた。
みつけた僕は嬉しくて走ってぶつかっていった。
そして抱き上げて肩車してくれたっけ。
・・・
生まれる前のお腹の中の命。
男の子かな?女の子かな?
両親が亡くなり、
寂しい時が続いたが仏壇へ嬉しい報告ができた。
それまで妊婦さんに目がいったことは無かったが、
街を歩くと妊婦さんはいっぱいいるものだと思った。
「お腹にぶつけないでね」
妊婦さんにそんな想いを持つようになった。
よし頑張ろう!
仕事もバリバリとこなしていた。
会社ではマンション投資は秘密裏だったが、
高柳さんがマンションオーナーになったことで噂は広がってしまったようだ。
催事の片付けやらで忙しい最中、連絡があった。
上司達がファミレスに集まるからMacさん来てくれないか!
こんなに疲れていて終電近いのに・・
《続く》
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