太郎、修学旅行に行く。
昨日の朝、太郎は大きな荷物を抱えて修学旅行に出発した。実は一昨日、塾ではクラス編成のテストが行われ、ギリギリまで修学旅行気分になれなかった太郎だったのだが、塾からの帰り道にコンビニに立ち寄っておやつを買い、やっと少し楽しい気分になり始めたようだった。家に着いて荷物の確認をし、出発が早いからということで、珍しく12時にならないうちに布団に入った。さすがに小学校の時のように「嬉しくて眠れない」なんてことはないらしく、布団に入ったと思ったらすぐに寝息を立て始めた。集合が6時ということで、5時少し前に目覚まし時計のアラームをセットしていたようだが、大音量で鳴り響くアラームの中、ヤツは一向に起きる気配を見せなかった。寝起きが悪いことが、太郎の最大の弱点なのだ。そのうち、目覚まし時計が根負けして止まってしまう。しかたなく吹き抜けの下から大声で呼ぶこと数回、やっと目を覚ました太郎は、アワワワワとなりながら大慌てで階段を下りてきて「なんで目覚まし鳴らへんかったんやろ???」とボケたことを言っていた。そんな風に、修学旅行の朝もいつものようにあわただしくご飯を食べ、身支度を済ませて、太郎は出発したのだった。昨日は、ひめゆり祈念館やガマと呼ばれる大型の防空壕を見学し、夜には地元の子供達と伝統芸能を見せ合ったりゲームをしたりして交流している。地元の子供達からはエイサーなどを見せてもらう予定で、太郎たちも二見音頭や木遣り、ふたみガエルの踊りなどを披露しているはずだ。そして今日は3つのグループに分かれて、それぞれ選んだ体験コースでの一日を過ごしている。太郎は米軍基地のアメリカ人家庭を訪問して一日を家族と一緒に過ごす「ホームビジット」を選んだ。ホストファミリーにプレゼントするお土産も、一生懸命選んで持って行ったし、とても楽しみにしていた一日なので、きっと今頃はホストファミリーと楽しい時間を過ごしていると思う。(ちなみに太郎が選んだお土産は、二見のシンボル「夫婦岩」のキーホルダー、陶器でできた小さなカエルのお守り、振袖を着たクマの小さなぬいぐるみなどで、中でも青海波の模様のちりめんで作られた爪楊枝いれを太郎はとても気に入っていた。)今夜は国際通りで買い物をし、グループごとに好きな場所で夕食を取り、きっと修学旅行気分が最高潮に盛り上がることだろう。ハメをはずしていやな思い出を残す悪ガキや、調子に乗りすぎて怪我をしたり事故に遭う子がいないことを祈るばかりである。