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テーマ:ё・ぼ・や・き・ё(1794)
カテゴリ:ダンナとその家族
ダンナはいわゆる田舎の長男である。
ワガママだけどお人よしで、プレッシャーには非常に弱く、すぐにお腹をこわす。 一歩家の外に出れば、そういう弱さは隠してバリバリ働き、人の世話もよく焼くのでずいぶんたくさんの人から慕われているが、実は自分の身の回りのことは全くできない。 どうやら小さい頃から『我が家の4代目』(家業を継ぐという意味ではなくて、単なる長男と言う意味)と若様扱いでちやほやされて甘やかされており、「自分のことを自分でする」という意識そのものがまるでないようだ。 特に着るものに関して、彼の世話をするのは並大抵のことではない。 なんといっても殿様のように扱われてきたのだから、「アレ出して」とさえ言えば、家族の誰かが自分の所望している物をさっと差し出すのが当たり前と、結婚するまではそう思っていたようだ。 しかし嫁に来たのは、この地元の方言も分からず、家事に関してはちょっと気の利かない部類のワタシである。 殿のおっしゃる「アレ」が一体どの「アレ」のことなのか、さっぱり見当もつかぬ。 しかも彼は、衝動買いが趣味の一つなので、ずいぶんたくさんの衣類を持っている。 だから「どんな形の、どんな色の、どんな素材のアレ」か、はっきり言ってもらわなければ出しようがないのだ。 ところが困ったことに、殿は今まで着るものに関してきちんと表現したことがないので、そういう方面のボキャブラリーがゼロに等しい。 本人は本人なりに一生懸命表現しようとしているのだろうが、聞けば聞くほどさっぱりわからん。 始めの頃は「今日は青いアレ着るから」といわれれば、思い当たるものを片っ端から 「殿!青いワイシャツでございます!」 「殿!紺色のシャツでございます!」 「殿!こちらはどうでしょう?ブルーのボタンダウンでございます!」… と延々とヒットするまでやっていたのだが、そのうち殿のほうも、これでは時間がかかって毎日遅刻だ、と思ったらしく、最近は思いつく限りのキーワードを並べるようになった。 今朝は「あのさ、今日アレ着たいんだけど…あの、黒っぽいような白っぽいようなざらざらの…えーっとあんまり暖かくないセーターみたいな…すぽんと頭からかぶるヤツで…首のところが普通じゃないみたいなアレ。」 …わからん。 だいたい黒っぽいような白っぽいようなざらざらってなんなんだ。 あんまり暖かくないセーターなら想像がつくが、「みたいな」ってどういう意味だ? そして首のところが「普通じゃない」ってなんだよ! 結局クローゼットから「モノトーン系・かぶり」というカテゴリーで検索したら引っかかるだろうというようなものを全部出してみた。 「あ、これこれ!」といってダンナが指差したのは、杢グレーのハイネックの長袖Tシャツだった…。 今日はまだ色が比較的推理しやすいキーワードだったのでよかったが、彼は時々濃いグレーを「こげ茶」といったり、紺色を「紫」といったり、ひどい時はベージュを「金色」と言ったこともある。 でも不思議なもので、仕事上(彼は建築士である)では「歩く色見本」と呼ばれるほど、正確な色指定をする。 結局、興味のないものを表現するのにエネルギーを使いたくないということか。 ひょっとすると、普段デザインや設計の仕事で表現力を使い果たしてしまっていて、自分の着るものをわざわざ詳しく言い表す気力が残っていないのかもしれない。 そういえば昨夜、遅くまで残業して帰ってきた殿が「こんな時間に悪いけど、ちょっとアレちょうだい」といった。 「?」 「ああ、アレアレ。飲むアレ。熱いアレ。」 どんなに忙しくて疲れてても「熱いお茶」ぐらい言えるだろうと思うのだが。 …最近「アレ」の適用範囲がどんどん広がってきていて、ちょっと心配な私である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年03月18日 10時50分29秒
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