昨晩は野毛のにぎわい座に志の輔師匠の落語を聞きに行ってきました。
もちろん満席、お酒を呑んだりお弁当を食べたり
寄席の雰囲気いっぱいの中で師匠登場。
きなこ色の着物に抹茶色の袴
ちらりとのぞいた半襟は栗色。
その姿で菖蒲色のお座布団に座る姿はなんとも粋。
圓長がグリム童話の「死神の名付け親」から作った古典落語の「死神」を
志の輔師匠らしく脚色して観客をその世界に引き込む名演でした
借金まみれで首の回らない男がもう死ぬしかないと
自分の死に方を道々考えならら歩いている所から始まります。
「息を止めちゃおうか」
「いいや、だめだおいらは20秒しか息が止められない」
「包丁でぐさりと一突き」
「いいや、だめだ。この前は包丁見てるうちに板前になろうと決心しちゃったんだ」
「高いところから飛び降りちゃおうか」
「いいや、だめだ。高所恐怖症だから飛び降りる前に気を失って落っこちてで死んだら
もともこもない」
ってなことを考えながら家へたどりつくと死神がちょこんと座ってる。
「お前はまだ運をつかいはたしていない。医者になれば金も儲けられる」
男は笑い飛ばす
「俺が医者に?冗談じゃねえ」
死神がそんな男にアドバイスを与える。
「死神が病人の枕元に座っていたらそいつは駄目。反対に足元に座っていたら助かるから、
呪文を唱えて死神を追い払え」男はその通りに呪文を唱え荒稼ぎをする。
元来博打好きの男だからあっという間にお金は使い果たしまた借金まみれ
また医者をはじめるがどういうわけか出かけていく先さきの病人の枕元に死神が・・
直すことができなくてはお金ももらえない。
考えた男は病人の枕元で死神が居眠りをしている隙に
布団を180度回して呪文を唱える
「チチンプイV」
まんまと大金を受け取り家に戻るとまたあの死神が・・・
死神のあとについていくと暗闇の中に無数のろうそくが揺らいでいる。
死神いわく
「これは人間の運の長さだ。 つまりろうそくの長さがその人間の寿命だ」
「この長くて勢いよく燃えてるのはだれのだい?」
「それは向かいのきん坊のだ」
「そういや3歳だもんなぁ~これからだってなわけだな、
じゃあこの短いけどちから強く燃えてるのは?」
「それはお前の隣の家の婆さんのじゃ」
「なんだ、あの婆さんまだ生きるのかい。なんだいこれは?
笑っちゃうねぇ、地面にへばりついて火がゆらゆらしてるよ」
「これはおまえのじゃ」
男は慌てて
「冗談じゃねえ、何とかしてくれよぉ」
「ひとつチャンスを与えよう。新しい蝋燭にその火をうつせばお前の寿命は延びる」
男はこわごわ蝋燭を近づける
悪運強く蝋燭の火は新しい蝋燭に移る。
男は死神の止めるのも聞かず蝋燭をもって逃げる。
「家にもって帰って一生大事にしてやる、絶対火は消させない」
すっかり闇があけた外に出たとたん追いかける死神が一言
「明るいのにもったいない」
男はあわてて
「おっと、いけねぇ」
ふぅっ~と・・・
万雷の拍手の中、こちらの世界に師匠も私たちも戻り
余韻を楽しみながらの帰宅となりました。
志の輔師匠、国立劇場も伺います!