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穏やかな爆弾

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Nov 30, 2004
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  眼下には、穏やかに広がる海。
  振り返れば、優しい緑を湛える山々。
  そんな、のどかな雰囲気に囲まれた
  痴呆性高齢者グループホームが
  新しく勤めることになった職場。

  入居者さんは全部で18名。

  様々な問題を抱える高齢者さん達に
  人としての尊厳に満ち溢れた晩年を送ってもらうため
  24時間体制でそのお手伝いをするのが
  僕ら介護人のお仕事なのです。




一年程の自由人生活に別れを告げ
予備知識のみの頭でっかちな風貌で
全く未知の福祉業界に飛び込んでしまった僕が
3日間の研修を終えた時点で抱いた感想は・・。


楽しい♪


元来、お年寄りと接するのは「嫌いでない」という
性分が起因しているのでしょうが
なによりこれまでの
「何かの代償行為」や
「喰っていく為に続けていた仕事」とは違い
一から十まで納得して決めた職種ってのは
コレほどまでにやりがいがあるものか・・と
改めて実感している新米介護人まぐろです。
こんばんは。

勿論、まだ仕事を半分しかこなせていないので
その辺は忸怩たる思いをいだいてはおりますが・・。
もはや、修練在るのみで御座いますね。



さてさて・・。



研修初日。

ドキドキしながら訪れた異端の僕を
入居者の皆さんは、笑顔で迎え入れてくれました。
お話も率先して向こう側からしてくださるので
ヘルパーとして勤め始めた自分としては
全く逆の立場に立ったみたいで
何だか、ちょっぴり気恥ずかしいもの・・。
しかし、そんな気使いは
勿論、嬉しいことに間違いありませんでした。


そして更に

嬉しかった事は・・。


『永遠の18歳』と言う肩書きを
かなぐり捨て
31歳と言う実年齢を曝したとしても・・


「若いね~」

「まぐろさん。まだ若いんだから。」

「若い人は、やっぱり力が強いね。」



ここの入居者さん達は
僕よりも3回りも4回りも、お年を召した方ばかり。
そんな人生の大先輩達に比べれば
たかが31年ばかり生きてきた僕なんて
ただの嘴の黄色い雛です。
当然のことと言えば、当然のことですが・・。

思い返せば、これまでの新聞配達稼業では
自分よりも年下の学生どもに囲まれ


やれ・・オヤジだの。

やれ・・加齢臭まで、後一歩だの。

やれ・・三十路近いのに駄目人間だの



罵詈雑言を浴びせられ
「ぼ・・僕は老けてしまったんだ。」と
失意の底で
涙に暮れる日々を送っていましたものです。

そこに来て
この「若い!」「若い!」コールには感慨も一入。



「そうか!

 僕は若かったのですね!」




単純な僕は簡単に乗せられて
あっという間に有頂天まで上り詰めます。



老いさらばえた昨日までの僕よ。さようなら。

若き血潮の滾る今日からの僕よ。こんにちは。




そんな時、他の職員さんに呼び止められました。

「え?なんですか?

 この重い荷物を倉庫までお願いします?

 な~に!任せて置いてください!!

 なんたって僕は若いんですから~!!」




ボキッ!!




「・・腰から・・腰から変な音がした~!!」

有頂天にもぼり詰めたのは心の中だけで・・

身体の方は

全くついて行かなかったようですね。

がくり・・。





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Last updated  Dec 9, 2004 09:43:45 PM
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