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野の花も日々あれこれ考える

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2006年05月30日
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カテゴリ:ダンナとその家族
ここ数日、殿がカリカリしている。
理由は分かっている。
仕事が忙しすぎるのだ。

忙しすぎると人はみな何かしらストレスを解消する方法を求めたり、逆になんとか我慢して乗り越えようとしたりするものだが、そもそもが自然体の殿の場合はそのどちらでもなく、苛立ちが表面にダダ漏れになる。
家の中での会話も、現場で追い詰められている時の会話と同じテンションになってしまう。
そして、ちいちゃなことも勘に触るらしく、いちいち反抗したり突っかかったりしてわざと意地の悪いことを言ってみたりするのだ。

私は家族がご機嫌さんでいてくれたらそれだけで満足なので、こういうのは非常にイヤなのだが、でもまあ、夫婦とか兄弟姉妹とか、あるいは漫才コンビとか仕事のパートナーとか仲の良い友達でも、人間関係の状態の良し悪しには波があるもので、相手がとても好ましく思えてじっと見ていると、今度はいやな部分がたくさん見えてきて、離れたくなったりするものだと思う。
だから「たまには機嫌の悪いときもあるわな」くらいに思うようにしている。

でも、今朝は私もちょっと頭にきていた。
昨日、私のすることにいちいち細かい文句を言って困らせ、すませようと思っていた家事の手順がめちゃくちゃになってしまったために、結局夜中までかかって片付けをしていて寝不足なのだ。

そこへ殿が今朝、「今日は(制服の)中に半そで着るから」と言うので、そういえば昨日も現場が暑かったといってTシャツに着替えていたな、と思った私がTシャツを出しておいたら、
「衿のある半そでにして」と言う。
ああ、ネクタイをするのか、と思った私が半そでの薄いブルーのワイシャツを出すと、今度は
「ポロシャツはないの?」と言う。
仕方なく、ワイシャツを片付けてポロシャツを出しておいたら、
「さっきのシャツは?なんで片付けたの?!さっきのが良かった。」と言う。

これでは駄々っ子だ。
さすがに頭にきた私が「さっきはポロシャツって言ったんじゃなかった?!」と聞くと、殿は逆切れして
「違う。白くて半そでのアレ(出た!殿の『アレ』)が着たかったのに!!」と言う。
のどまで出かかった「知らんがな」をなんとか飲み込んで、黙ってさっきのシャツを渡し、これ以上は馬鹿馬鹿しくてやってられないので知らん顔をした。
でも、あまりに腹立たしいので、後ろ向きに小さい声で「言うてはることがいっこも理解できまへん」と言ってやった。

すると殿は一瞬ぎょっとした顔で私を見て、そそくさと出かける支度をし始めた。

殿の出掛けに子供達が「いってらっしゃ~い」と言ったが、私はまだ腹の虫が治まらず、黙って洗濯機を回していた。
八つ当たりするにも程がある、と思った。
しんどいなら「しんどいわー」と言えば労わりようもあろうが、八つ当たりでは私はずっと理不尽なことを言われっぱなしである。

しかしさっきギョッとして我に返った殿は、いってらっしゃいを言わない私に、怒っているか確かめるように「おーい、行ってきますー」とわざわざ声をかけてくる。
私は怒りが最高潮だったので、怒ったままの顔で「はいはい」と返事をした。

しばらくして電話が鳴った。
たぶん殿からだと思った。
ちょっとくらいは反省したのかな、それとも八つ当たりの続きか?と、ちょっと気が重かったが仕方なく電話に出た。

「あのー、あ、俺やけど、あのさ、今度仕事で大阪の…ええっとなんて会社だったかな…あの、なんとかって言う会社の、ええとなんとかっていう名前の営業マンと会うことになったんやけど、お前、知らん?」

知らん?って、会社名も相手の名前も分からんのに、知るわけなかろう。
今日二度目の「知らんがな」を飲み込んで「誰のこと?…というか、私が知ってる人かも知れないの?相手が私のことを知ってるとか?」と聞き返す。
「あ、いや、別にそういうわけでは…ないけど…ちょっと知ってるかなって思って…ははは、あのさ、お前元気?」

不覚にも笑ってしまった。
やっぱりご機嫌伺いだったのだ。
朝から怒ったままの顔の私だったのだが、一瞬笑ったら、もう怒った顔には戻れなくなってしまった。

「うん、元気。今からジム行くけどいい?」と笑った声で言ってみる。
「あ、そうか、元気なら良かった。そうか、ジム頑張って行っておいで。そうか、ジム行くのか…。」

電話の向こうで殿も笑った顔になった気がした。

仕方ない。
今夜はなにかおいしいものでも作って、みんなで食べるとするか。

一瞬頭の中に「破鍋に綴蓋」という言葉が浮かんだ。





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Last updated  2006年05月30日 14時51分15秒
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