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去る・・平成十五年、七月。
郷里に住む友人のお父さんが亡くなりました。 僕の父とも、変わらない歳だったので 超高齢化社会に変貌しつつある日本に於いては 『早すぎる死』だったのかも知れません。 大きな精神的支えを失って、落胆してはいないだろうかと 連絡を取った僕に友人はこう告げました。 「失わないと本当の意味に気付かないってコトも 沢山あるんだよ。 まぐろも、家族のことを考えたなら ずっと東京に住んでる訳にはいかないだろう?」 微かな負い目を覚えながら 生きたいように生きている僕には 分かりすぎるほど、よく分かる言葉でした。 家族・・。 十代、二十代の男って奴はその集合体に かなりドライな考え方を 持っている人も多いのではないのでしょうか? 他聞に漏れず、僕自身もそうでした。 「人の人生なんて、その人のものなのだから 僕は僕の人生を送ればいいし 両親は両親の人生を送ればいい。」 心の底では間違ってると思いながら 十代の頃は、そんな冷酷ともいえる考え方をしたものです。 しかし、一年に一度の帰郷の度。 徐々に老けて行く両親の背中を見るにつれ これ以上、自立に向けた通過儀礼って奴を 繰り返す訳にも行かないコトは この所、ひしひしと感じていました。 「そうだな・・考えとくよ。」 しかしこの時は、バイトとは言え 信頼して任されている新聞配達の仕事や 新たに東京でやってみたい仕事。 また、ココにしか存在しないかけがえのないモノも 傍に在りましたので 簡単に彼の言葉に頷くわけにも行かず。 お茶を濁して言葉を切ることしか 僕には出来ませんでした。 『大切な物は、その対象を喪失しないと本当の意味を理解出来ない。』 或いはありふれた言葉なのもしれませんが・・ これから父なき世代に立ち向かおうとする 友人の姿勢には 今までに僕の抱いてきた「家族」に対する感情を 大きく揺さぶるような、重々しい説得力がありました。 この後も、彼の言葉は 僕の心に楔を打ち続ける事になるのです。 時は流れ・・平成十五年、十月。 自分の新たな開拓のため、長年続けていた仕事を辞ました。 ちょうどプライベートでも、色々あって 何もかも原点に戻ったような時だったので 新たな分岐点を前に 今まで歩いてきた道程を振り返ってみることにしました。 彼の言葉が蘇ります。 『大切な物は、その対象を喪失しないと本当の意味を理解出来ない。』 僕の親父も、来年は還暦です。 いつまでも目を背けてばかりもいられません。 この日から、僕は自分と家族のあり方について 考えるようになったのです。 「はたして・・このまま東京に残り続けながら 自分のやりたい事をやることが正しいのか?」 「もし、一端に食えるようになったとしても 両親の片方が、何らかの病気で動けなくなった時 僕は彼らを見捨てて自分の人生を謳歌する事が出来るのか?」 「その時点で、郷里に帰って、家族を支えるとしても 一体僕は何歳だ? 果たして満足な就職口なんてあるのか?」 「それならば、比較的動きの取れやすい三十路前の今。 一旦区切りをつけて、郷里で新境地の開拓に努めたほうが良いのでは?」 「しかし、僕にはまだ、東京でやってみたい仕事もあるし 譲れない物だってあるだろう?」 「何十年経て、逃れられない壁にぶつかった時 ここでもう一歩踏み込まなかった自分を、僕は許せるのか?」 浮かんでは消える数限りない葛藤。 どちらを選択しても、後悔しそうな袋小路。 眠れない夜が僕を呪縛し 自分の納得できる答えを模索する日々が 幾日続いた事でしょう。 ついに、僕が導き出した答えは・・。 『せめて人間らしく』でした。 「どちらを選択しても、後悔するのならば 誰かを傷つけるよりも 自分の身体に開いた穴を見つめていたほうがずっと良い。 それにココじゃなくても、生きてる限り きっと目標は見つかるはずだ。」 それが僕の到達した最終結論でした。 或いは、それは・・ 自我の確立だけを模索し続けた これまでの僕との、離別だったのかも知れません。 こうして僕は、長年住み慣れた東京の地を 後にすることとなったのです・・。 追記 長々と・・ そしてうだうだと・・書きましたが。 これが僕が東京を離れ郷里に引っ込んだ理由でした。 モラトリアムの戯言だとか 逃避行動だとか ただの甘えと言い訳だ!この野郎!!とか 笑って頂いても結構です。 ただ・・いざ郷里に戻って 安心した両親の顔を見てると あの時の選択は正しいものだったと思えたので 恥を忍んで文章にしてみました。 次なるステージは、新境地・新天地を それぞれ開拓することです。 それに対しての目標、方向性の確立など 準備は着々と進んでおります。 詳細はまた追ってご報告いたしたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 16, 2004 01:46:54 PM
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