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hananoiro

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ボクは走って逃げてあなたの顔を見てほっとする。
「お父さんに、逢わせて」
無茶なことをお願いしてみる。
お父さんなら抱きしめてくれたのに。
いつも抱きしめて、手をつないで眠ってくれたのに。
お父さんの匂いなんかわからない。
声なんかわからない。思い出せるようでおもいだせない。
なんであんなに大事なこと、忘れてしまうんだろう。
ボクは憶えておきたかったのに。
だからばかなのかな。
肌着を脱いだ胸がちょっと吃驚するぐらい白かったことや
多分ちょっと口が大きかったことや
笑い声 わらいごえなんて全然わかんない
ボクを呼ぶ 呼び方さえもわからない
またちゃんと話がしたい
お話を聴かせて欲しい。
ボクの手はお父さんと同じ大きさになることなどなく
たとえ何歳になってもずっと、だからその手を掴む。
ボクより背が大きいから好き。一緒に立って肩に顎を乗せることなんてできない。ボクが後ろから覆いかぶさっても重たいとは言わない。
「ねぇ、ねぇ お父さん」
首にまとわりついてもうっとおしいとは言わない。
そのままにしてただ新聞を読んでる。
いなくなるとわかっていたら
わかっていたら。





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最終更新日  2005年05月02日 14時49分42秒



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