玉藻

歴史系のｈｐをやっていた頃、ｐｇは和歌についてあるコラムを書いていた。
それは同居していたハーボットのご飯にするためにも、毎日更新することが必須だったので、自分の好きな和歌について、毎日一首ずつ書いて、更新のタネにしていたのである。

ある日、掲示板に見知らぬ名前の書き込みがあった。
歴史系のｈｐなんて、世間狭い世界だし、来る人見る人書き込む人は限られている閉じた世界。
右も左も上も下も、お知り合いで固められた世界だったので、新規の書き込みは珍しい。

でも、その書き込みを見て背中が氷った。
「歌仙家隆の歌を愚弄し、なおかつそれはハーボットの餌のためとはなんたることか」

ｐｇ自身に、そんなつもりはなかった。
好きな和歌について、自分なりに感じたことを書き、自分なりに思う思いの丈を綴っていこうと考えていただけに、この出鼻をくじくような書き込みに激怒した。
しかし、激怒したけれど、読み方によってはこのように誤解されることもありうるだろう。ならば、丁重に頭を下げて「これは自分の意見だから、別段家隆を愚弄しているわけではない」と説明した。

だが、その人はｐｇの意見は聞かず、ただひたすらｐｇを責めた。
あんまりその言い分が鬱陶しいので、そのコラムを削除した。
その後、今までの常連さんからは「そこまでしなくとも」というメールをいただいたりしたのだが。

少しだけ日にちを開けて、違う人が書き込みしてきた。
この人は明らかに「あらし」であって、今までのｐｇのやり方をみていたのか(同一人物である可能性もあるが）ねちねちとしつこく意見を書いたり、他の常連さんの意見にあたりさわりなく、それでいてカンにさわる書き方をして、スレッドを伸ばし続けた。

ｐｇは今までこんな目にあったことがなかったので、混乱した。
どうしたらいいのか？と狼狽えるまま、掲示板は常連さんとその「あらし」の泥試合になってしまっていて、すでに抑えることができなくなるくらいの、勢いになってしまっていた。
常連さん一人一人に「コメントを削除すること」の承諾を得ようとメールを送り、承諾のリターンメールを待つ間に、次々と違う常連さんがｐｇを庇ってくれるかのような反論の書き込みをしてしまうので、またメールを飛ばさなければならない状態。
泥沼のスパイラルに入ってしまった。

そして「あらし」は水を得た魚のように、コメントの端々に慇懃無礼な姿を見せつつ、様々に反論していく。
暑い夏のことだった。
汗をかきながら、必死でメールを書くｐｇをあざ笑うように、書き込みが増える。
そして、ぐったりしたｐｇの目に最後の言葉が書かれていた。

「あらし」は、ｐｇがとても大切にしていた『昔仲間』に、「モノ知らず」と言いたげな蔑みの言葉を投げつけたのである。

ｐｇは切れた。

いままでの『どうにかして穏便にすませられないか』という気持ちが、一気に無くなった。
なんで、こんな事を書かれなければならないのか。
ｐｇがもっと早くこのスレッドを消してさえいれば、こんなことにはならなかったのに。
来てくださる常連さん方にも、不愉快な思いはさせずにすんだのに。
ずるずるとスレッドを野放しにしていた自分に腹が立って、腹が立って。
悔しくて、悔しくて。

気が付いたら、そのスレッドを削除していた。


後日、多く常連さんから労りのメールをいただいた。
泪がでた。