「だってあの子・・・対人恐怖症よ」
「え?うそ・・・だって人前に出るのは平気だって・・・」
確かにそうは言ってはいたが、どう見ても興奮してはしゃぐタイプには見えない。
しかし、それが嘘ならなんでそんな嘘をつく必要がある?入部しに来たならまだしも伝言しに来ただけなのに
「・・・なるほど、君の得意の圧力に、ついそう言っちゃだんだな」
「ダ・レ・ガ・イ・ツ・ア・ツ・リ・ョ・ク・ナ・ン・カ・カ・ケ・マ・シ・タ・カ・!」
今掛けてるよね?俺確実に圧力掛けられてるよね?
「とりあえず部員が入ったって事で由としましょう。坂口さんもいつまでもそんなオチャラけたカッコしてないで着替えてください」
確かにオチャラけたカッコをしてるのは俺だが、このカッコを教唆した首謀者に言われる筋合いはないが、とっとと着替えたい俺は黙って部室に向かった。
もちろん疑問は山積みだが、今そんな事をあれこれ考えるより本人が来た時に聞くのが手っ取り早い。
そう思ったが、翌日になっても当の本人であるボーちゃんは部室に姿を現さなかった。
まあ彼女以外期待していた訳ではないので「ああ、やっぱりね」ぐらいにしか思わなかったが,
学校にさえ来ていない事がイカちゃんから聞かされると状況は変わってくる。
「ボ、ボーちゃん風邪でもひいたのかな?」
と言う彼女の平然を装う言葉に「いや!もっとしっくり来る理由があるでしょ!」とみんなが心の中でツッコむが誰もそれを口に出して言わない。もちろん俺もだが。
そして翌日もボーちゃんは学校に顔を出さなかった。
みんな彼女に気を使い普通に振舞っているし、彼女も気にしている素振りを見せないがそれがまた痛々しい。
俺はみんなが部室から出ていった事を見定めて彼女に話しかける。
「やっぱり気になる?」
「え?何がですか?」
何がって決まってる。
「・・・わたし強引に入部させたんですかね?」
「気になるんなら本人に聞いたらいいじゃん」
事も無げに言う俺に彼女は
「聞こうにも学校にさえ来てないんですよ!」
「じゃあ家に行けばいいだろ」
「え?・・・」
俺は小道具が入っている棚をゴソゴソ探し奥の方にしまってあったヘルメットを取り出し
「あったあった。前使ってるの見た事あったんだ」
シールドに積もった埃を払い彼女渡した。
「入部届けに住所書いてあったろ?今から行ってみようぜ」
つづく