テーマ:フィギュアスケート(3634)
カテゴリ:思ったこと
世の中は冷たいものだ。おととい、トリビアの特集を見てそう思った。おととし、トリビアの種に出て、へんてこな機械でくるくる回されたとき、み~んなかわいい!と思ったはずの安藤さん、いまや、代表辞退しろ、とまで言われる。
タイミングの悪い発言だった。ニュースを読んで「はあ?」と思った。怪我を押して一連の大会をがんばったんだ、と思う人より、言い訳と受け取ったり、オリンピックへの予防線と思われないかと心配した。そして、予想通り、今ブログや掲示板では「今頃何を言っている」だとか「落選した人のことを考えろ」とかひどい言われようだ。 本人は正直に、自分の目の前に起きた事実を、記者会見で言っただけだ。だって、その前日に病院に行ったら「骨、折れてる。よく滑れたね」といわれたのだ。高校の壮行会の記者会見の席だ。みんなに応援された直後。怪我はあるけど、がんばりますと、口に出しても仕方がない。というか、自然だと思う。 ただ、こういう故障話はオリンピック直前だけに大きな反響を呼ぶ。だから、安藤さんの周囲の大人は、どう対応すれば彼女にとって最善になるか、きちんと考えるべきだった。それができる人がいなかったことが、彼女の不幸で、いつの間にか「嫌われ者」になってしまった原因だと思う。 安藤さんへの毀誉褒貶ぶりを見ていると、本当に周囲の大人が駄目だな、と思う。悪いのはコーチであり、スケート連盟のスタッフだ。 フィギュアスケートのオリンピック代表は、さかのぼれば渡辺絵美、伊藤みどりの時代から、メディアにとって「おいしい」存在なんだから。五輪の前後、いつだって騒ぎになっている。わかっているのに、選手を守らなかった。18歳の高校生だ。だれだって、考えは足りないものだ。安藤さんをアイドルに仕立てて、ここ何年かフィギュアの大会は大盛況。予算はたいそう豊かになったはず。だけど、安藤さんの環境を十分に整える努力はしただろうか。 安藤さんの故障についても、同じだ。大事な選手が足を痛めていたら、とにかく検査をしろというのが普通だろう。連盟は選手個々の管理をしないと逃げても、それは理由にならない。日本代表として臨んだ試合の場での怪我だ。しかも、会場にはきちんとした医師だって常駐していた。それを、選考会が終わるまで検査もせずに滑らせていたとしたなら、そっちのほうが大きな問題だ。 オリンピックはもはや、出場する選手のものではない。選手は大きなオリンピック・プロジェクトのキャストに過ぎない。選手本人の気持ちがどんなものであろうと、周りの意志の方が大きく働く。そしてイメージが作り上げられていく。 今回の骨折はオリンピックの演技の後、ショートプログラムを終えたあたりで公表するのが最善だった。SPの演技がうまくいってもいかなくても。そして、骨折は本人ではなくて、強化部長あたりが「実は骨が折れていたのに本人は何も言わず、よくがんばった。フリーは精一杯、楽しんでほしい」と言えばよかった。 4年前のソルトレークシティー五輪で、腰に重大な故障を抱えていた清水宏保くんを覚えているだろうか。彼の場合も逃げるわけにはいかないし、周囲には徐々に、故障の実態みたいなものがわかりつつあったけど、競技が終わるまで黙りとおした。銀メダルだったけど、金メダリストの「フライング疑惑」もあって、清水くんはヒーローになった。 だけど、安藤さんの周りには清水くんの周囲みたいな人はいなかった。この対応の違いは、すごく大きい。これから安藤さんにはもっと注目が集まるだろう。その視線が、温かいものではなくて、厳しかったり、冷たいものになりそうで、本当にかわいそうだな、と思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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