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穏やかな爆弾

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カテゴリ:歪曲人生
肌を撫でる風に、凛としたものが混じるようになりました。


いっそうの深みを増した青空に
うろこ雲が広がって
そのなんとも言えぬ郷愁感を絶妙に滲ませています。

もう秋・・なんですね。

この季節、ぶらぶら散歩なんかしていると
鼻先を掠めるほのかな香りに出会います。
ふと、その先を眺めると
儚いくらいに小さく黄色い花。
しかし確かに自分を主張する
まるびを帯びた甘く不思議な香り・・。

そう・・

金木犀です。


なんとも


良い香りですね。


ホント・・








街中の金木犀を焼き払いたい気分ですよ。



僕がこの匂いを嫌いになったのは、小学生の頃。

当時、父がマイカーに設置した物は

金木犀の芳香剤でした。

「おとうさん。くるまがいいにいするね。」

幼い頃のまぐろ少年は、まだ金木犀がどんな花なのかも知りませんでしたが
初めて嗅ぐ甘い匂いが珍しく、とても喜んでいました。

もともと三半規管が脆弱な僕は、車酔いし易い体質だったので
長時間、慣性を帯びた車内でストマックを揺らし続けられると
必ずと言っていいほど、汚らわしいものを巻き散らしながら絶命してしまうという
車嫌いの子供でしたが・・。
この甘い香りが嗅ぎたくて
車内にこっそりと紛れ込んで遊んでいたりしたものです。

しかし、ある日。事態が一変します。


それは夏の日の出来事。

ウチの一家は、お盆になると母方の実家に総出で帰省する習慣がありました。
山道を車でひた走るのは苦手でしたが
おじいちゃん、おばあちゃんは大好きだったので
車酔い気持ち悪さとの闘いにも、エチケット袋片手に何とか耐え
毎年、二時間半の道のりを通っていたのです。

その日も例年と同じく
山の斜面を蛇行するカーブの連続に責め上げられ
真っ青な顔をしていた僕は、いつ堤防が決壊してもおかしくない状況でした。

それでも窓さえ開けていれば、風が入ってきて幾分か緩和されます。
ほのかに香る大好きな金木犀も
込み上げてくるものを、必死で耐える僕には
大いなる支えとなっていました。

やがて・・郊外に下りてきた車は渋滞に掴まってしまいました。

風は止まり、車内に凪が訪れます。

うちのマイカーには、エアコンなんて高級なものは装備されてなく
炎天下の夏には脱水症状の危険性の伴う
デンジャラスビューティーな代物。
ぴくりとも動かないこの状況下に置いて、車内の不快指数はどんどんと上がっていきます。

ココまでは、毎年変わらぬ通過儀礼だったのですが
今年は一味違いました。

そうです。

金木犀の芳香剤です。

先程までは、速度がもたらしてくれる風が
上手く匂いを拡散してくれていたので、全く気にならなかったのですが
風が止み、殆ど車内に通気がなくなると
今迄心地良かった金木犀の香りが、車内に充満し始めました。
濃密なる甘美は、狭い箱の中でどんどん自己主張を始めます。

うだる夏に、ミントなどの匂いで清涼感を得るなんて話をよく耳にしますが
この毒々しくも甘い匂いは、逆アロマテラピー。

三半規管をしこたま打ちのめされて喘いでいるまぐろ少年の
呼吸器を容赦なく塞いで行きます。

大好きだった金木犀の匂いが牙を向いた瞬間でした。


気持ち悪いので、たくさん息を吸い込もうとしますが

鼻口から入ってくるのは、毒々しい甘さの金木犀。

窓から顔を出し、何とか逃れようとしますが

どんなに逃げても、追ってくる甘い香り・・。

「うう・・気持ち悪いよ・・お母さん。」

泣いた所で、周囲に立ち込めたこの香りはまぐろ少年を捕らえて離ししません。


そして当然のように訪れる





決壊。





狭い車内は、見事に地獄絵図に変貌を遂げるのでした・・。



どうしょうか?

わずか8,9歳の学童が深層心理に
トラウマを刻み込むのには充分すぎると思うんですけど・・。

それ以来、金木犀の匂いを嗅ぐと
あの忌まわしき光景が、まざまざと蘇って来て
気持ちが悪くなってしまいます。

ああ・・今日もあらゆるお宅の軒先から

黄色い悪魔がやって来る。





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Last updated  Aug 25, 2004 03:55:11 PM
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